2008年12月12日

与党税制改正大綱について(談話)

社会民主党幹事長
 重野安正

1.本日、与党の税制改正大綱がまとまった。「景気対策」と「選挙対策」を兼ねた減税があからさまで、焦点となった道路特定財源の一般財源化も骨抜きに終わり、不公平税制の是正という観点からの「税制立て直し」に逆行するものが多い。

2.1兆円規模の「地域活力基盤創造交付金」(仮称)が新設されるが、福田前首相が打ち出した「生活者財源」でも、麻生首相が明言した「地方が自由に使える」資金でもなく、道路特定財源の一般財源化という目標から大きく後退した内容だ。無駄が多いと批判を受けた「10年間で59兆円」の「道路の中期計画」の抜本見直しもなされないまま、8割は道路整備に充てるとしたことにも疑問が残る。このままでは単なるひも付きの補助金にすぎない。今後の制度設計において、自治体の意見を取り入れ、地方にとって使い勝手のいい制度になるようにすべきである。例えば、交通弱者対策として地方バス路線の維持や路線バス廃止に伴う代替交通の確保、航空路や離島航路、第三セクター鉄道支援等にも充てられるようにするなど、地方の実情に応じて活用できる仕組みとすべきである。

3.地方の道路特定財源について、普通税に改め使途制限を廃止することや、目的規定の改正が行われるが、引き続き道路の延長、面積を基準として交付・譲与を行うのであれば、事実上特定財源の継続・温存との疑問を抱かざるを得ない。

4.上場株式などの譲渡益と配当の課税を10%軽減する措置を2011年まで継続することになったが、少なくとも本則20%に戻すべきであるし、総合課税化を目指すべきである。貧困と格差が拡大する中、毎年100万円の少額投資の非課税措置を検討するのも理解できない。

5.海外で得た利益を国内に還流させることを理由として、日本企業が海外子会社から受け取った配当を非課税とする「資金還流促進税制」の創設を盛り込んでいる。たしかに、日本の海外現地法人が持つ内部留保の残高は、約17.2兆円(2006年度)と過去最高水準に膨らんでいる。しかし、肝心の対象企業が内部留保を実際に日本へ動かし、設備投資や雇用に還流するのか不透明である。

6.土地税制の軽減措置の延長・拡充は、都心部の不動産開発を手がける大手の不動産会社やゼネコンばかりが恩恵を受けるものだ。

7.中小企業の法人税の軽減税率の引き下げ、事業承継税制の創設や投資減税など、中 小企業支援の強化は、廃業の食い止め、経済の底上げ、雇用の確保などの観点で一定評価できる。しかし、多くの中小企業は赤字経営で法人税を払えるだけの利益もない。より抜本的な中小企業対策が必要だ。

8.設備投資減税、研究開発投資減税の拡充、省エネ税制などは、中小企業に限定すべきである。

9.住宅ローン減税について、実際に最大の恩恵を受けられるのは、多額のローンを組める高所得者層に限られる。こうした批判に対し、中低所得者層に「配慮」し、住民税からも減税することになった。しかし、住宅ローン減税や自動車関係諸税の大幅な軽減措置によって、地方税財源に大規模な減収が生じることが懸念される。地方自治の根幹を支える貴重な財源であるにもかかわらず、地方の意思や歳出の実情とは無関係に、一方的に方針が出されたことは大きな問題である。

10.洞爺湖サミットの開催など地球温暖化対策の気運が高まっていながら、企業の負担増でCO2削減という炭素税創設が見送られたのは残念だ。

11.たばこ税について、政府・与党内では財源論や総選挙を意識した安易な議論が先行し、本質的な議論が深まらなかったのは残念である。

12.この間、5兆円以上もの地方交付税が削減されてきたが、自治体の担う公共サービスを維持・充実させるためにも、地方交付税の復元が不可欠である。地方が求めるのは自由に使える交付税の増額であり、麻生首相は指導力を発揮し、少なくとも自ら明言した「1兆円」の増額を実現すべきである。

13.消費税率の引き上げについて、麻生首相が求めていた引き上げ時期の明示を見送り、「2010年代半ばまでに行う」との表現にとどめたのは、選挙目当ての隠蔽であるとともに、首相の求心力・指導力の低下を示している。

14.業界、族議員、所管省庁の不透明な関係を断ち切るため、政策効果が乏しい租税特別措置・非課税等特別措置は廃止し、必要な措置は本則を改正して恒久化すべきである。

以上