01

 

03
 
  
[HOME]>談話>2008年度政府予算案の閣議決定に当たって(談話)

2007年12月24日

2008年度政府予算案の閣議決定に当たって(談話)

社会民主党幹事長
重野安正

 

    1. 本日の閣議で、政府は福田内閣として編成した初めての予算案である2008年度予算案を決定した。賃金増加を伴わないまま、原油高騰はじめ物価上昇が進み、生活の困難をもたらしている。だからこそ格差是正と国民生活の安全・安心の予算が求められていた。政府は、「成長と改革の予算」(額賀福志郎財務相)と力説するが、格差是正では、「ジョブカード」の制度の創設などにとどまり、質量ともに不十分である。シンクタンクの試算では、医療保険改悪の影響などで08年度の家計負担は1兆円増になるといわれる。小泉内閣以来の財政健全化路線を踏襲しつつ、補正予算と合わせて総選挙対策の「バラマキ」を行うなど、アクセルとブレーキを同時に踏んだ中途半端な予算となっており、福田首相の強調する「希望と安心」が全くの口先だったといわざるを得ない。

    2. 新規国債の発行額は4年連続で前年度当初比マイナスの25兆3500億円となった。これは、「改革予算」を印象付け、前年度(25兆4320億円)以下に抑制するとの目標を達成するためだけのつじつま合わせにすぎない。11年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標を掲げていたのに、今回、5兆2000億円の赤字となり、5年ぶりに悪化したことは、この間政府が進めてきた路線の自己破綻を示している。

    3. 08年度予算では、「埋蔵金」とされる特別会計の積立金なども活用して、外国為替特会から1・8兆円が税外収入に繰り入れられ、財政投融資特会から9.8兆円を国債の償還にあてることになった。特別会計の抜本改革をもっと徹底して、積立金や剰余金、一般会計へ繰り入れる基準そのものを見直すべきであるし、その果実は、国民生活向上と格差是正のためにこそ使うべきである。

    4. 柳澤厚労大臣(当時)自身が、「これ以上サービスの受け手としての国民に、制度改正でもって負担を増大させることというのは、もうあり得ない」と会見で述べていたように、社会保障の削減はもう限界に達している。しかし、小泉政権以来毎年2200億円ずつ削減されてきた社会保障費の自然増分の抑制が今回も踏襲された。中小企業の労働者が加入する政府管掌健康保険での国庫負担を大企業の健保組合や公務員の共済組合に肩代わりさせることになったが、政管健保に対する国の財政責任を放棄する理念無きつけ回しは問題である。また、年金記録漏れ問題の対策費に298億円を計上したが、すべての記録が対象となるものではなく、極めて不十分である。医療制度、介護保険、障害者自立支援法については、財政削減を目的とした制度の見直しによって、必要な医療・介護が受けられない等、さまざまな影響が出ている。当事者の生活実態を把握した手当はわずかしか行われていない。生活保護母子加算の段階的廃止(2年目)の実施も問題が多い。医師確保対策の推進や救急医療体制の充実・強化が図られるが、今の地域医療の不安や産婦人科・小児科の実態に応えるものとまでなっていない。

    5. 防衛予算は、0.5%減となり、6年連続の前年度割れとなった。他の経費に比べ削減率が低いのは問題である。しかも、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の能力向上562億円などミサイル防衛(MD)関連の強化、次期固定翼哨戒機(P−X)を導入(4機)やF−15戦闘機の近代化改修の促進(20機)等が盛り込まれている。在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の見直しは、米側要求をほぼ「丸のみ」してわずかな減額に終わり、2年間だった特別協定も3年間延長された。駐留経費負担を聖域化する余裕はないにもかかわらず、対米配慮優先の腰砕けの感は否めない。横田基地への航空自衛隊航空総隊司令部の移転費や普天間基地移設、岩国基地への空母艦載機移駐関連など、在日米軍再編の関係経費は191億円を計上したが、専守防衛、集団的自衛権の不行使、武器輸出三原則など日本の平和主義の根本に係わる理念を何の議論もなしに踏み越え、米軍と一体化していく自衛隊の変質を断じて認めることはできない。別途、情報収集衛星関係では、レーダー4号と光学5号の費用が計上され、35億円増の637億円となっている。

