2011年11月11日
社会民主党党首
福島みずほ
1. 本日、野田総理は会見を行ない、既定方針どおり、TPP協定交渉に参加すると表明した。TPP交渉参加をめぐっては、交渉内容の情報や相手国の要求、TPPが日本にもたらすメリットやデメリット、リスクがまったく国民に開示されていない。
国民世論は賛否がわかれ、多くの農林漁業者、医療関係者、消費者、自治体が反対し、1100万名を超える請願署名も提出されている。
さらに、232名の超党派の衆議院議員が、APECでのTPP交渉参加表明に反対する国会決議に賛同している。このように地域経済社会、国民生活を不安に陥れ、政治の混乱を助長するTPP交渉への参加表明に対し、強く抗議する。
2. TPPは、例外品目を認めず100%自由化を前提とし、かつ諸々の非関税項目の市場開放も含む包括的なFTAであり、アメリカの輸出倍増、アジア戦略の一環となっている。
TPPに参加すれば、農林水産業への打撃だけでなく、医療(国民皆保険)、医薬品認可、食の安全基準(遺伝子組換え、残留農薬)、投資(外国資本の自由化)、公共調達(公共事業)、郵政、共済など24分野の市場開放により、国のかたちが大きく変わり、国民生活に多大な影響を与えるおそれがある。
しかし、政府は、これらの不安や影響に対して、どのように対処するのか、国益をどう守るのかについて、まったく戦略をもっていないことが明らかになっている。
先の米韓FTAでは、米国は7万人の雇用を拡大したと評価しているが、韓国は米国での関税撤廃を得ただけで、米国から安全基準や医薬品、知的財産、保険サービス、紛争解決手続きなど不利な規準を飲まされ、国内で大きな反発が起きている。
これらの状況の十分ふまえた上で、判断すべきである。
3. 政府は、「アジアの成長を取り込む、日本にプラスになる、TPPと農林漁業との両立をはかる」と言うが、アジアの主要国の中国や韓国、インドネシアは参加しておらず、政府試算も統一性がなく、10年後にGDPが若干増えるだけでしかない。また、輸入農産物の増加により食料自給率の向上は困難となり、農林漁業再生の具体策もなく、実現は不可能である。
4. TPP交渉への参加は、米国など参加国の同意が必要で、例外品目をあげての参加は認められないものとされている。今後、日米での事前協議、参加国との交渉が想定されるが、日本の外交姿勢の現状から、対米従属が一層強まり、交渉内容などの情報も隠されるおそれが強い。TPPは、日本の市場を完全自由化するものである。政府は、米国の要望を飲んで、国民に説明するのではなく、国民のために、重要品目の関税の削減・撤廃はしないこと、公的医療制度や食品などの安全基準を守ることなど、日本の国益を守ることを約束すべきである。
社民党は、TPPへの参加表明を断固認めない。政府が引き続きTPPへの参加を求めるのなら、国民がきちんと判断できるよう24分野の交渉内容、論点、合意点などの情報を公開し、何が日本の国益となるのか、農業への打撃や国民生活への影響にどう対処するのか明らかにすることを求める。今必要なことはTPPではなく、大震災からの復旧・復興、被災者への支援に全力をあげるとともに、近隣のASEAN+日中韓、東アジアを中心とした、相互互恵的な経済連携の促進である。
以上