2008年11月6日

金融機能強化法の衆議院通過にあたって(談話)

社民党幹事長
重野安正

 本日、衆議院本会議において、金融機能強化法改正案の採決が行われた。

 アメリカ発のサブプライムローン問題に始まる金融不安は、世界的な規模で拡大し、株価の大幅な下落と為替の乱高下を引き起こし、29年恐慌の再来かといわれるまでに、深刻な状況に立ち至っている。

 金融不安の拡大は、経済全体に混乱をもたらし国民生活に打撃を与えるものであるために、予防の措置をとるとともに迅速に対応しなければならない。金融機能強化法を再び制定しようとすることは必要である。しかしながら、今回提出された政府案には、いくつか重要な問題を含んでいることから、社民党としては反対した。

 第一の反対理由は、そもそも金融機関に予防的な資本注入を行うにあたって、中小企業への継続的な融資に向けた明確な数値目標、さらにはきめ細かいチェック体制が極めて不十分なことである。これでは注入した資本がこれまで同様、金融機関の内部に蓄積される可能性が高く、貸し渋りの防止や中小企業への資金の円滑化に役立つ具体的保障は相変わらずない。このままでは単なる金融機関の救済になりかねない。

 第二に、原案では、申請する金融機関の経営者さらには株主の責任がまったく明らかにされておらず、修正案では経営強化計画に従前の経営体制の見直しが盛り込まれた。しかし、金融機関の役員の高額報酬については全く触れられていない。国民の血税である公的資金を受けながら高額の報酬を受け続けることは、国民感情からしても絶対に許すことができない。申請する金融機関に対して、その公共性だけでなく健全な運営を期すためにも、役員報酬については開示し、抑制を図るべきである。

 第三に、新設された協同組織金融機関の中央機関への資本注入についても大きな問題点がある。とくに農林中金は、農林水産業者を基盤とし、これらの金融の円滑を図り、もって農林水産業の発展に寄与することと定められている。しかし、農林漁業分野への貸出金残高は、9.8兆円のわずか1.2%に過ぎない。多額の資金をサブプライム関連商品などに投資し、挙げ句の果てに1000億円超の損失額を計上している。

 第四は、放漫経営で経営が行き詰まることが予想される新銀行東京が対象から除外されないことである。新銀行東京は、石原都政によって設立されたが、放漫経営やずさんな融資実態から赤字経営となり、新たに東京都による400億円の追加出資を受けざるをえなかった。政府は、特定の銀行を外すことはできない、あるいは審査会で判断するとしているが、新銀行東京の経営悪化は現下の金融不安とは全く関係のないものである。

 税金をくいつぶし、放漫経営を反省することなく、無責任な経営を続けているこのような銀行にまで資本注入を行うことは、法の精神に照らしてもありえない。財務金融委員会の付帯決議では「自治体に第一義的な責任がある」とされたが、この程度では何の規制策にもならない。

 なお「保険業法改正案」については、保険契約者保護の特例措置を延長するものであり、基本的に支持できると判断し賛成した。

以上


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