2013年3月15日

TPP交渉参加表明に強く抗議し撤回を求める(談話)

社会民主党幹事長
                                 又市 征治

1.本日、安倍首相は日本のTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を正式に表明した。社民党は、TPPが国民生活に甚大な悪影響を与えることから強く抗議し、即刻撤回を求める。

2.TPP推進派は、「ルール作りからの参加」や「国益に反する時は離脱」を主張してきたが、すでに合意済みの内容について、再交渉は要求できない、交渉打ち切りの権利は当初からの9ヵ国に限られることなどが明らかになっている。米国も、日本が交渉に参加した場合、再交渉も文言修正も新提案もさせないと表明していたことも判明した。推進派の論理はすでに破たんしている。
 こうした重要な事実は、これまで国会にも国民にも明らかにされてこなかったが、日本政府は昨年6月には把握し、安倍首相も政権移行直後に報告を受けていたとされる。国会軽視も甚だしく、国民に対する重大な背信行為にほかならない。後発の参加国にとってTPPは完全な不平等条約であり、対等な交渉権や拒否権を手放してまで日本がTPPに参加する理由は全くない。

3.2月の日米首脳会談における共同声明は、関税撤廃の例外品目確保を何ら保証するものではない。むしろ、コメなど重要品目も含めて、全てを交渉のテーブルに乗せ、関税自主権を奪われる最悪の事態すら想定される。
 これまでのEPA・FTAにおける、例外品目は農林水産品だけで834品目あり、これらを守ることは絶対条件のはずである。今回の玉虫色の日米合意は何の担保にもならず、これで交渉参加に踏み切るのは、全ての国内農業者を切り捨てることに等しい。安倍政権は米輸入車の関税撤廃例外を当面は容認する代わりに、農産物の関税維持を求める戦略とされるが、米側が日本の要求を十分に受け入れる保証はどこにもない。ごくわずかな例外品目を認める程度では到底、日本農業は守れない。

4.TPP参加は、安倍首相が国家の最優先課題として挙げる東日本大震災の被災地の復興にも逆行する。農林水産業は被災地の中核産業の1つであり、TPP参加が与える影響は深刻である。震災から2年を経ても農地復旧の遅れなど課題山積の中で、懸命に復興に向けて歯を食いしばる被災農業者・漁業者に冷水を浴びせることは許されない。

5.自民党は、関税項目以外でも、食の安全・安心の基準確保や国民皆保険制度の維持、ISD(投資家対国家訴訟)条項には合意しないことなどを選挙公約としてきた。安倍首相が今になって、これらの取り扱いについて「公約ではなく目指すべき政策」(2月28日・衆院予算委)と述べたのは、まったくの詭弁である。
 公的医療保険と食品安全について安倍首相は、TPP交渉の対象外であり、国民皆保険制度を「揺るがすことは絶対にない」(3月6日・参院本会議)と強弁しているが、後発国には対等な交渉権や拒否権も与えられない中、これらが交渉案件とならない保証はまったくない。
 毒素条項と言われるISD条項についても、外国企業に訴えられ国の主権が侵害される恐れが極めて強く、対米FTAで同条項を導入した韓国でも、米投資会社によって政府が訴えられる事態が起こり、同条項の廃止を求める声が高まっている。
 参加表明するのであれば、これら選挙公約に掲げてきた項目について、国民が納得できる明確な担保を示すのが筋である。

6.経済界などには、今回の参加表明を歓迎する声があるが、交渉参加国は10月のAPEC首脳会合で基本合意を目指しているとされる。米国には新たな参加国を認める手続きに議会が90日以上かけるルールがあることなどから、日本政府が実際に交渉に加わるのは基本合意直前になる。この差し迫った状況での途中参加で、農産物の重要品目の例外措置など日本の主張が満足に反映される保証など、全くない。

7.この間、交渉参加国の動向や日本が参加した際のデメリットなど、国民がTPP参加の是非を判断するための基本的な情報開示や、国民的議論が行われてこなかった事実を取り上げただけでも、今回の参加表明は断じて認められない。社民党はTPP参加を危惧する広範な団体・個人と一層連携を強め、交渉参加撤回の取り組みに全力を挙げる。同時に、中国や韓国を含めた東アジア諸国を中心に、各国の食料主権や多様な農業基盤などが保障された相互互恵的な経済連携を図る「東アジア共同体」構想を推進していく。

以上