社会民主党幹事長
重野安正
1.本日、2010年度予算案が衆議院を通過した。鳩山三党連立政権が初めて編成した2010年度予算は、小泉構造改革の負の遺産に対し、雇用や医療、福祉、地方の再生を図るには今しかないとの問題意識で、政治主導の下、三党政策合意の実現を最大限めざしたものである。「いのちを大切にする政治」を掲げている社民党も、予算編成に積極的に参画してきた。2010年度予算は、生活再建を実現する、「いのちを守る予算」として、この間進行してきた社会的セーフティネット破壊路線からの転換に大きな一歩を踏み出すものとなっており、社民党は賛成した。
2.2010年度予算は、公共事業関係費が18.3%マイナスとなる一方、社会保障関係費が9.8%増の27兆2686億円となるなど、旧政権ではできなかった、ドラスティックな財政配分の変化を実現している。大型ダムに象徴される旧来型の大規模公共事業中心の予算配分ではなく、医療や年金、福祉、介護、そして教育や暮らしといったソフト分野にもっと光をあてようという姿勢が明確になっている。
3.2010年度予算は、国民に安心をもたらす社会保障分野に手厚い配分を行っている。社会保障費の自然増を2200億円以下に抑制する方針を撤廃するとともに、生活保護母子加算の継続、父子家庭への児童扶養手当の支給、介護労働者の待遇改善、障害者自立支援法廃止までの負担軽減、診療報酬の10年ぶりのプラス改定、肝炎医療対策の強化による自己負担引き下げ、協会けんぽの国庫負担増額などを行っている。
4.2010年度予算は、雇用対策の充実強化を図っている。雇用保険の加入要件である雇用見込み期間の6か月以上から31日以上への短縮、失業後1年間の医療保険負担の軽減、雇用調整助成金の支給要件緩和などで、前年度に比べ10倍以上増額している。
5.2010年度予算は、地域活性化、地方財政の充実強化を図っている。18兆円を超える巨額の財源不足に見舞われた地方についても、最大限配慮した予算を目指し、三位一体改革で減った地方交付税の復元のため、既定の加算とは別枠で9850億円加算するなどして、自治体が実際に受け取る交付税額の1.1兆円増を行っている。交付税の1兆円以上の増額は11年ぶりのことである。特別枠として地域のニーズに適切に応えられるよう、地域活性化・雇用等臨時特例費9850億円を設けたほか、高金利地方債の繰り上げ償還や地域医療提供体制の確保、特別支援教育、公有林等間伐対策などの地方財政措置も充実している。
6.2010年度予算は、中小企業や農林水産業対策にも力を入れている。中小企業の資金調達の円滑化や経営支援、研究開発支援を充実するとともに、米の戸別所得補償モデル事業や水田利活用自給力向上事業も強化している。
7.2010年度予算は、未来の担い手である子ども関連予算の充実を図っている。子ども手当の支給、高校の無償化の実施、民間保育所における受け入れ児童数の増加、家庭的保育事業や一時預かり事業などの拡充、延長保育、病児・病後児保育、休日保育など保護者の多様なニーズに応じた保育サービスの提供、地域における子育て支援拠点の設置など待機児童解消策の充実が図られている。
8.その他、2010年度予算は、地球温暖化対策では、新エネルギー、再生可能エネルギーの普及促進のため、対前年度比181億円増の746億円が計上され、また、「海洋国家」日本として、遠方海域・海賊対処・重大事案への対応体制を強化するため、ソマリアの海賊対処を自衛隊ではなく海上保安庁主体で行うことも展望して、社民党が強く求めた、海上保安庁の「しきしま」級巡視船の整備にも着手することになっている。
9.税収が公債発行額を下回るのは、敗戦の焼け野原の1946年度以来64年ぶりであり、過去最悪の状況ともいえる。そもそも今の税収の大幅減収は、自公政権の金持ち・大企業優遇減税の税制改正と、麻生景気対策三段ロケットの失敗といった、いわば前政権のツケである部分も大きい。引き続き、特別会計の抜本見直しなどに全力で取り組む必要がある。なお、防衛関係費と国民投票関係予算、原子力関係予算など問題のある部分もなしとはしない。
10.今後、審議の舞台が参議院に移るが、景気の回復、雇用の拡大・創出に向けて国民の期待に応えることができるよう、一日も早い成立が求められている。社民党は「三党政策合意」に基づき、新政権が本当の意味で「内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく」よう、全力で頑張る決意である。同時に政治とカネに関する国民の不信の払拭については、別途政党間協議を進め、企業団体献金の禁止をはじめとする制度改正も実現していく。
以上