1999年7月8日

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の成立に当たって(談話)

社会民主党幹事長
渕上 貞雄

1.本日、内閣提出による「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案」が可決・成立した。本法律の主たる内容は、住民から選ばれた自治体の長を国の下部機関として仕事を行わせる機関委任事務制度を廃止するとともに、自治体に対する中央政府の新たな関与ルールの確立、国地方係争処理委員会の設置等からなっている。これによって上下・主従の関係にあった中央・地方の政府間関係は対等・協力の関係に転換するわけでこの点では戦前・戦後の地方制度の根幹を大きく転換するものといえる。

2.一方で、本法律は、様々な問題点を含んでいることも事実である。とくに新保守主義的構造改革の一環として地方分権が進められたため、住民自治制度の改革が二の次とされていることである。これは、「国あっての地方」という「上からの分権」の限界を示すものといえる。

3.自治事務に対する国の関与(自治法245条の5及び港湾法47条などの個別法による自治事務に対する是正の要求と是正改善義務、建築基準法17条などの個別法による自治事務に対する指示・代執行)、都道府県の市町村に対する関与、法定受託事務の定義変更、自治体議会の定数上限制、住民投票制度に対する消極的態度、不十分な地方税財源の充実強化、中央政府に主導的色彩の濃い市町村合併特例法の改正、駐留軍用地特別措置法「改正」、産業廃棄物行政、地方事務官の国一元化、建築基準法等の個別法の改正はこうした地方自治の限界を示す証左である。したがってわが党は、これらの点については反対であり、今後も粘り強く制度改革を要求していく。

4.地方分権は今、はじまりのはじまりとしてその第一歩を記したにすぎない。引き続き税財政面での分権をはじめ、さらなる権限委譲、住民自治の充実といった諸課題を推進するとともに、市民や自治体の側からの新たな地方分権推進・地方自治確立の運動を広げていくことが重要である。社会民主党は、地方分権白書の作成、地方自治基本法の制定、第二次地方分権推進委員会の設置などを提案してきたが、憲法の地方自治の本旨の実現に向け、今後とも地域の自己決定権の確立・住民自治の発展という地方分権に対する市民の期待に応える不断の取り組みに全力を挙げる決意である。