2009年6月17日

農地法等の一部改正案の成立にあたって(談話)

社会民主党
農林水産部会長
菅野哲雄
菅野哲雄

1. 本日、農地法等の一部を改正する法律案が成立した。改正案は、これまで限定してきた一般株式会社や個人による農業参入を貸借ならどこでも自由とし、「耕作者主義」に立つ農地法を根本から崩していくものである。利益・採算を追い求める企業型農業が中心となれば、農村は市場原理で覆われてしまい、農山村集落の維持や環境保全、農業の持続性を担ってきた家族農業はいずれ排除され、農地利用の緩和も近いうちに所有へと進むおそれがあることから反対する。

2. 農地法は、農地が先祖伝来の重要な農業生産基盤であり、自ら農作業を行う者が農地についての権利を取得し、保護されるという「耕作者主義」を基本とし、資産保有や投機目的での取得や賃借権を厳格に規制し、耕作者の地位安定・農業生産力の増進を目的としている。

 これまで農村社会の基礎となり、食料安定供給をはじめ、水源、生物多様性、国土・環境保全などの役割を発揮するとともに、土地投機によるバブル経済への一定の歯止めも担ってきた。

3. 改正案のポイントは、「所有から利用への目的規定の変更」、「適正かつ効率的な利用」による貸借権の許可規制の大幅な緩和により、一般株式会社の農業参入を進めていくものである。

 これまで財界が求めていた「農業の体質強化、農産物の生産強化、海外輸出、農地の所有と利用の分離を徹底、農地改革による土地利用型での大規模経営の実現と企業型農業経営の拡大」等の要望に沿ったものでもある。

 政府は、農業従事者の減少、耕作放棄地の増加や担い手への農地集積が進まないための改正と言うが、農産物価格は下落し、所得も一貫して低いこと、担い手がいないなど将来の見通しが持てないことが大きな原因であり、農地法の問題から生じたものではない。企業型農業では、採算が合わなければ生産は放棄され、優良農地の耕作放棄や農外使用もありえるし、食料自給率や環境保全も問題外視され、土地資本として抱え込まれるおそれがある。

 世界的にも穀物価格の高止まりから食料危機は続き、途上国の農業を破壊する農地争奪戦も始まっており、農地の維持・保全は、都市にとっても、食料主権からも重要である。

4. 修正では、耕作者による農地所有の重要性や耕作者の地位の安定を目的規定に、農地を利用する企業に役員のうち1人は農業に従事することを加えるなど最低限の規制を残したほか、家族農業経営に配慮する条文もいれたことは評価ができる。

 しかし、これだけでは耕作者主義を貫徹することはできない。@出資制限の緩和により一般株式会社による農業生産法人への支配が強まり、地域から離れていく。A財界の要望に沿って民法原則の20年を大幅に超える実質的な売却・所有に近い50年もの賃貸借期間を認めている。B小作地の所有制限の廃止は、貸借による農業経営を過度に促進させ、貸付地の第三者への売却も許可不要になり、新たな地主を招く。標準小作料の廃止も賃貸借契約のよるべき基準が喪失し、一括払いにより農地を占有できることなどの問題があり、これらは堅持すべきである。

5. 社民党は、株式会社や大規模農家だけに食料の生産・供給をまかせるのではなく、直接所得補償の導入により暮らせる農業を実現し、担い手や青年就農者の育成・確保、水田の多面的利用と食料自給率の向上、有機農業・環境保全型農業の推進、中山間地農業の維持をめざしていく。

 地域資源である農地は、農民や集落、市民、消費者、地域に密着した生産法人による利用・保全を進めるとともに、自治体や農業委員会による規制を一層強め、優良農地は470万haを確保し、原則転用や改廃は禁止すべきである。基本法の目的にある多面的機能の維持、農村の振興、持続可能な農業、水産・林業との連携をいかした農地制度の構築に取り組んでいく。

以上

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