2011年6月28日
経済産業大臣
海江田 万里 様
社会民主党
党首 福島みずほ
3月11日に福島原発事故が発生して以来、現在もなお事故は収束していない。日本のみならず、世界中に、原発が引き起す危険性への不安が広がる中で、原発事故を引き起した当事国として、事故の収束、検証、対策、廃炉の実施などが明確に示され、実施される必要がある。
現在、政府では、福島原発事故の収束にあたる一方で、事故調査・検証委員会が設置され、事故の検証作業が始まりつつある。その結果も出ない中で、現在、政府では新成長戦略会議の下に「エネルギー・環境会議」が設置され、経済産業省の下でも、産業構造審議会や総合資源エネルギー調査会においてエネルギー政策についての議論が始まりつつある。
今回の福島原発事故が発生した背景には構造的な問題が存在する。第一に、経済産業省の下に、規制機関と促進機関が同居するという構造的な問題。第二に、行政、電力会社、研究機関、関連会社などによって成り立つ「原子力ムラ」と言われる、批判に対して閉鎖的な環境の中で政策が執行されてきたことである。行政からは、電力会社等への天下りも行なわれてきた。このような問題に対する猛省と対策がなされない中で、経済産業省の中で、今後のエネルギー政策を議論し決定する資格があるのか。
社民党は、今後のエネルギー政策については、原子力政策も含め、エネルギー・環境会議が指摘するように、独立した体制の中で、国民に開かれた、民主的なプロセスの中で、議論し、決定すべきものと考えている。
また、現在停止中の原発を再稼動することについても、原因究明の途上で短期的な対策の一部がとられているに過ぎず、原子力安全委員会、原子力安全・保安院による十分な検討も対策も済んでいない状況である。このような段階での対策では、周辺住民の不安を払拭することはできない。また経済産業省が、福島原発事故を引き起した主要な存在であることを謙虚に受け止めるなら、同省がエネルギー政策の策定や原発の再稼動に動くといった拙速な行動は控えるべきと考える。
以上を踏まえて、社民党は、下記を申し入れる。
記
一、 「事故調査・検証委員会」における事故調査に協力し、原発事故についての徹底的な検証を行なうこと。また経済産業省内でも、これまでの原子力政策についての検証を行うこと。
一、 原発事故についての検証が行なわれ、安全設計指針や安全基準の見直しが行なわれない中での「安全宣言」は拙速に過ぎる。少なくとも、新たな安全設計指針や安全基準の見直しが行なわれ、必要とされる対策がすべて実施完了されるまで、原発の再稼動を行なうべきではない。
一、 エネルギー基本計画をはじめ、エネルギー政策の方向性については法改正の後、経済産業省ではない組織で、国民の参加を保障し、事務局に民間登用を行なうなど、徹底的に開かれた場における民主的な議論のプロセスを確保した中で、議論し決定すべきである。
一、 今夏の電力需給については、地域、部門、時間等で細分化した需要データ、各発電設備の状態、供給力をはじめとして、あらゆる情報を完全に開示していただきたい。社民党の試算によれば、原発に頼ることなく今夏を乗り切れるという結果がでている。休止中の発電所、自家発電設備・特定規模電気事業者(PPS)などあらゆる設備・手段を総動員しながら、原発の再稼動を急がず、まず「安全」こそ最優先させるべきである。また、節電への協力を呼びかけつつ、大口需要の調整などのピーク対策をより徹底されたい。組むべきである。
一、 これまでの経済産業省内で積み重ねてきた省エネルギー対策をさらに発展させるとともに、自然エネルギーを促進するため、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」をはじめ法制度などの環境を整備し、この分野での研究開発および実現のために人材および予算を集中し、世界に先駆けた自然エネルギー産業の育成に取りべきである。
以上