2008年6月27日 

「経済財政改革の基本方針2008」の決定について(談話)

社会民主党幹事長
 重野安正

1.本日の経済財政諮問会議で、「経済財政改革の基本方針2008」(骨太方針2008)が決定された。この間の「小さな政府」を目指す構造改革路線の進展と、小手先の対策の上塗りで、社会保障をはじめとする公共サービスが後退・縮小し、所得や地域間などの格差が拡大している。こうした格差問題や物価高騰、負担増による疲弊の中、国民の閉塞感を払拭し、安心のセーフティネットを張り直すべきだという国民の心からの要請に対し、福田内閣がどういう経済財政運営の方向性を示すのかが注目されていた。しかし、「骨太方針2008」は、結局、従来の歳出削減路線を堅持する一方で、与党から出された総選挙向けの政治的圧力に配慮したものとなった。福田首相が特色を出そうとしている道路特定財源の一般財源化や地球温暖化対策、消費者庁などについても新味に乏しいものにとどまった。もはや骨太方針を作る意味もないし、経済財政諮問会議のあり方自体について再検討されるべきである。

2.焦点となった歳出改革では、「最大限の削減を行う」との表現を盛り込むとともに、与党内からも転換が求められていた社会保障の自然増の2200億円のカットについても引き続き踏襲し、歳出削減路線の堅持を改めてアピールした。その一方で、国民の怒りが高まっている後期高齢者医療制度については、低所得者の負担軽減などの緊急対策を行い、さらに病院勤務医の就労環境改善や少子化対策の推進などについて「別枠」で新たな歳出を認める方針を示してはいる。しかし、歳出削減のポーズをとるために、2200億円はカットするが、補正予算や別枠で認めるというのは、辻褄あわせでありごまかしにしかすぎない。むしろ、この間の社会保障の機械的な削減ありきの路線が、医療崩壊をはじめとする社会保障の機能不全につながり、貧困層のサービスへのアクセスを阻害し社会的な格差拡大をもたらしていることを踏まえて、真正直に、社会保障関係費を5年間で1.1兆円削減することとしている「骨太方針2006」を撤回し、少子・高齢社会に対応する保健・医療・福祉・保育・介護などの真に必要な社会保障のサービス供給と予算額を確保すべきである。後期高齢者医療制度も緊急対策でお茶を濁そうとするのではなく、きっぱり廃止を打ち出すべきである。

3.「三位一体の改革」とその後の歳出圧縮政策により、5.1兆円以上の地方交付税が削減され、地域のセーフティネットである公共サービス水準の低下と地域間の財政力格差を深刻なものとしている。しかし、地方交付税の重点配分や農漁業対策などに関する記述が付け加わったとはいえ、引き続き歳出削減を継続する方針に変わりはない。公共サービス水準の確保と地域間格差の是正にむけ、地方財政の圧縮政策を転換し、地方財源の充実強化をはかるべきである。中でも、交付税の圧縮方針を見直し、国の財源保障・財政調整の責任として行政需要を的確に反映させ、交付税総額の確保をはかる必要がある。道州制の本格的な導入に向けた「道州制ビジョン」の策定が盛り込まれたが、現行都道府県・市町村の二層制の下での分権・自治の確立こそ進める必要がある。

4.道路特定財源について、一般財源化という文言はあるが、無駄な道路を作り続ける仕組みである道路の中期計画自体は撤回されていない。ガソリン税の暫定税率分を含めた税率水準も、今年の税制「抜本改革」での検討に先送りされている。道路特定財源の一般財源化に当たっては、総合交通政策や環境対策の視点を重視すべきであるし、財布が国土交通省から財務省に移るなどというのではなく、住民に身近な地方への税源移譲を進めるべきである。

5.地球温暖化対策が強調されたが、環境税の創設やキャップ&トレード型排出量取引制度、自動車総量規制まで踏み込めなかった。特に温暖化対策を促進する税制については、早急に、税の効果、既存税制との整合性、税の使途等を明確にしたうえで、国民の広範な議論のもとに理解と合意をはかるような努力を進めるべきである。国民的合意もないまま地球温暖化対策への効果に疑問の声も出されているサマータイムの導入が盛り込まれているのも問題である。また、原油高騰対策も通り一遍のものをなぞった格好にすぎない。教育についても、具体的な数値目標や財源の確保の担保がなされていない。

6.歳出増に対応する歳入は具体的に担保されず、専ら特別会計の総点検など、行政の無駄や非効率の徹底排除にウエイトが置かれている。無駄はなくさなければならないが、弱者に痛みをしわ寄せする口実に使われることがあってはならない。無駄や非効率というのなら、この間の道路予算に象徴される特定財源・特別会計のでたらめぶりにもっと切り込むべきであるし、防衛疑惑で指摘された装備品やミサイル防衛、米軍再編も聖域とすべきではない。

7.秋の税制改正の焦点となる「消費税」については、「人口減少・少子高齢化の下においても、あらゆる世代で広く負担を分かち合い、社会保障をしっかりと支える安定的な財源を確保する」であるとか、「所要の安定的な財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で」基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるなど、社会保障や年金を口実に消費税の税率アップの方向性が示唆されてはいる。しかし、引き上げ時期や上げ幅などの増税の具体論には踏み込まずに先送りされた。選挙前にまずいという政治的思惑で消費税率アップ隠しに走るのは、非常に姑息な姿勢である。

8.これまでの構造改革路線が大企業には減税と史上最高の利益を与え、日本型雇用を破壊し、非正規労働者の拡大やワーキングプア問題を引き起こし、地方交付税削減や大店法などの規制緩和で地方経済の疲弊と格差の拡大を生んだ。今回の「骨太方針2008」は、構造改革の痛みが、とりわけ弱い立場の人々に激痛をしわ寄せさせ、格差を広げ、安全と安心の公共サービスを破壊してきたことに対する反省のかけらもないものとなっている。改革の負の遺産をきちんと検証するとともに、生活破壊・社会保障破壊の構造改革路線を転換し、暮らしと社会の基盤を支える公共サービスの充実、国民生活の安定、セーフティネットの確立をはかり、格差是正と安心・公正な社会づくりをめざす真の改革こそ必要である。

以上