社会民主党党首
福島みずほ
本日、政府は、安全保障会議を開き、アフリカ・ソマリア沖の海賊対策として、自衛隊法の海上警備行動で海上自衛隊艦艇を派遣することを決めた。これを受けて、浜田靖一防衛大臣は海自に準備指示を出した。
近年、ソマリア沖・アデン湾周辺海域において海賊事案が急増しており、国連安保理ではこれまで4回にわたって決議が行なわれている。アデン湾を通航する船舶約2万隻(年間)のうち、日本関連船舶が2000隻以上を占めていることを踏まえれば、日本政府が海賊問題に積極的に対応すべきことは当然である。
日本は、これまでもマラッカ海峡の海賊対策等に取り組み、周辺諸国の海上法執行能力向上のための人材育成支援、情報共有センターの設置運営等において着実な成果をあげてきた。ソマリア沖の海賊対策についても、人材育成支援、巡視艇の提供、情報共有機能の構築などに積極的に取り組むべきだ。
日本における海上の安全と秩序を守る責任は第一義的に海上保安庁にあり、緊急の対策として日本関係船舶の警護が必要であれば、海上保安庁があたるべきである。十分な検討もなく、海上保安庁による対処を「困難」と決めつけ、自衛隊の海上警備行動を発動しようとする与党・政府の判断は疑問であり、隙あらば自衛隊海外派遣の道を広げようとする意図を感じざるをえない。
自衛官には警察権行使の権限(司法警察権)はなく、逮捕等の訓練の経験もない。装備等の面でも海賊に対する警察権行使の範囲であれば、海上保安庁による対応は十分可能である。
本来、領海内の日本国民と船舶を防護することを想定した自衛隊法第82条の海上警備行動の規定に基づいてアデン湾まで自衛隊を派遣することは、明らかに法の趣旨を逸脱している。防衛大臣の発令によって、国会の関与もなしに、自衛隊を海外に派遣することは文民統制の観点からもあまりにも乱暴といわざるをえず、反対である。
政府は、本日の海上自衛隊への準備指示を再考し、撤回すべきである。
以上