党環境部会・産廃等対策協議会・国民生活部会合同会議
第一.目的
この法律は、ダイオキシン類が人の生命や健康及び生態系に重大な影響を与えるおそれがあり、排出を極カ抑制していくべき状況にかんがみ、汚染への緊急措置を講じるとともに、環境基準・排出基準を設定し、これを達成するために必要な規制、措置を定めることにより、現在および将来の国民の健康の保護を図ることを目指す。
第二.定義
一.「ダイオキシン類」とは次に掲げるもの等をいう。
(1)ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)
(2)ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
(3)コプラナーボリ塩化ビフェニル(Co一PCB)
(4)その他、科学的知見によりダイオキシン類と認められたもの
二.「特定施設」とは、廃棄物焼却炉、廃棄物最終処分場、鉄鋼の用に供する電気炉、RDF(ごみ固形燃料)製造施設、RPF(プラスチック固形燃料)製造施設、固形燃料燃焼施設、リサイクル施設、紙・紙パルプ製造施設その他の施設であって、ダイオキシン類を発生し及び大気中に排出し、汚水着しくは廃液を排出する施設で政令で定めるものをいう。
三.この法律において「排出ガス」とは、特定施設から大気中に排出される排出物をいうものとする。
四.この法律において「排出水」とは特定施設を設置する工場又は事業場(以下「特定事業場」という)から公共用水域に排出される水をいうものとする。
第三.国及び地方公共団体の施策
特定施設以外の農薬散布、農薬埋設地、不法投棄現場等のダイオキシン汚染の対策と管理を実施する。
第四.TDI(一日耐容摂取量)の設定
内分泌攪乱作用と胎児や乳幼児などの感受性を考慮にいれて一日耐容摂取量(TDI)を設定する。現段階は1pg/kg。
第五.環境基準の設定
大気、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む)及び土壌汚染に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康に係る障害及び生態系への影響が生じることを防止するため維持されることが望ましい環境基準を定める。
第六.ダイオキシンの濃度基準の設定
(1)魚介類、肉類、乳・乳製品や農作物などの食品についてTDIに基づいた基準を設定し、食品のダイオキシン汚染低減のための措置を講ずる。
(2)母乳のダイオキシン濃度についても調査を行ない指針値を設け、母乳のダイオキシン汚染低減のための措置を講ずる。
第七.労働者の安全対策
ダイオキシン類を労働安全衛生法の特定化学物質として指定し、必要な措置を講じて労働者のダイオキシン暴露防止に努める。
第八.排出ガス及び排出水に関する排出基準の設定
(1)焼却灰、飛灰は、厚生省令で特別管理廃棄物に指定しダイオキシン濃度の基準を設ける。
(2)地域を区切り排出ガス及び排出水の地域ごとの総量規制を行ない、上乗せ規定で施設ごとに総量規制を行う。
第九.生産者等に対する実害や風評被害に対する補償
第十.緊急対策優先地域
一.都道府県知事は緊急対策優先地域を指定し、ダイオキシン削減計画を定めることができる。削減計画を定めようとする時は、関係市町村長、対策優先地域の住民の意見を聴かなければならない。削減計画を定めようとするときは、内閣総理大臣の同意を得なければならない。
二.「緊急対策優先地域」の指定にあたっては、以下の状況を考慮に入れる
(1)大気、土壌、水質、生産物などのダイオキシン類濃度。
(2)現在のダイオキシンの総排出量と現在に至るまでの蓄積量及びこれからの総発生量予測。
(3)地域住民の健康状態や人体汚染。
(4)住民の申し出など。
三.「緊急措置」
・住民及び労働者の健康被害調査
・血液、母乳などのダイオキシン調査(市町村及び県)
・大気、水、土壌、食品のダイオキシン調査(市町村及び県)
・住民に対する避難勧告と住民希望による土地買い上げ、代替地の提供
・ダイオキシン汚染の除去・無害化〔公害防止事業費事業者負担法)
・ダイオキシン被害の相談、救済
・健康被害の補償(公害健康被害の補償等に関する法律)
・土地の使用制限と損失補償
