2013年4月16日

2013年度予算の衆議院通過に当たって(談話)

社会民主党政策審議会長
吉田 忠智

1.本日、2012年度補正と一体の「15か月」予算として編成され、いわゆるアベノミクス「3本の矢」を財政的に推し進める、2013年度予算案が衆議院を通過した。社民党は、防衛費や公共事業費、企業支援に手厚い一方、福祉や地方を切り捨てるといった、「安倍カラー」が色濃く出た2013年度予算案に対して、以下のような問題点を有するものとして反対した。また、維新・みんなの共同修正案と民主単独の編成替えを求めるの動議についても、相容れない問題点が残されていることから賛成しなかった。

2.まず防衛関係費は11年ぶりに絶対額が増額となり、自衛官も8年ぶりの増員となっている。自衛隊にオスプレイを導入させるための調査費も盛り込まれている。地元が反対する中で辺野古崎地区・隣接水域で実施している環境現況調査経費(継続)や東村高江のヘリパッド建設関連予算、キャンプ・シュワーブ内の陸上工事に要する経費が計上されている。

3.また、老朽社会インフラ対策などを口実に、国土強靱化を目指して、「人からコンクリートへ」とでもいうべき、大型公共事業ラッシュとなっている。土地改良のための農業農村整備事業の大幅増も違和感がある。

4.何よりも「自助」を名目に、最後の砦である生活保護費に大なたを振っている。また地方公務員の給与削減のために交付税法の趣旨に反して地方交付税を削減したことや、地域自主戦略交付金の廃止と省庁縦割り補助金の復活は、分権・自治に反するものである。全国学力・学習状況調査の悉皆化、「心のノート」の配布、高校授業料無償制予算の削減、奨学金事業の減額、給付型奨学金の見送りも問題である。

5.将来の消費税増税を担保とする年金特例国債の発行など、消費税増税に道筋を付けるとともに、企業支援策の強化、海外プロジェクトや官民ファンドの推進、TPP参加対策等、財界の求める新成長戦略に応える方向性をさらに強めている。

6.復興特会における防衛省関連・独立行政法人日本原子力研究開発機構核融合施設関連予算の計上の一方で、原発避難者への支援策が不十分であり、とりわけ子ども被災者支援法関連予算を計上しないのはおかしい。もんじゅ関連予算や原発輸出関連経費の計上なども脱原発の流れに逆行している。

7.政府案は、表面上の財政健全化を演出してはいるものの、経済危機対応予備費の廃止や公共事業関係、各種基金・交付金などの12年度補正への前倒し、復興需要への振替、年金特例国債の発行、国債費の想定利回りの引き下げ、成長率の高めの見通しによる税収増など、やりくり算段を駆使したものにすぎない。

8.デフレ経済脱却・景気回復策としては、大規模な金融緩和や公共事業の拡大ではなく、国際競争を口実に下げられ続けてきた賃金の引き上げや安定雇用の拡大、消費税増税撤回による個人消費の拡大による内需拡大こそが有効である。これから、論戦の舞台は参議院に移るが、アベノミクスの国民生活にもたらす影響、TPP交渉の実態と影響、生活保護削減の問題点、地方交付税削減問題、沖縄基地問題、雇用の規制緩和、待機児童問題、汚染水事故や再稼働問題をはじめとする原発問題、子ども被災者法関連施策の予算化などについて、安倍政権の危険性、反国民性を徹底的に追及・解明していく。

9.この間、野党6党は実務者協議を行い、予算の共同修正を目指して協議を続けてきたが、維新の会が年金の積み立て方式への移行や消費税の地方税化、後期高齢者医療制度の負担増など、本予算に直接関係ない項目を盛り込むことに固執したことや、民主党が将来の消費税増税を担保とする年金特例公債にこだわったことなどから、まとまることができなかった。政府・与党を追い込むべく、改めて野党が優位性を発揮できる参議院段階での野党共闘を強めることを求めていく。

以上