2013年2月28日

厚生労働大臣
田村 憲久 様

社会民主党
党首 福島みずほ

生活扶助基準の引き下げについて撤回を求める申し入れ

生活扶助基準の引き下げについて撤回を求める申し入れ

 政府は2013年度予算案において、今年の8月から生活扶助基準額を引き下げ、3年間で段階的に約670億円を削ることを決定しました。さらに、期末一時扶助を70億円減らすとともに、新たな生活困窮者支援制度を設けることなどで、年間450億円の削減を見込んでいます。

 生活扶助基準額の引き下げによって、受給額が減少する生活保護世帯は96%にも及び、平均で6.5%の減少となります。特に、子育て世帯の削減幅は、最大で10%と大きく、さらなる子どもの貧困と世代を超えた貧困の連鎖につながりかねません。

 今回の生活扶助基準の見直し方法には大きな問題があります。一つは生活保護世帯の消費実態を低所得者のなかでも最下位の所得階層(第1・十分位)と比較している点です。この層には様々な理由で生活保護基準以下の生活を余儀なくされている世帯が多数含まれています。また、長引く不況や格差が拡大するなかで、低所得者層の生活はさらなる地盤沈下をおこしており、第1・十分位層に合わせれば、生活扶助基準が引き下げられるのは当然です。

 二つめは、物価下落分の反映を理由に削減している点です。その額は、削減額670億円のうち580億円も占めています。近年、耐久消費財の価格は下がっているものの、食費、光熱水費などの価格は下がっておらず、日々の生活への影響は甚大です。そもそも、生活保護制度には物価の変動を反映するルールはなく、「生活保護基準部会報告書」も物価下落分の反映について全く触れていません。物価下落分を引き下げる根拠が不明確です。

 「先に削減ありき」のこうしたやり方は、国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を止めどなく引き下げることにつながり、憲法25条「生存権」を具現化した生活保護制度の機能を大きく損なうことになりかねません。

 また、生活扶助基準は、税制や社会保障制度をはじめ、生活の様々な施策に連動しているため、その影響は低所得者層を中心に国民生活に大きな混乱、大きな負担増を強いることが懸念されます。

 よって、社民党は以下の点について申し入れます。

1,生活扶助基準の引き下げを撤回すること。
  最低生活費の算定に当たっては、社会保障審議会「生活保護基準部会」委員が独自に行った調査研究、ならびに2010年「ナショナルミニマム研究会中間報告」を参考として、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する額にすること。

2,新たな生活困窮者支援制度を構築するにあたっては、社会的包摂の考え方を基盤とし、真に当事者の就労・自立支援、生活の安定に資するものとすること。

3,最低賃金の引き上げ、雇用のルールを強化し、ワーキングプアをなくすこと。ひとり親家庭の父母に対する就労支援を強化すること。

4,子どもの貧困問題、貧困の連鎖をどう断ち切るかとの観点から生活保護制度の在り方を検討すること。

5,年金制度の最低保障機能を高め、高齢者、障がい者の貧困の問題に抜本的な取り組みを行うこと。

以上