2010年5月17日

日本国憲法の改正手続きに関する法律(改憲手続法)の施行にあたって(談話)

社会民主党幹事長
重野安正

1.憲法を改定するための国民投票法などの手続きを定めた「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(改憲手続法)が、明日施行される。この法律は、かつての自公政権・安倍内閣が、戦前のシステムや価値観への回帰を目論み、国会での審議や国民的議論が十分なされないまま強行に成立させたものである。社民党は、国の基本を定めた憲法を変える重要法案を軽々に取り扱う自公政権の暴挙に強く抗議し、法案成立に反対してきた。

2.改憲手続法は、18項目にもわたる付帯決議が付けられた欠陥法案であり、施行までには多くの法整備や検討課題が残されていた。しかしこれまで、憲法改正原案、改正発議を審議する憲法審査会は一度も開かれていない。これは、改憲に反対する国民の意思を国が真摯に受け止め慎重な配慮をすべきである、という世論のうねりが高まってきたからであり、国民が憲法改正を求めていないことにほかならない。社民党はこの声をしっかりと受け止め、憲法審査会を始動させないよう国会内外で働きかけてきた。なお、改憲手続法が施行されても、同法附則が定めている投票年齢と公務員の政治的行為に対する制限に関する検討と、必要な法制上の措置が講じられるまでの間は、同法は不完全な状態であり、憲法改正原案の発議を行うことができないことは当然である。

3.昨年の総選挙で、国民生活を無視し続けた自公政権は敗れ、社民党・民主党・国民新党の3党連立による「新しい政治」への転換がなされた。「新しい政治」に求められるものは、憲法に定められた「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現する真の政治を取り戻すことにある。また、国民主権と基本的人権の尊重は、広く国民のなかに定着しており、さらなる充実をはかることが私たちの責務である。

4.日本国憲法は、国の最高法規であり、わが国が平和国家として歩むための基礎となってきた。連立政権の政策合意においては、憲法の3原則の遵守と、「憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」ことが確認されている。今こそ、平和憲法を正しく理解し、その理念の実現に傾注すべき時である。法施行の今再び、自民党を中心に改憲策動が強まり、改正原案を今国会に提出しようとする動きが出ている。憲法を尊重し擁護すべき義務をかなぐり捨て「米国に追従し、戦争のできる国づくり」を進めようとするタカ派の危険な策動には、断固として対決していく。

5.鳩山内閣での社民党の責務は、人権が保障された平和で豊かな社会を築くため、憲法の理念を生かした政治を実現させることである。社民党は、新しい政治の品質保証役として、引き続き、憲法改悪に反対する人々や、国の礎である憲法を軽々しく扱うことに異議を唱える人々と手を携えて、憲法審査会を動かさないよう監視していく。

以上