2012年8月10日

大都市地域における特別区の設置に関する法律案の衆議院通過について(談話)

社会民主党幹事長 重野安正

1.本日の衆議院本会議で、7党会派が共同提案した「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」が可決された。橋下大阪市長が提唱している「大阪都」構想を進めるための法案であり、以下のような問題点があることから、社民党は反対した。

2.「大阪都」構想では、大阪市の基礎的な仕事が住民に近くなる分権的な面ばかり強調されているが、政令指定都市である大阪市が廃止され、産業政策や大規模なインフラ整備などの権限と財源を府が召し上げるという、市の自治権を府が奪う集権化の面を見落としてはならない。「大阪都」構想は、成長戦略を進め、都市間競争に勝ち抜く街に育てるという、効率化・競争力強化のための再編であり、住民の暮らしや自治を豊かにするためのものであるかは疑問である。

3.本法案は、現在「憲法上の地方公共団体」である市を廃止し、権限及び財源の制限された「憲法上の地方公共団体でない」特別地方公共団体たる「特別区」に分割するものである。しかし現行憲法下で市町村自体を廃止したことはなく、憲法によって保障された自治体の自治権を、その実体を無視して奪うことは、憲法92条の保障する「地方自治の本旨」に反するものと言わざるを得ない。

4.行政区を公選の区長・議会を有する組織体に変えることについては評価できるが、特別区の権限・財源は限られており、住民の自治権としては後退する。また、東京市と東京府が統合され東京都が誕生した経緯や、東京23区が都の内部団体からの脱却と基礎自治体化を求めてきた歩みを考えれば、今回の制度改正は、分権・自治の流れに逆行するものである。

5.具体的な事務配分、特別区の区割り、行政組織や議会のあり方、移行手続等、多くの課題が山積しており、「ムード」先行ではなく、デメリットについても丁寧で真剣な論議が求められる。そのうえで「大阪都」構想を実現したいのであれば、憲法95条に基づく特別の住民投票として、府全域での住民投票をすべきである。

6.「府市あわせ(不幸せ)」な関係と言われているが、大阪市はアジアで住みやすい都市1位にも選ばれている。府と市が協力すれば、二重行政はある程度解消できるし、大学や図書館等を府と市がやることは、「二重行政」ではなく、住民のニーズに応えた多様性にほかならない。橋下市長はじめ特定の勢力におもねるような法制定は問題がある。社民党は、参議院の審議において、「大阪都」構想及び本法案の問題点を厳しくただす決意である。

 

以上