社会民主党幹事長
重野安正
1.2009年度補正予算案は、規模も約15兆円と巨額であり、内容的にも様々な問題点・論点を含んでいることから、社民党はじめ野党は、十分な審議の実施を求めてきた。しかし、与党は野党の審議要求を無視し、職権で締めくくり総括質疑と採決日程を決め、本日の本会議に緊急上程し、採決を強行した。社民党は、「ぼろが出るのを隠そう」といわんばかりの強引な運営に対し強く抗議し、民主党・国民新党とともに、採決には参加しなかった。
2.もともと麻生総理は、「三段ロケット」論を展開し、2009年度予算の成立こそ「最大の景気対策」と強弁していた。にもかかわらず、当初予算成立から間もない4月27日に、約15兆円もの大型補正予算案を提出した。過去最大の当初予算の執行効果も見極めないまま大型補正予算案を提出したことは、当初の予算が「欠陥予算」であることを自ら認めたことになる。
3.今の危機的な経済状況をもたらした、小泉・竹中改革路線の破たんに対する真摯な反省もなく、補正予算案には、「百年に1度の危機」からの脱却と「総選挙対策」を名目として、党利党略的な施策や、大企業優遇、富裕者優遇、業界支援策が多く盛り込まれている。しかも「ワイズ・スペンディング」も名ばかりで、底力発揮・21世紀型インフラ整備と称して、この間抑制してきた従来型の大型公共事業も大盤振る舞いとなっている。また、公共事業費のなかの「その他施設費」も、09年度の当初予算では6492億円しか計上されていないにもかかわらず、補正によって2兆8969億円も追加されている。アニメやマンガ、ゲームに関する展示を行う「国立メディア芸術総合センター(仮称)」の建設費用など、本当に緊急に打ち出さなければいけないものなのか、疑問を禁じ得ない。自衛隊によるソマリア海賊対策活動費を盛り込んだのも看過できない。
4.「目玉」策のエコカーやエコポイントも、環境対策というよりも自動車業界や家電業界の要望に応えたものだ。消費喚起を目的とするのならば、家計に安心をもたらすよう、雇用の安定や賃金引き上げ、福祉・社会保障の充実による将来不安の解消など、生活者のための個人消費活性化策こそ講じるべきだ。
5.少子化対策と称して、1年限りの3万6千円の子育て応援特別手当といった露骨なバラマキが盛り込まれた。医師不足対策や後期高齢者・障害者などの負担軽減策も盛り込まれてはいるが、制度の抜本改正に踏み込まない、世論受け・選挙向けの場当たり策である。雇用対策として、雇用調整助成金の積み増しや基金の増額が行われる。失業者の職業訓練・生活費支援は恒久的なものではなく、時限的な措置にすぎない。
6.贈与税の軽減が行われるが、現状でも資産課税は優遇されている上、過去最大規模の住宅ローン減税とダブルとなり、富裕層を一層優遇する格差拡大税制だ。交際費減税といっても、多くの中小企業には交際費を拡充するゆとりもなく、そもそもの中小企業対策こそ充実すべきである。
7.総じて金融危機をもたらした原因への反省はなく、50兆円まで株式を買い取る保証策は株式の適正な価格形成を損なう恐れがあり、株主や証券業界の利益擁護策にすぎない。住宅ローンの円滑な借り入れ支援策も、日本版サブプライム・ローンになるのではとの懸念をぬぐえない。
8.補正予算案は、省庁が国会の審議を経ず数年にわたり使える基金を乱造するなど、憲法第86条の予算単年度主義の形骸化の懸念も強い。財源として、「霞が関埋蔵金」の一部が充当されるものの、多くを建設国債・赤字国債に頼るなど、財政規律もなし崩しにされた。持続的内需拡大の観点も、将来を見据えた理念も展望もない選挙目当てのバラ撒きであり、そのツケを消費税率アップの形で国民に押しつけようとするものである。
9.社民党は、選挙向けの国家予算を使った「大型買収」ともいうべき補正予算に断固反対である。参議院においても、補正予算の問題点を徹底的に追及するとともに、格差是正に資する内需拡大策や、「改革」の名によって壊された社会保障制度の再生、環境分野をはじめ将来を見据えた産業育成・雇用創出策を求めていく。
以上