2011年3月1日

2011年度予算案の委員会可決に当たって(談話)

社会民主党幹事長
重野 安正

1.社民党は、予算委員会において、子ども手当や普天間基地移設、高江ヘリパッド工事の関連予算、日米地位協定、TPP交渉、消費税率引き上げの影響、国民健康保険の空洞化、現下の新卒就職内定率と新卒者の就職支援、市町村の除雪費、鳥インフルエンザ対策、企業・団体献金の全面禁止の実現、公共事業中止に伴う生活再建補償などについて、厳しく追及し、積極的に党の主張や政策を提起してきたが、まだまだ十分とはいえるものではない。しかし、政府・民主党は、「熟議の国会」であるとか、「野党との協力」と言いながら、予算及び関連法案について、自ら何の譲歩をすることはなかった。また、三号被保険者救済問題の統一見解も出さないまま、年金問題に関する集中審議の要求も受け入れることなく、さらに歳入を決める税法や公債特例法案などの審議も進んでいない中、強引に採決を押し切った。社民党は、このような国会運営のあり方に対し、断固抗議する。

2.さて、社民党は、年末の民主・社民両党の党首会談を踏まえ、一昨年の三党連立政権の「政策合意」を実現する立場から、2011年度予算についても政府・民主党と編成協議を行ってきた。その結果、雇用、年金・医療・介護、地方財政、子育て、総合交通などの分野において、わが党の提言を相当程度予算案に盛り込むことができ、国民の「生活再建」に一定の成果を上げることができたことは間違いない。

3.しかし、菅内閣は、その後の内閣改造で、民主党のマニフェストを攻撃してきた与謝野馨氏を経済財政担当大臣に任命したことに加え、通常国会の施政方針演説で、消費税増税を企図した税と社会保障一体改革、法人税減税、輸出関連大企業優先のTPP参加表明、「日米同盟の深化」、米軍普天間基地の辺野古移設堅持などを打ち出したことに見られるように、新自由主義と官僚主導、対米依存回帰の傾向を強めてきた。

4.菅内閣が「元気な日本復活予算」と位置づけている2011年度予算案は、小泉構造改革路線から転換し、「家計に対する支援を最重点」と位置づけ、「国民生活の立て直し」を図っていくとした、三党「政策合意」を踏まえて、「命を守る予算」として編成された2010年度予算とはうって変わり、「国民生活が第一。」からの乖離を強めたものとなっている。まず、子ども手当の財源として筋違いの庶民増税の成年扶養控除の縮減、物価下落を理由にした年金額や児童扶養手当の引き下げ、国民健康保険税の算定方法見直しによる負担増、財源不足を理由とした高額療養費制度の低所得世帯の負担上限額の引き下げの見送りなどの国民負担への転嫁が推し進められている。つぎに、格差是正に逆行する法人税の実効税率5%引き下げや金融証券税制の不公平税制の継続、原子力の海外展開など、金持ち・大企業支援施策に舵を切っている。さらに、沖縄の基地移設関連予算、沖縄防衛局名護事務所設置及び高江ヘリパッド建設の予算の計上、民主党がマニフェストで削減をうたっていた思いやり予算の5年間維持、新たな「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」に基づく、「動的防衛力」を構築することが目指された防衛予算となるなど、平和の面からも看過できないものとなっている。

5.社民党は、菅内閣とその予算案については、あくまでも菅内閣が誠実に三党「政策合意」を実現するのか否かに基づいて対応することとしてきた。しかし、菅内閣は、社民党に対し、予算案及び関連法案への協力を求めながら、「国民生活が第一。」という「政権交代」の原点からかけ離れた政策展開や小沢元代表の処分をめぐって、党内対立・亀裂を深めるなど、民主党は今や政権政党としての体をなしていない状況にある。しかも、協議を呼びかけながら、法人税5%減税、成年扶養控除の縮減、国民健康保険料の負担増や沖縄の基地関連事業など、社民党の求めた6項目の修正項目に対しても、いまだに「ゼロ回答」という不誠実な対応のままである。遺憾と言わざるを得ない。したがって、政府予算案に党の提言が盛り込まれたとはいえ、全体として新自由主義的な回帰を強める菅内閣の姿勢を認めることはできないことから、2011年度政府予算案には反対した。

6.国民生活等への影響を真剣に考えるならば、野党に対する「脅し」ではなく、一昨年夏に国民が「政権交代」に寄せた期待にこそ真摯に答えるべきであり、「政権交代」の原点に立ち戻った対応を速やかにとるよう求める。社民党は、国民の「生活再建」の実現に向け、参議院段階においても、予算案の問題点を浮き彫りにするとともに、政府への追及や政策提言を続けていく。

以上