2007年3月29日

ゲートキーパー法案の成立に当たって(談話)

社会民主党幹事長
又市征治

  1. 本日の参議院本会議で、犯罪組織のマネーロンダリング(資金洗浄)などを防ぐ社会の「門番役」として、弁護士らに「疑わしい取引」の届け出を義務づける、いわゆるゲートキーパー法案(犯罪による収益の移転防止に関する法律案)が社民党・共産党の反対の中、自民党・公明党・民主党の賛成で可決・成立した。今国会冒頭で共謀罪法案とともに与野党対決の最重要法案の一つに位置づけながら、07年度の警察庁予算に関連経費が計上されているという理由で、「日切れ扱い法案」として審議が不十分なまま猛烈な勢いでスピード成立となったことは極めて遺憾である。

  2. 同法案は、マネロン・テロ対策の名目の下で、貴金属商や保険業、不動産業、私書箱業、電話取次ぎ業者・クレジット・ファンナンス業者など広範な業種に、顧客の本人確認、取引記録の保存、犯罪の疑いのある取引の通報などの義務を課すものである。当局への密告を奨励するものであり、「物言えぬ社会」・「総監視社会」を招く法案として社民党は反対運動をしてきた。弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士については、依頼者の密告義務は見送られたが、弁護士を除く四士業には、顧客の本人確認と取引記録の保存が課せられている。しかも四士業を含む総ての業種に対し、所管行政庁に加えて、公安委員会(警察)も裁判所の令状なしで立入検査ができるようになる。警察による令状無しの実質上の強制捜査を可能とし、あわせて厳しい刑事罰も設けることは、憲法の令状主義の原則を空洞化させる。

  3. 社民党は、金融庁の「特定金融情報システム」の開発費・運用費(9年間で5.6億円)及び警察庁の新システムの開発・運用費の費用対効果(1年間で8億円)、「疑わしい取引」として届けられたが、捜査機関には提供されなかったデータも含めて丸ごと監視対象になる問題、間違ったデータでも国民や事業者の側からは確認や訂正のしようがないことと個人情報保護法との関係、問題のない口座取引情報でも「外国の捜査機関」から照会がある時の提出、「疑わしい取引」として届けられる個人情報と警察庁のデータベースとのマッチングなどを追及したが、解明すべき問題点はまだまだ山積している。

  4. 今回、弁護士は日弁連の自主規制に委ねられ法案の対象から外れた。しかし、法案の附則には「国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」との検討条項が設けられている。今後、日本が対象になるFATF(金融活動作業部会)の相互審査の結果、「小さく産んで大きく育てる」といったことにならないよう、法案の運用に対する弁護士を含む広範な市民による監視・反対運動を強めていく必要がある。

以上