2009年5月1日

人事院勧告について(談話)

社会民主党幹事長
重野安正

1.本日、人事院は、夏季一時金の特別調査の結果を受け、国家公務員の一時金を0.20月凍結することなどを内容とする勧告を行った。人事院は、「政治からの要請」については否定しているが、今回の特別調査は、与党の「国家公務員の給与の検討に関するプロジェクトチーム」など、一連の政府・与党の一時金削減の意向を受けたものといわざるをえない。まさに、公務員賃金引き下げを選挙対策に利用しようとする与党側のきわめて政治的・党利党略的な動きであり、それに人事院が与したものだとすれば、労働基本権制約の代償機関としての役割を否定するとともに、独立・中立の第三者機関である性格を歪めることになる。

2.景気悪化の影響で本年夏の民間一時金は大きく落ち込んでいるが、民間支給実態の精緻な調査にもとづく夏の勧告を経て公務員の一時金に反映されるのがこれまでのルールである。今回の特別調査は、通常の民間給与実態調査とは異なる抽出方法を用いたこと、支給実績でなく支給額の対前年伸び率をとっていること、実地調査でなく通信調査で行ったことから、人事院自ら、「抽出された企業の業種によって全体の調査結果が大きく左右されるおそれがある」、「全産業を代表するものとはいいにくい」などとしているように、夏の一時金回答だけに限定した概括調査にすぎず、調査対象の企業数にも各県でばらつきがあるなど、精確性の面で大きな問題がある。すでに昨年の08勧告を通して確定している夏季一時金の凍結という極めて異例の事態となれば、これまでの民間の実態を精確に調査し比較するという公務員賃金の決定ルールを踏みにじることになり、余りにも乱暴である。

3.中小企業などでは労使交渉が現在も続いている。その中で、公務員の一時金凍結が実施されれば、臨時・非常勤職員の賃金はもとより、中小・地場企業の一時金に多大な悪影響を与えることになる。また7月に向けて検討されている最低賃金の改定にも影響をもたらす。「100年に一度の危機」といわれる経済不況において、賃下げ圧力が増すことは、内需に大きな打撃を与え、景気悪化にさらに拍車をかけることとなりかねない。

4.人事院自らが「異例、特別の措置」とするように、今回の勧告は、多くの問題点を含んでいる。人事院の一方的な姿勢は問題があるし、労働基本権制約の代償措置としての役割を果たしていないと批判せざるをえない。

以上