2008年12月12日

金融機能強化法の成立にあたって(談話)

社会民主党党首
                                福島みずほ

 本日、参議院本会議において、政府提出の金融機能強化法改正案の採決が行われ、社民党は衆議院と同様に参議院でも反対した。参議院は与野党が逆転しているために、法案は否決された。しかし、与党側はただちに衆議院本会議を開き再議決に持ち込み、3分の2条項を用いて成立させた。また、新銀行東京を事実上、公的資金投入の対象から外す民主党の再修正案も、参議院では可決したものの、衆議院では3分の2条項により否決された。これは、国民の中で大きく意見が分かれている事柄を強引に延長しようとするものであり、多数による横暴といわなければならない。

 金融不安の拡大は、経済全体に混乱をもたらし国民生活に打撃を与えるものであるために、予防の措置をとるとともに迅速に対応しなければならない。金融機能強化法を再び制定しようとすることは必要であるが、今回の法案には、いくつか重要な問題を含んでいる。

 第一の反対理由は、そもそも金融機関に予防的な資本注入を行うにあたって、中小企業への継続的な融資に向けた明確な数値目標、さらにはきめ細かいチェック体制が極めて不十分なことである。これでは注入した資本がこれまで同様、金融機関の内部に蓄積される可能性が高く、貸し渋りの防止や中小企業への資金の円滑化に役立つ具体的保障は相変わらずない。このままでは単なる金融機関の救済になりかねない。

 第二に、原案では、申請する金融機関の経営者さらには株主の責任がまったく明らかにされておらず、修正案では経営強化計画に従前の経営体制の見直しが盛り込まれた。しかし、金融機関の役員の高額報酬については全く触れられていない。国民の血税である公的資金を受けながら高額の報酬を受け続けることは、国民感情からしても絶対に許すことができない。申請する金融機関に対して、その公共性だけでなく健全な運営を期すためにも、役員報酬については開示し、抑制を図るべきである。

 第三に、新設された協同組織金融機関の中央機関への資本注入についても大きな問題点がある。とくに農林中金は、農林水産業者を基盤とし、これらの金融の円滑を図り、もって農林水産業の発展に寄与することと定められている。しかし、農林漁業分野への貸出金残高は、9.8兆円のわずか1.2%に過ぎない。多額の資金をサブプライム関連商品などに投資し、挙げ句の果てに1000億円超の損失額を計上するなど、その財務体質の改善が必要である。

 第四は、放漫経営で経営が行き詰まることが予想される新銀行東京が対象から除外されないことである。新銀行東京は、石原都政によって設立されたが、放漫経営やずさんな融資実態から赤字経営となり、新たに東京都による400億円の追加出資を受けざるをえなかった。政府は、特定の銀行を外すことはできない、あるいは審査会で判断するとしているが、新銀行東京の経営悪化は現下の金融不安とは全く関係のないものである。

 税金をくいつぶし、放漫経営を反省することなく、無責任な経営を続けているこのような銀行にまで資本注入を行うことは、法の精神に照らしてもありえない。金融庁による検査結果も開示されず、財務金融委員会の付帯決議では「自治体に第一義的な責任がある」とされたが、この程度では何の規制策にもならない。

 社民党は、政府与党が3分の2条項を乱用して法案を成立させることを阻止するためにも、解散総選挙に追い込み与野党逆転を勝ち取っていく。

以上


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