2008年12月9日

WTO閣僚会合にむけての申し入れ

内閣総理大臣 麻生太郎 様

社会民主党 党首 福島みずほ
農林水産部会長 菅野哲雄

 WTOのファルコナー農業交渉議長は、13日からの閣僚会合にむけて、関税の大幅な削減から除外できる重要品目の数を全品目の4%とし、条件・代償つきで2%上積みする場合は低関税輸入枠の拡大を条件とするなどのモダリティ議長案の第4次改訂版を各国に示しました。この案は日本にとって大変厳しいものであり、農業者・農民団体は拙速な交渉再開と農業分野の安易な早期妥結に対して強い危機感をもち、日本政府の動向を注視しています。

 本年7月の交渉においても、政府は、重要品目の数を10%以上確保する姿勢から、いつのまにか8%に要求を下げ、ラミー事務局長の調停案の「原則4%、最大で6%」については強く反対しないまま、合意寸前までいきました。議長による貿易交渉委員会への報告書でも、重要品目の数は「4+2」という考え方をベースとした議論の内容が報告されています。

 このまま重要品目の数を十分確保できず、代償としての低関税輸入枠の拡大が進めば、国民の基礎的食料であるコメや乳製品、牛肉、砂糖など重要品目の農業生産は減少し、日本の農畜産業は衰退する事態となります。さらに、ミニマムアクセス米も100万トン以上の輸入が強いられ、水田農業の再生も困難となります。

 日本は、食料自給率が先進国最低で、食料の6割を海外に頼り、農産物の平均関税率も約12%とかなり低い水準にあり、農業保護も少ないまま、まさに「国際的圧力と危険にさらされている国」」となっています。このまま合意をすれば農水省が言う食料自給率50%の目標はまず不可能であり、農業が担っている食料供給機能、国土環境や国民の健康は失われ、地域社会が崩壊するおそれがあります。

 WTO体制は食料過剰時代のシステムであり、現在の食料危機や地球温暖化など食料をめぐる環境変化に全く対応できていません。また、米国など輸出国主導の行き過ぎた貿易市場主義が鉱工業品と同様に農産物の国境措置を弱めてきた結果、輸入国や途上国の食料安全保障や一次産業を衰退させ、貧困と環境負荷を招いています。

 政府は、2000年の日本提案で示した国家や地域の価値観を相互に認め合い、農業の多様性と共存が確保されるよう公平・公正なルールを望むという基本スタンスを明確にし、農産物の輸入増加を招く拙速な合意はしないよう強く求めます。

<記>

一 コメや乳製品・牛肉、砂糖など重要品目の十分な数を断固確保するとともに、関税の上限設定は削除し、低関税輸入枠の拡大は認めないこと。重要品目の確保や柔軟性について十分な配慮が得られないときは、交渉の中断も含め、厳しい判断をもって望むこと。

二 汚染米の原因となったMA米の輸入拡大は認めず、食料主権に基づき削減を求めること。

三 輸出国による不透明かつ不公正な輸出補助金は削減すること。

四 先進国最低の食料自給率の向上や担い手確保にむけて国内支持の柔軟性を確保すること。

五 食料輸入国や途上国の唯一の対抗手段である特別セーフガードを維持・拡大すること。

六 食料増産や各国の農業基盤の強化、アジア諸国の小規模農業の維持、貧困解消、環境保全、食の安全など農業の価値を高める公正かつ新たな貿易ルールの確立を追求すること。

以上