2007年5月18日
教育関連3法案の衆議院通過に当たって(談話)
社会民主党幹事長
又市征治
- 本日、衆議院本会議で、安倍内閣の最重要法案の一つである教育関連3法案が野党各党の質疑続行要求にもかかわらず、採決された。社民党は、これら3法案が教育の国家統制をますます進め、教育を破壊するものであることから反対した。
- 今回の3法案は、昨年末の教育基本法改悪の強行を受けた、極めて拙速かつ政治的な立法である。官邸主導で設けられた教育再生会議の議論を受けて、中央教育審議会は突貫審議を行い、わずか1ヵ月で答申をした。しかもその内容が賛否両論併記という異例のものであった。しかるに、審議が不十分なままに衆議院で採決させたことは、今国会中での成立を優先したものであったことは明らかである。国家百年の計である教育制度の設計は、厳に公正かつ中立的でなければならず、一内閣の意向に左右されるものであってはならない。
- 学校教育法「改正」案は、新教育基本法を具体化するものであり、新たに義務教育の「目標」が規定され、「規範意識」、「公共の精神」、「わが国と郷土を愛する態度」などが盛り込まれた。このようないわゆる「愛国心」の規定は、偏狭なナショナリズムの蔓延につながるおそれがある。また、校長、教頭の他に、副校長、主幹教諭、指導教諭などを設け、教職員の管理強化を図ろうとしている。いま求められていることは、教師が子どもと向き合う時間を確保し、教師のモチベーションや質を高めるための運営能力の向上である。学校評価を導入し、学校間の競争を煽って格差を拡大させ、教職員への管理統制を強める学校教育法「改正」は、教育現場の窒息状況に拍車をかけるものである。
- 国に教育委員会への指示権と是正要求権を与える地教行法「改正」案は、2000年の分権改革で廃止された「措置要求」の事実上の復活であり、分権・自治の理念を根本から否定するものである。国による管理・統制を強化する今回の「改正」は、教育の中立性と教育行政の安定性の確保を目的とした教育委員会制度の否定にもつながりかねない。
- 教員免許法等「改正」案によって、教員免許が10年毎の更新制となる。本来、教員免許は教員となる資格の問題であり、教員として勤務するかどうかは人事管理の問題である。任命権者による教員の採用、養成、研修などの人事行政・管理の不備の問題を、免許の問題と一緒くたにするもので、全くの本末転倒である。すでに教員志望者の減少の兆候が現れており、公教育からの人材流出も懸念される。教育公務員特例法「改正」による人事管理の厳格化も、任命権者の恣意的な運用が行われるおそれが強く賛成できない。
- 社民党は、OECD諸国間で最低レベルの日本の公教育費支出はそのままにしてナショナリスティックに国民の統合を図ろうという、安倍流「美しい国づくり」の教育施策に断固として対決し、教員の質や意欲の向上につながり、子どもたちの学ぶ意欲や権利が尊重されるような真の教育改革の実現に向けて奮闘する。
以上