去る5月11日、米国上院軍事委員会のカール・レビン委員長ら三上院議員が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を「非現実的で実行不可能、財政負担も不可能」として、嘉手納基地への統合の実現可能性を検討するよう米国防総省に求めた。
レビン氏ら米国議会重鎮が、現行の日米合意案に疑問を呈し、多角的な分析を加えて辺野古移設を“無理筋”な計画と指摘、提言したことには率直に賛同する。一方で、対案に「嘉手納統合案」を持ち出したことは看過できない。断固として反対するものである。
嘉手納基地周辺住民らは、今ですら同基地から暴露される殺人的爆音で平穏な日常生活を脅かされている。つい一昨日(5月20日)も、伊江島補助飛行場で実施すべきパラシュート降下訓練が、米軍から地元自治体への事前通知すらないまま嘉手納基地で強行されたばかりだ。名ばかりの「基地負担の軽減」に開いた口が塞がらない。
嘉手納基地では、「騒音防止協定」も遵守されることなく、むしろ外来機の飛来や訓練演習の激化によって、周辺住民は受忍限度をはるかに超える負担と犠牲を強いられている。去る4月28日、2万2,058人が原告となり、国を被告として「第三次嘉手納基地爆音等差止め訴訟」が提起されたのもその証左だ。怒りの告発である。
レビン氏らに「嘉手納統合案」はじめ「キャンプ・シュワブ陸上案」「国頭村安波案」の県内移設三案を提示した県選出衆議院議員の行動も容認できない。政権与党の幹事長が訪米しての“基地売り込み”である。「県内移設誘致」以外のなにものでもなく、「国外・県外」移設を希求する県民への裏切り行為だと断ぜざるを得ない。
「国頭村安波案」は、同区の一部住民らが高速道路(沖縄自動車道)の延伸整備等の条件を付して誘致するとしているが、北部振興、やんばるの発展と軍事基地受け入れをリンクさせて考えるべきではない。
基地受け入れと引き換えに、多額の補助金が投下されたところで、本当の地域振興には繋がらない。「アメとムチ」の構図に絡め取られ、地域社会が分断されるだけだ。それは、沖縄の戦後の歴史が証明している。辺野古移設をめぐって15年間、国策に翻弄され続けてきた名護市民の教訓でもある。
地域振興のあるべき姿とは、住民が自ら考えて企画・立案し、知恵をふり絞って財源まで捻り出すものだ。その前提の上に立って、国は制度・財政両面で過疎地域を支援すべきである。地域社会も、国策を言い訳にして、安易に懐柔されるようなことがあってはいけない。“基地マネー”の幻想を追うだけでは、持続的発展は遂げられない。
普天間飛行場移設問題の本質は、“世界一危険な”同飛行場の危険性の除去にある。したがって、普天間飛行場は即時閉鎖・返還すべきであり、固定化しての継続使用など以ての外だ。
「県内移設反対」が県民の総意である限り、沖縄のどこにも軍事基地を建設する場所はない。日米両政府は今こそ、基地の島オキナワの現実を直視し、県民の悲痛の訴えにしっかりと耳を傾けるべきである。現行の日米合意を白紙に戻し、「国外・県外」移設を追求することによってしか問題解決の道はない。
社民党はこの間、普天間問題について、辺野古現行案はもとより、嘉手納統合案、勝連海上沖埋め立て案などあらゆる県内移設に、県民とともに反対の意志を貫いてきた。そのうえで「国外・県外」移設による閉鎖・返還を実現すべく全力を尽くしている。
私たちの強固な政治姿勢は、これからも決して揺るがない。ここに、再浮上した「嘉手納統合案」、急浮上した「国頭村安波案」に強い反対の意思を表明する。
2011年5月22日
衆議院議員
照屋寛徳
参議院議員
山内徳信
社民党沖縄県連合委員長
新里米吉