2008年6月6日

国家公務員制度改革基本法案の成立に当たって(談話)

社会民主党幹事長
 重野安正

  1. 本日の参議院本会議で公務員制度改革の理念・方向性を指し示す国家公務員制度改革基本法案が成立した。社民党は、衆議院での修正案提出に参加するとともに、法案に賛成した。
  2. 当初の政府原案は、国民が求める公務員制度改革を骨抜きにし、府省割拠主義に基づく旧態依然とした公務員制度を温存しようとするものでしかないといわざるをえないような数々の問題点を有していた。社民党が強く要求していた、公務員の労働基本権のあり方については、「検討する」だけで終わり、一定の非現業職員に協約締結権を付与することに踏み切った専門調査会報告や、それを尊重するとした総合懇報告が全面的に無視されていた。T種試験の廃止の代わりに、総合職試験と幹部候補育成課程が設けられ、事実上キャリア温存の仕組みが残った。専門調査会報告で使用者機関としての機能が期待されていた人事管理庁も、内閣人事庁として設置はするものの、情報提供、助言等のサポート役にとどまった。内閣の主導性の確保が求められていた幹部職員の人事権の扱いも、「内閣人事庁及び各府省に所属する」という妥協の産物に終わった。政治家と官僚との接触について、各府省に置く「政務専門官」があたるとし、他の職員には制限を課していたが、政官の接触制限は、野党議員への情報開示が弱まる問題や市民・組合の意見を行政に反映させることを難しくする側面も有していた。さらに、国家戦略スタッフなどの、官民交流の一層の拡大など、財界のための奉仕者作りに道を開く懸念があった。
  3. 一方、基本法案は、4月4日に提出されるまでに政府・与党内にいろいろと紆余曲折があり、閣僚間の対立や閣内不一致が新聞やテレビを賑わせていた。提出後も政府・与党内に慎重・消極姿勢が見られ、あわよくば廃案をもくろむ動きも見られた。あらゆる分野で格差が拡大する中、国民生活の安心・安全のためにも、良質な公共サービスの役割は高まっており、その基盤となる公務員制度の改革は喫緊の課題である。そうした中、多くの問題点を有してはいるものの、法案を廃案に追い込むことは、かえって、旧来の権益を擁護しようと法案の空洞化を図ろうとしている特権官僚と族議員の思うつぼになりかねなかった。
  4. そこで社民党は、連合、公務労協など関係労働組合とも連携を密にして、逆転参議院の政治状況を背景に、政府案の大幅な補強・修正を求めて取り組んだ。具体的には、@ILO勧告を満たした労働基本権の確立、少なくとも非現業職員への協約締結権付与の明確化、A課題の検討に当たっての関係当事者の参加、B内閣人事庁を幹部公務員の人事の主体とするとともに、団体交渉の使用者代表という立場の明確化、C総合職がT種温存であってはならず、キャリアシステムの解消とすべての公務員の平等で公正・公平な人事制度の確立などについて、大胆な修正を勝ち取ることができるよう民主党などへの働きかけを行った。
  5. 社民党も加わった衆議院の修正では、@戦後の一時期幅広く認められていたが、GHQの指示と政令201号で厳しく制限が課せられた公務労働者の労働基本権について、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益や費用を含む全体像を国民に示し、その理解の下に、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとするなどとして、60年ぶりに芽出しをすることができた、A政官接触制限については、政官関係の透明化と責任の所在明確化のため、職員が国会議員と接触した場合は記録を作成・保存し、情報公開の徹底などの透明化で対応することになったが、政治家側からの「口利き」などを抑制するために一定の効果が見込める、B定年を段階的に65歳に引き上げることを検討することになった、などの点で評価できるものとなった。
  6. 縦割り行政や独善性・閉鎖性及び政官業の癒着を是正するとともに、国民全体の奉仕者として良質の公共サービスを提供できるようにすることこそ、公務員制度改革の大きな目的である。ILO勧告を踏まえ、公務労働者の労働基本権を回復し、国民のための民主的で透明な公務員制度への改革を進めるには、この機を逸してはならない。社民党は、公務労働者と堅く連帯して、残された諸課題の解決・実現に向け、引き続き全力で取り組む決意である。