    6. 公共事業関係費は、07年度の当初予算に比べ3.1%減となり、7年連続で前年度比マイナスとなった。その中で、国際物流を支える基幹道路網の整備(10.6%増)、三大都市圏の環状道路の建設費(2%増)、スーパー中枢港湾の整備(14.7%増)などのビッグプロジェクトの重点整備が目立っている。また、整備新幹線も国費で前年同額の706億円を確保するとともに、JRから受け取る既設新幹線の譲渡収入や、借入金、沿線自治体の負担分などを合わせた事業費総額では過去最高の3069億円にのぼることになった。焦点となった道路特定財源の見直しは、59兆円の道路整備を前提に暫定税率の10年間延長を図るものであり、政官業の既得権益と化している特定財源問題への切り込みは不十分である。一般財源化される税収の使途に環境目的を盛り込むというが、規模・内容とも不十分であるし、道路建設推進自体が環境にやさしくない面も強い。

    7. 地域の公共交通関係は、07年度の165億円が197億円に増額された。地域公共交通活性化・再生事業の新設や鉄道軌道輸送高度化事業費補助の創設、地方バス路線維持対策の増額は一定評価できるが、まだまだ不十分である。社民党が独立性の強化を求めてきた航空・鉄道事故調査委員会が、海難審判庁と統合され、陸・海・空の事故調査や分析を横断的に行う独立組織「運輸安全委員会」が設置されることが決まったことは一歩前進であると評価する。

    8. 文教予算では、小中学校教員の大量増員は評価するが、行革方針と矛盾しないよう非正規教員の増加が中心となったのは問題が残る。教育の「質」の充実確保のためには、非正規職員の待遇改善とセットでなければならない。一方、国立大学運営費交付金と私学助成がそれぞれマイナスとなったことは、残念である。

    9. 地方向けには、地方発の再生アイデアを育てる「地方の元気再生事業」や地域の中堅企業や第三セクターを再生する「地域力再生機構」が目玉とされるが、どれほどの効果があるのか。08年度の地方交付税は4.6%の増となったが、三位一体の改革で、財政格差是正機能を持っている地方交付税の5兆円を超える大幅削減が行われたことが、地方格差の拡大や地方の疲弊をもたらしており、地方の共有財源である地方交付税の復元・増額こそ必要である。4000億円の地方再生特別枠は、中途半端で意味も乏しいし、08年度分は、平年度化までのつなぎ措置として、臨時財政対策債という赤字地方債の増発で財源をまかなうのは財政再建の上でも問題が多い。特別枠を除くと、地方一般歳出は4000億円の削減であり、地方歳出の厳しい抑制が自治体の地域公共サービスの低下をもたらすことを危惧する。

    10. 補正予算で、高齢者医療費の負担増凍結の費用が計上されている。しかし、保険料減免の対象者は、後期高齢者1300万人中、新たな保険料が生じる200万人にすぎないし、減免期間は08年度のみ(半年免除、半年1割負担)である。70歳から74歳の窓口負担の据え置き(2割負担に上昇を1割のまま)も08年度のみである。限定的な選挙目当ての経過措置にすぎない。

    11. 予算案は衆議院が優越するとはいっても、予算を執行するための予算関連法案の行方は与野党逆転した参議院が握っている。厳しい財政状況下にあっても、一人一人の生活を重視する予算とすべきである。社民党としても、今回の税制「改正」及び予算の延長線上に、法人税の実効税率の引き下げや消費税率の引き上げがあることに警鐘を鳴らすとともに、格差是正や国民生活擁護、将来不安の解消の立場から党独自の組み替え要求を取りまとめ、税制及び予算の審議に臨み、国民の審判を無視する政府・与党を追い込んでいきたい。


以上

 

[△ページトップ]


[HOME]談話>2008年度政府予算案の閣議決定に当たって(談話)
社会民主党