・ダイオキシン発生源への立ち入り調査、抜き打ち調査
・ダイオキシン発生源へ規制の強化、改善命令、停止命令
・ダイオキシン発生施設の立地規制
緊急対策に係る情報は個人のプライバシーを損なわない範囲で生データを速やかに公表する。汚染の除去、補償などの費用負担は原則汚染者責任(公害の防止に関する事業に係る財政上の特別措置に関する法律)とする。風評被害に対する補償制度も整備する。
第十一.廃棄物の最終処分場の維持管理
廃棄物の最終処分場には、焼却灰・飛灰をはじめ排出基準に適合した廃棄物のみを持ち込むこととし、処分場内の土壌基準や浸出水に排出基準を設け、大気、公共用水域及び地下水並びに土壌等に汚染が拡散することがないよう、総理府令、厚生省令で定める基準に従い維持管理に努めなけれぱならない。
第十二.常時監視
一.都道府県知事は国や市町村と協議して、当該都道府県の区域に係る大気、水質(底質を含む。以下同じ)及び土壌のダイオキシン類による汚染の状況を常時監視しなければならない。
二.設置者による測定特定施設設置者は毎年一回以上で政令で定める回数、政令に定めるところにより、排出ガス、焼却灰・飛灰、排出水のダイオキシン測定を行なわなければならないものとする。また、測定にあたっては住民などの立ち会いを認めることとし、測定結果は公開するとともに都道府県に報告しなければならない。
第十三.ダイオキシン類の排出の削減のための国の計画
一.内閣総理大臣は我が国における事業活動に伴い排出されるダイオキシンの量を限りなくゼロにするための削減計画を作成する。
二.一の計画においては次の事項を定めるものとすること。
(1)ダイオキシン類の産業分野別、排出ガス、施設から排出される焼却灰・飛灰、排出水における推定排出総量に関する削減目標量
(2)(1)の削減目標量を達成するため事業者が講ずべき措置に関する事項
(3)廃棄物の発生抑制、リサイクルの促進、ダイオキシン類の発生の原因となる廃棄物焼却の抑制、塩化ビニルなどを焼却しないこととするなど、国や地方自治体が講ずべき施策に関する事項。
第十四.国の援助
国は市町村、都道府県が行なうダイオキシン汚染対策の緊急措置や「特定施設」におけるダイオキシン対策に対して、必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。
第十五.研究等の推進
国は、ダイオキシン類の処理に関する技術の研究、ダイオキシン類の人の健康に及ぼす影響の研究その他ダイオキシン類による環境の汚染に関する研究を推進し成果の普及に努める。
検討
一.政府は臭素系ダイオキシンについても、ダイオキシン類と同様に調査を行ない、人の健康に対する影響の程度、その発生過程等に関する研究を推進し、その結果に基づき、必要な措置を講じるものとする。
二.ダイオキシン類に関する規制については、本法の目的を踏まえつつ、調査・研究の結果に基づいて必要な見直し等の措置を講ずるものとする。
廃棄物処理法は97年政省令の改正により施行令と施行規則でダイオキシン対策が講じられたところだが、「基準が甘い」「恒久対策まで5年もかかる」「スソ切りの問題」など、種々の問題点を抱えている。規制の強化とともに廃棄物の減量、焼却の抑制、塩化ビニルなどを燃やさないなど根本的な改正が必要である。
1.施設
・排ガス、排水を排出するすべての施設(廃棄物処理法の眼界)
・200kg/時間未満の小型焼却炉についても構造基準を設ける
2.規制強化
・恒久対策値の前倒し。濃度規制の強化
・排水、土壌、施設から排出されるばいじん、燃えがらの基準の設定
・施設ごとの排水、土壌、施設から排出されるばいじん、燃えがらの総量規制
・地域ごとの総量規制
・燃えがらも特別管理廃棄物に指定しダイオキシンの濃度基準を設ける。
・総量規制(排ガス、排水の指定地域の総量規制を行ない上乗せ規定を設け施設ごとの総量規制を行なう。
・直罰規定の実施(濃度を上回った場合の)
・高濃度汚染地区や水源地など汚染拡散の可能性がある地域への立地規制
・最終処分場の浸出水と土壌のダイオキシンの基準の設定
3.施策
・野焼き業者に直罰規定
・塩ビの適正処理困難物指定
・燃やすものを制限してダイオキシンの発生を抑える
・廃棄物の発生抑制、焼却の抑制およびダイオキシンの削減計画の立案