2011年1月27日

護衛艦「たちかぜ」乗組員の自殺に関する横浜地裁判決について(談話)

社会民主党党首
福島みずほ

 海上自衛隊横須賀基地配備の護衛艦「たちかぜ」の乗組員だった一等海士の男性(当時21歳)の自殺は先輩の元二等海曹(懲戒免職)のいじめが原因だったとして、遺族が損害賠償を求めた訴訟判決が1月26日、横浜地裁であった。判決が、上官3名が元二等海曹の執拗かつ悪質な暴行を放置したこと等が指導監督義務違反に当たるとし、自殺との因果関係を認めた点は評価するものである。

 一方で、判決が「先輩隊員や上官に男性の自殺は予見できなかった」として死亡に対する損害賠償は認めず、男性が生前いじめによって受けた精神的苦痛への慰謝料の支払いを命じるにとどめた点は遺憾である。遺族と弁護団は、自殺の予見可能性を認めなかった点を不服として控訴する意向だ。

 本件裁判では、国が事件の調査報告書の情報開示を拒否したため、判決までに5年近くを要した。「防衛機密」を金科玉条にする防衛省、自衛隊の隠蔽体質そのものが問題であり、不要な情報秘匿は政府の怠慢かつ不適切な対応であったと批判せざるを得ない。

 自ら命を絶つ自衛官の数は年間約80人で推移し、10万人あたりの自殺率は一般職国家公務員自殺者の1.5倍である。命令に対する服従が絶対視される自衛隊の組織的体質が「指導」という名の構造的いじめを生み出している。

 「いじめが原因」として訴えを起こす遺族らが全国各地で相次いでいる。遺族はみな「真実を明らかにしたい」「自衛官の自殺を減らしたい」「構造的ないじめを生み出す自衛隊の体質を改善したい」、その一心で訴訟に臨んでいる。

  社民党は、自衛官の人権と尊厳を守る立場から今後も遺族を支援していく。そのうえで、自衛隊内部での人権侵害を予防すべく「自衛隊オンブズマン制度」の創設と自衛官の基本的人権を保障する立法をめざすものである。

以上