2009年7月8日

新たな水俣病救済法案の成立にあたって

社会民主党幹事長
重野安正
重野安正

1. 本日、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法案」が成立した。

 同法案は、救済財源を確保するために、加害企業であるチッソの「企業再生=分社化」を進めることを最優先しており、水俣病被害者の切り捨てにつながるものである。社民党は、国の被害拡大に対する責任も明確にせず、すべての水俣病被害者の救済・補償にはならないことから反対した。また、自民、公明の与党と民主党が総選挙前の決着をめざし、多くの患者団体や当時者、現地の声を聞かないままに修正協議を急いだことも、批判されるべきである。

2. 公害の原点である水俣病の公式確認から53年が過ぎても、いまだ被害実態は調査もされず解明されていない。総理が責任を認め謝罪し、国会で二度と悲劇を繰り返さないと決議しても、いまなお多くの被害者が苦しんでいる。

 最高裁判決以降の認定申請者は6400人、新保健手帳の申請者も2万4000人を超え、胎児性患者の存在やいまだ名乗り出ることができない被害者もおり、訴訟提起者も1800人を超えている。

 国の責任において、認定基準の見直しや水俣病の医学的議論と再検証を行い、早急かつ恒久的な救済・補償制度を構築すべきである。

3. 与党と民主党による協議の結果、水俣病の幕引きにつながる地域指定の解除が削除されたこと、被害者救済の範囲が最高裁判決で認定された病像を若干取り入れたこと、環境汚染防止措置や調査研究が盛り込まれたことに対する努力は評価したい。

 しかし、胎児性患者や小児性患者は救済対象から外され、感覚障害の範囲も不明確である。さらに申請者は、95年解決と同様に公健法の認定申請や訴訟を取り下げることを条件としているもので、被害者の裁判を受ける権利や公害による救済と補償を受ける権利をも奪うものである。

 最大の問題である「分社化」については、チッソが一時金の支払に同意するまで認可しないという条件をつけたが、分社化により加害企業を水俣病や地域から解放させる方向は変わっていない。さらに、一時金については別途協議することとなり、今後は救済措置方針で定められる。しかし認定者の数やチッソの負担能力(株式の売却益)の範疇で補償額が決まるために、低い額での決着を迫られることになる可能性が大きい。また加害者である行政の裁量措置を残しており、不知火海沿岸の健康・環境調査も即実施されるのか不透明である。

4. 救済法案成立後も、公健法の認定基準はそのまま存在し、多くの被害者団体が反対したまま訴訟は続く。また、3年以内に救済措置の対象者を確定するなどとした新救済策による新たな混乱も想定される。

 被害者や当事者が理解し納得した救済・補償でなければ、苦難の歴史から解放され地域で安心して暮らすこともできず、水俣病は終わらない。

 社民党は、引き続きチッソの分社化は断固認めず、国の責任において水俣病の被害実態の調査と全容解明を実施し、すべての水俣病被害者への救済と補償を行ない、地域社会を再生するため、全力をあげて取り組んでいく。

 

以上