2012年3月8日
社会民主党幹事長
重野安正
1.本日、2012年度予算案が衆議院を通過した。大震災後はじめての本格予算編成となった2012年度政府予算案は、震災と原発事故からの復旧・復興、脱原発社会への転換、デフレからの脱却、格差是正や社会保障を含めた社会のあり方が問われたにも関わらず、「日本再生」を目指すとした野田総理が「不退転の決意」で臨むとしたのは消費増税だけである。そこには、日本社会が直面する危機にしなやかに対応できる社会をどうつくるのかというメッセージがない。リスクを放置したままで過去最大規模の予算をつくっても、国民生活や地域経済は疲弊し、雇用不安の増大、社会保障・教育のセーフティーネットのほころびを広げるばかりであり、「日本再生」は果たせないことから、社民党は2012年度政府予算案に反対した。
2.政府案は、年金交付国債という奇策で年金財源を人質にして、消費税増税に道筋を付けるものとなっている。一方で、税収の調達力の回復・向上のために行なうべき所得税、法人税、資産課税に対する不公平税制の是正の観点は見られない。また、「人からコンクリートへ」逆流したかのように、八ッ場ダムの本体建設再開をはじめとする大型公共事業の再開ラッシュとなり、官民連携による海外プロジェクトの推進、農林漁業の競争力強化等、財界の求める新成長戦略に応えるものとなっている。さらに、辺野古関係予算が22億円増となり未だに辺野古移設に固執していること、防衛関係費も「動的防衛力」の構築を目指すものとなり実質増へ転じている点も大いに問題である。
3.また、今回の政府案は、格差是正効果を生み、消費需要増にも寄与している子ども手当の変質、高校無償化や戸別所得補償の見直しなど、民主党が政権交代で約束したマニフェストから大きくかけ離れている。これは国民に対する裏切りであり、社民党は、貧困対策や格差是正策、福祉関係予算、雇用対策、中小企業支援策、住宅対策について、規模・内容ともに十分な措置を講じることを強く主張してきた。
4.3・11東日本大震災の惨劇からからまもなく1年を迎える。今何よりも、東日本大震災からの復興、被災者や避難者の生活再建、雇用確保・安定が決定的に重要である。しかし、復興庁は「査定庁」と揶揄され、東日本大震災復興交付金は、触れ込みとは異なりきわめて使い勝手が悪く、また、原子力災害には事実上適用されないという欠陥もあり、自治体側から不満の声が聞こえている。復興関係予算の多くがハード分野に傾斜し、被災者や避難者の生活・雇用に着目した支援措置が少ないという問題もある。潤うのが、公共事業や特区・規制緩和で復興需要をつかむ企業ばかり、となってはならない。さらに、被災地域広報施設復旧対策事業交付金をはじめ、原子力関係予算の大胆な見直しにもほど遠く、再生可能エネルギー促進予算は甚だ不十分で、脱原発社会を志向するものとなっていない。
5.政府・民主党は今一度「国民生活が第一」の原点に立ち返り、国民の心に寄り添った「日本再生」をめざすべきである。今後、審議の舞台は参議院に移るが、社民党は、大震災からの復興と原発事故収束、国民の生活再建の観点から政府案の問題点を追及し、だれもが切り捨てられない「人間の復興」「日本の再生」を実現していく。
以上