5月24日、福島みずほ党首と社民党自治体議員団全国会議は、「従軍『慰安婦』必要発言」と「在日米兵への風俗業活用促進発言」に抗議し、謝罪と発言の撤回、公職の辞任を求める申し入れ書を、党関係者624名および8団体の賛同名簿を添えて、橋下徹日本維新の会共同代表・大阪市長に提出しました。


2013年5月24日

日本維新の会共同代表・大阪市長
橋下 徹 様

社会民主党  党首 福島みずほ
社会民主党自治体議員団全国会議
議長 佐藤征治郎

「従軍『慰安婦』必要発言」と「在日米兵への風俗業活用促進発言」
に抗議し、謝罪と発言の撤回、公職の辞任を求めます

 5月13日、橋下徹日本維新の会共同代表・大阪市長は記者会見で、旧日本軍「慰安婦」問題について「慰安婦制度は必要だった」と発言しました。また、普天間飛行場視察の際に在沖米軍司令官に対して、「海兵隊員の性的エネルギーをコントロールするために風俗業の活用を促した」とも発言したことを明らかにしました。その後も、橋下氏は抗議の声に対して、「貧困から風俗で働かざるを得ないという女性はほぼ皆無。皆自由意志だ。だから積極活用すればいい」とツイッターに反論を書き込むなど、独断と偏見、女性蔑視に満ちた驚くべき見解を繰り返し表明しています。

 公人である橋下氏が人権意識のかけらもない暴言を続けていることに、私たちは怒りで体が打ち震える思いです。ここに満身の憤りをもって抗議します。

 旧日本軍が、従軍「慰安婦」制度によって、アジアなどの多数の女性に対して組織的かつ継続的に暴力を行い、女性の名誉と尊厳を深く傷つける人権侵害を行ったことは歴史の真実です。勇気を振り絞り、命をかけて名乗り出た元「慰安婦」の方々の証言などがそれを明白にし、河野内閣官房長官談話(1993年8月4日)が出されました。この談話を真っ向から否定し、従軍「慰安婦」制度、ひいては戦争や軍を正当化し、歴史認識をも後退させようとする橋下氏の発言を私たちは断じて許すことができません。

 旧日本軍の従軍「慰安婦」制度が、sexual slavery(性的奴隷制度)と英訳されているように、国際社会は、日本政府に対して歪んだ認識を廃し、被害を受けた女性たちの正義を実現するよう求めています。

 橋下氏が故意に歴史の真実を歪曲し、差別的な発言を軽佻浮薄に繰り返すことは、今も心身の傷に苦しんでいる被害者を再び蹂躙するものです。また、元「慰安婦」の方々の証言の信憑性に対して、高圧的に疑問を呈することは、性差別、民族差別であり、被害者を押さえつける暴力に他なりません。

 風俗業によって、在日米軍基地に駐留する米兵隊の性犯罪が抑制できるかのような発言は、本末転倒も甚だしく根本的に間違っています。問題の本質は、軍隊そのものが構造的な暴力装置であり性暴力を生み出していること、軍隊や男性が女性を性的対象物、モノとして扱うことを当然としていることにあるのです。そして橋下氏自身がこれらを肯定していることが誤りなのです。

 いまも、沖縄は押し付けられた米軍基地による日常的な暴力のなかにあります。橋下氏の発言は、平和と安全な暮らしを求め、米軍基地の撤去を求める沖縄の人びとを踏みにじるものです。

 また、「風俗で働く女性は自由意志」という反論は、自らの、また「買う」男や利益を得る業者らの差別性を棚に上げて、女性や心ある男性の間に分断を持ち込もうとする卑劣なやり方です。

 橋下氏は、在沖米軍司令官が「凍り付いたように苦笑いになって」、話を打ち切ったと臆面もなく公表しました。在沖米軍司令官がそのような態度を取ったのは、公人が人権を侵害する発言をすれば、社会的な制裁を受け、公的な地位を追われるのが国際社会の常識だからでしょう。

 公人である橋下氏は、差別的な表現行為を防止する対策を取るべき立場にあります。ところが、その地位を逆に利用して、「本音」を盾に自ら先頭に立って差別発言を行っていることは、言語道断です。

 社民党は、今回の橋下氏に対し強く抗議するとともに、以下の通り、謝罪と発言の撤回、公職の辞任を求めます。

1,旧日本軍従軍「慰安婦」被害者および沖縄をはじめ在日米軍による基地被害者の尊厳を再び傷つけたことについて謝罪し、一連の発言を撤回すること。

2,公人としての資質を欠く発言を繰り返したことについて猛省し、公職を辞任すること。

以上