2009年8月14日 

通信・放送の「総合的法体系」の駆け込み「答申」に反対する(談話)

社会民主党幹事長
重野安正
重野安正

1.さる10日、総務省の通信・放送総合的法体系検討委員会が開かれ、答申(案)の内容が固まったといわれている。これは当初、本年12月までに答申を得ると表明していたものだが、急遽、今月内にも情報通信審議会の承認手続きを経て総務大臣へ答申を行うと聞いている。社民党は、長年「表現の自由」を尊重、確保を目指す立場から、政権公約等を通じて政府・与党権力から自立した「独立行政委員会」を中心にした通信・電波監督行政を主張している。関係団体・個人等からも、本答申に先立ちパブリックコメントで「独立行政委員会設置」への意見等が寄せられているのに、答申案ではこれがほとんど顧みられず、官僚主導の大筋そのままである。にもかかわらずこの大幅な前倒しは、8月30日の総選挙の結果予想される政治転換を逃れるための、総務省の駆け込みの暴挙と言わざるを得ない。

2.とくに、地上放送が施設の免許に加えて「放送の業務」について「認定」を受けるという、番組内容規制を政府が行いうる規定も含まれるとのことであるが、現行法制では放送免許は基本的にコンテンツでなく、伝送設備を管理するものであり、答申案では「規制強化」になる。放送法の趣旨でも「表現の自由」の尊重から、設備に対する免許の審査に限られていて、現行法制で、番組編集準則違反を理由に電波法で処分することはありえない。あらたな認定となった場合、地上放送も委託放送事業者と同様、放送法違反を理由に業務停止命令の対象になる可能性があり、番組編集準則違反等を理由に、番組内容に基づいて総務大臣による放送局の処分が可能となる。このような、表現の自由への干渉となる改悪は認められるものでない。折しも8月6日佐藤総務大臣が、BPOでは「お手盛り」だとして別途新たな常設の番組監視機関を設立すると表明していることも、これを先取りするかのようである。

3.答申のテーマとする「情報の自由な流通の促進」は、破綻した“竹中懇”を元にする新自由主義経済の夢を後追いし、事業者の権益拡大・ビジネス優先の内容であって、そこには国民の最大の権利である「知る権利」と表裏一体の「表現の自由」を保障する姿勢がない。経済優先を動機とした「総合的法体系見直し」そのものが疑問であり、稚拙かつ拙速な答申である。海外の先例も改正理由だというが、ヨーロッパ諸国では、日本とは根本的に異なり独立行政機関による管理・監督が行われている。放送の国家からの自由が保障されずに規制方法が変わることは、規制強化に他ならない。放送内容は事業者、業界の自立と世論によって改善されるべきである。「放送による表現の自由」を明記した放送法1条、3条の規定は残すべきである。

4.インターネットに関しては、現行の青少年対策、環境整備法の見直しを行い、新たな管理を打ち出さなかったのは当然であるが、「インターネット」の自由を規定するに至らなかった点が不足である。政府総務省は、総選挙直前にこのような疑念の多い内容の答申をする(受ける)べきではない。少なくとも当初予定した期日までパブリックコメント等をもとに十分民意を聞き、答申は延期すべきである。

以上

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