2012年3月8日

労働者派遣法改正案の衆議院通過に当たって(談話)

社会民主党幹事長
重野安正

 

1.本日の衆議院本会議で労働者派遣法改正案(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案)が、民自公3党による修正が行われた上、可決された。社民党は政府原案に賛成し、修正案(民主・自民・公明)に反対した。社民党は、労働者派遣法の抜本見直しについて、3党連立政権においても、また連立政権離脱後も、最重要課題の一つとして位置づけて取り組んできたが、今回の結果は、きわめて不本意であり、残念である。

2.2008年秋、リーマン・ショックを引き金に、製造業などで、大量の派遣労働者や請負労働者など非正規労働者の雇い止めが起きた。失業と同時に住居も失わざるを得ないという深刻な問題は、「年越し派遣村」という形で社会に提起された。そして、2009年の政権交代は、野方図に拡大する雇用の劣化を食い止め、貧困や格差社会から脱却し、人間らしい生き方を実現させたいという国民の期待の高まりによって実現した。そして、民主党、社民党、国民新党は、「連立政権樹立に当たっての政策合意」に、「雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―」をしっかりと位置づけ、派遣労働者保護の立場から、派遣事業に対する規制強化とともに、「登録型派遣の原則禁止」、「製造業務派遣の原則禁止」を明記した政府案を作成し、国会に提出した。政府案は、派遣労働の規制強化を通じて、より安定的な働き方の実現を目指すためのものであり、なお不十分な点があったものの、それでも働く労働者をはじめ多くの国民に支持されたのは、野放図に拡大する雇用の劣化を食い止め、人間らしい働き方を実現することができる、という期待からであった。

3.しかし、民主、自民、公明党によって提案された修正案は、登録型派遣と製造業務派遣の原則禁止を削除すること、日雇い派遣の原則禁止を一部の例外を除き原則容認すること、みなし雇用制度の法施行を三年後に先送りすること等、政府案を骨抜きにする内容となってしまった。まさに、現在の不安定な雇用の現状を追認することになりかねず、社会保険もなく雇用も不安定な非正規労働者が増加しているという現状を、さらに悪化させる以外のなにものでもない。「「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。」としていた政策合意を踏みにじり、政権交代に託された国民の期待を裏切る内容であり、容認できるものではない。

4.しかも政府案は、2年前に国会へ提出され、国民に示されたものであるのにもかかわらず、長期間たなざらしにされてきた。その上、昨年秋の臨時国会の会期末に、民主・自民・公明の3党によって修正案が突然提出され、わずか3時間半という審議で採決された経過がある。修正案の決議は継続できないため、本日、再議決が行われ本会議に上程されたが、大幅な修正を行うのなら、当然きちんとした審議時間を確保すべきであり、いきなり委員会で採決されたのは、議会制民主主義を無視した暴挙と言わざるを得ない。

5.規制強化の法改正が延びるにつれて、鳴りを潜めていた製造業派遣の求人が再び急増してきた。東日本大震災で真っ先に解雇されたのは、派遣労働者を含む多くの非正規労働者である。さらに、国内の景気はなお低迷し、世界経済も欧州債務危機で、先行きは見えない状態にある。加えて東日本大震災と福島第1原発事故で、被災地は農業、水産業など主力の産業が打撃を受け、未だ再建されていない。経済・産業の再建とともに安定した雇用の確保が今ほど問われている時はない。復興が進む中で求職者は増加しているが、求人の大半は非正規雇用で、正社員でも低賃金というのが実態である。だからこそ、雇用や生活の安定を保障するにふさわしい労働者派遣法の改正を行うべきであった。キーワードは「働き方を変える」ことであり、働き方の質を向上させることが、日本社会の再生、東日本大震災からの復興への一歩である。社民党は、働く仲間の皆さんとの連帯を深め、労働法制の規制緩和の流れを変えていくよう、今後とも、あきらめずに粘り強く、奮闘していく。

以上