2011年3月30日
内閣総理大臣 菅 直人 様
社会民主党党首 福島みずほ
福島第一原子力発電所の事故被害は日々拡大を続け、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と並ぶ史上最悪の事故となる可能性も指摘されています。周辺住民をはじめ多くの国民の生命が危険にさらされ、世界各国の人々にも不安を与えています。東京電力や原子力安全・保安院、原子力安全委員会、政府対策本部の、後手に回る対応や事故情報の開示不足が、人々の落胆と不信感を招いています。
事故の鎮圧に向け24時間体制で取り組む現場の努力に敬意を払いつつ、社民党も事故の一日も早い収束に向け、政府に対し可能な限りの協力をお約束いたします。
その上で、こうした事態をうけ、社民党は、今こそ原子力安全規制を抜本的に強化し、原子力依存からの脱却と自然エネルギー推進へと政策転換を行う時であると確信します。社民党はこれまで、一貫して脱原発政策と、原子力発電所等の安全性確保を主張してきた立場から、以下、提案いたします。
@ 人々の不安・不信を払拭すべく、事故情報の徹底開示を行い、我が国と世界の総力を動員して事故の早期収束に全力を尽くすこと。
A 食品、水道水等の規制値や緊急作業員及び一般公衆の被曝限度をこれ以上は緩和せず、被曝のリスクの説明を改善するとともに、被害の最小化に全力を尽くすこと。
B 予防的な視点に立ち、国民および周辺諸国民の生命・財産に対する被害を最小限に抑えることを、最優先の政策目的に据えること。
@ 福島第一原子力発電所の廃炉を速やかに決定すること。
A 中部電力・浜岡原子力発電所をはじめ地震や津波被害の危険性が極めて高い原子力施設を、廃炉を視野に即時停止すること。
B 老朽化が指摘される原子力施設は、延命させずに当初の設計寿命もって廃炉にすること。
C 今回の事故の経験をふまえ原子力安全指針・基準を抜本的に強化したうえ、独立性の高い安全規制機関による徹底した安全点検と安全対策を講じること。同時に、国民参加の論議の枠組みを作り、国民の合意が形成されるまで、すべての原子力施設を停止すること。
D 核燃料サイクル技術が確立しない中で、事故の相次ぐ高速増殖炉もんじゅや、六ヶ所村核燃料再処理施設を停止すること。プルサーマル計画も即時撤回すること。
E 中国電力・上関原子力発電所をはじめ新規の建設・増設計画をすべて凍結すること。
F 原子力施設・技術の海外展開計画をすべて凍結すること。
@ 事故の事後処理については、経産省・資源エネルギー庁任せにせず、政治主導で行うこと。
A 事後の福島第一原発事故の徹底検証のために、情報保全を確実にするとともに、経済産業省原子力安全・保安院、原子力安全委員会、東京電力から独立した検証委員会を、事故収束後速やかに設置すること。
@ 原子力安全・保安院を経済産業省から切り離し、原子力安全委員会と統合して独立性の高い安全規制機関に改組(日本版NRCの設立)すること。
A 現在の委員とその選任過程を徹底的に見直すこと。
@ 原子力に頼らないエネルギー政策への抜本転換の検討を開始し、とりわけ自然エネルギーの大胆な促進をはかること。
A エネルギー政策について、経産省・資源エネルギー庁任せにせず、政治主導で政策転換を図ること。
B 東西周波数変換装置の容量拡大、既存電力会社の地域独占の廃止、発送配電分離、総括原価方式の見直し、自然エネルギー電力の系統優先接続等、電力供給体制の完全自由化を図ること。
C 自然エネルギー政策を経産省主導から政治主導に転換し、環境税、排出量取引制度、自然エネルギー電力の固定価格買取制度を早急に導入すること。
D 風力発電や太陽光発電、太陽熱・地熱利用、バイオマス利用の推進や燃料電池などの新技術開発等を促進するとともに、そのための大胆な投資と適切な政策目標の設定をはかること。
以上