2008年10月15日

2008年度補正予算の成立にあたって(談話)

社会民主党党首
                          福島みずほ

 本日、参議院本会議において2008年度補正予算が、自民、民主、公明、国民新、改革クラブなどの賛成多数で可決、成立した。

 社民党は、8月末に「生活・地域の底上げ宣言」を発表し、内需拡大と国民生活改善を求めた。その後、サブプライムローン問題にはじまる世界的な金融不安が進行して、先行き不安が強まっていくことに対して、本日、改定版の「「生活・地域の底上げ宣言」をとりまとめ、10兆円規模の緊急対策を政府に求めた。政府の補正予算は、福田前政権の後始末をするようなもので、規模があまりにも小さく、これでは国民生活の向上はおろか、悪化をくい止めることはできないと考え、採決にあたっては反対した。

1.「日本経済は全治3年」(麻生総理)とするのであれば、治療に当たっては、しっかりとした原因究明が不可欠である。しかし、今回の総合対策は、「景気回復は総じて外需依存型であり、家計全体は賃金増を通じてその恩恵を実感するにはいたらなかった」と指摘はするものの、原因の分析はない。

 この間の景気回復は、労働者派遣事業の自由化による低賃金労働者の創出、規制緩和路線によって激化した企業間競争を口実にした賃金抑制策などをてことした「リストラ景気」に他ならない。

 このような実態を放置したまま絆創膏を貼ればいいというものではない。必要なのは、「構造改革」路線と決別し、「痛み」の直撃に苦しむ労働者や社会的弱者、中小企業、地域経済を守ることである。GDPの6割近くを個人消費が占めており、地域や農林水産業、福祉・環境を重視した内需・個人消費の活性化が求められている。賃金の増加、格差の是正、国産品中心・自給率向上の推進、自然エネルギーへの転換、福祉・医療・子育て・教育分野への投資の増大、雇用や社会保障の根本的立て直し、所得再配分的な税制への改革など、将来を見据えた政策が必要である。

 したがって、定額減税の廃止、「構造改革」路線が家計の疲弊や内需の縮小をもたらし、アメリカ発の金融危機がこれに追い打ちをかけているという認識に立って、抜本的に治療法を練り直すべきである。

2.今回の補正予算案には、中小企業等への融資拡大、いわゆるネット・カフェ難民への支援、公立小中学校の耐震化、アスベスト対策、離島航路確保、消費者政策の強化、地方バス路線維持対策など、社民党が国民とともに要求してきたものが盛り込まれているものの、内容・規模も貧弱といわざるをえない。

3.加えて、以下のような問題点がある。

・低所得者への保険料の軽減や新たに保険料を徴収される被扶養者の保険料負担軽減など小手先の手直しのための予算に約2500億円が盛り込まれるなど、後期高齢者医療制度の存続を大前提にしている。負担軽減の側面はあるが、選挙対策のまやかしであり、後期高齢者医療制度自体の廃止を実現すべきである。

・紙台帳等の電子画像データ検索システムの構築123億円は、紙台帳のオンライン突合するためのシステムづくりにすぎず、記録問題の解決のためには不十分であり、政府・与党の失政のつけ回しにすぎない。

・中小企業への融資枠を拡大しても、金融機関と信用保証協会とが責任を共有する「責任共有制度」が導入されていることから、中小企業への有効な資金繰り対策になるのか疑問が残る。むしろ融資を受ける力がないほど弱っている中小企業への直接支援が必要である。

・燃油急騰の大きな原因である投機マネーへの有効な規制はない。漁業者の燃油費補てんも「省エネ船舶・設備」等の条件や07年度基準などの制約があり、実際には使い勝手が悪く、直接補てんをすべきである。トラックの場合も、低公害車普及促進、燃費改善実証実験等に重点化されている。

・地方財政への支援も弱い。地域で身近な福祉や医療、教育、生活支援を行うのは自治体の役割であり、この間5兆円以上削減されてきた地方交付税について、削減分の復元を行うべきである。

・定額減税や年金控除や老年者控除などの復元や、消費税の逆進性緩和策、年金の物価スライド分の上乗せなど、国民の「痛み」を和らげる政策がとられていない一方で、東アジア経済統合研究協力拠出金2億円や投資環境関連情報発信事業費1億円、商品先物市場監視強化システム構築事業費5000万円、出入国管理システム設備整備費5.5億円、市町村合併体制整備費補助金40億円などのように、問題の残るものが多い。

4.今、必要なのは、小泉政権以来の構造改革路線と決別することである。社民党は、「痛み」の直撃に苦しむ労働者や社会的弱者、中小企業、地域経済を守り、投機ではなく実体経済を支えるための政策への転換、外需依存ではなく個人消費を中心とした内需重視への転換を強く求める。

以上


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