2012年2月29日
社会民主党幹事長 重野 安正
1.自公提出法案をベースに、民主・自民・公明の三党政調会長合意に基づき新たに共同提案した、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律案」が社民党などの反対にもかかわらず、本日の参議院本会議で成立した。今回の三党提出の法案は、人事院勧告の深掘り、議員提案と国の使用者責任との関係などの点で、これまでの給与決定原則を根幹から変えるものである。本来、参考人質疑なども含め十分な審議を行うべき法案であり、衆参の総務委員会で、提案、質疑、採決をわずかの時間で行うなどの乱暴極まりない運営に強く抗議する。
2.今回の法案提出に至る過程は、すべて民自公三党による密室協議であり、国会審議を甚だしく軽視したものである。給与減額の理由も、復興財源のためなのか、総人件費2割カットのためなのか、消費税増税の地ならしのためなのか、法案の作成過程と合わせてあまりに不明瞭、不可解である。しかも民自公との間では「労使協議の先取り」すら行われていない。こうした党利党略に基づく談合政治の極みを認めることはできない。
3.公務員は労働基本権を制約されており、その代償措置として人事院勧告が存在する。その人勧を大幅に上回る給与削減は、江利川人事院総裁も指摘しているように、憲法違反のそしりを免れない。労働基本権の回復、自律的労使関係の確立がないままに人勧を実質的に無視し深掘りすることは、順序が全く逆の、暴挙と言わざるを得ない。
4.人勧による0.23%引き下げについても、1年さかのぼっての清算が行われることは不利益・不遡及の原則に照らして大いに問題である。現給保障の廃止についても、自ら2006年の給与構造改革で配分構造を変えて現給保障を制度化したにもかかわらず、労働側の強い反対を押し切り、廃止に対する合理的説明も見られないまま勧告に至ったものであり、きわめて遺憾である。公務員給与の大幅な引き下げが、今後、中小・地場の賃金相場に波及することが十分に予想され、景気に明らかな悪影響を与えることも懸念される。
5.自衛隊だけを特別扱いしているのも大いに問題である。国・地方の公務員は職種を問わず、震災からの復旧・復興に不眠不休で取り組んでいるにもかかわらず、自衛隊のみ優遇する経過措置は、公平性の観点からも重大な疑義がある。
6.焦点のひとつとなった地方への波及については、自民・公明から修正案が出されたが、この間の労使の話し合いの経緯を無視したもので容認できない。また、連合・公務労協へ顔を立てるためか、「当初案には、地方公務員給与に関する規定を置かないものとする」との覚書を密室で交わし後で自公修正案には賛成するといった民主党の対応も許されるものではない。地方公務員給与について国が事実上の圧力をかけようとするものであり、古い中央集権的な考え方は到底容認できない。地方公務員の給与については、総務大臣が政府を代表して、財政上の措置を含め国家公務員給与引き下げの影響を遮断するとした回答を踏まえて対応するとともに、各自治体の労使交渉を尊重すべきである。
7.身を削るというレトリックばかり先行させ、公務員たたきの風潮に乗るばかりで、行政がどうあるべきかという理念や行政サービスの質をめぐる議論は、全くもって不在である。無駄の削減は当然であるが、何でも削ればいいというものではなく、良質な公共サービスの確立の視点を重視すべきである。
8.社民党は、公務員制度改革関連四法案の今国会における成立と、消防職員の団結権付与も含めた地方公務員の労働関係に関する法律案等の早期国会提出と成立を求めてさらに一層奮闘する。そして1948年以来制約され続けてきた積年の課題である、民主的で透明な公務員制度の確立、公務員の労働基本権回復に全力を尽くす決意である。
以上