1999/4/1

参議院外交・防衛委員会での田英夫議員の質問

○田委員 最初に確認で、揚げ足取りのようですけれども、防衛庁長官の先ほどの御報告の中で、護衛艦「みょうこう」が五インチ砲による警告射撃を十三回一発、続いて百五十キロ爆弾四発と書いてありますが、これは護衛艦がやったんじゃなくてP3Cがやったんだと思います。もう一つ次の部分でもありますけれども。これはP3Cとした方がいいんじゃないですか。

○柳澤政府委員 おっしゃるとおり、P3Cから対潜爆弾を警告のために落としたということであります。

○田委員 公式の御報告ですから、こういう誤解を招く、P3Cから爆撃したということは私から見ると重要な、重大なことなんですね。P3Cという対潜哨戒機、専守防衛のものだと防衛庁が繰り返して言ってこられたその飛行機から、確かに不審船が警告を無視して走っていたから威嚇射撃ということはあり得るわけですが、威嚇爆撃を飛行機からしたということは私は重大に受けとめておりますので、確認をいたしました。一つお聞きしたいのは、先ほどからの御報告や御答弁の中に出てこないんですが、この不審船のうちの一隻が途中で停止したという事態があったと報道はしておりますし、事実だろうと思いますが、それはどっちの船なのか。大西丸なのか大和丸なのか。そして、その時間は何時何分なのか。

○柳澤政府委員 大西丸の方でございまして、時間は二十三時四十七分あたりであったと思います。

○田委員 報道も、二十三時四十七分、一隻が停止してと書いてありますね。そこまでは海上保安庁がやっている。その停止した段階から切りかわってくる。転機なんですね、そこから。海上保安庁から海上自衛隊に変わっていく。そして、いただいた資料で確認しますと、いわゆる海上警備行動が閣議決定されたのが二十四日午前零時四十五分。午前零時三十分に防衛庁長官から総理大臣に要請があって、それを閣議決定、安保会議という形で決定したのが午前零時四十五分、これでよろしゅうございますか。

○野呂田国務大臣 はい。そのとおりでございます。

○田委員 ということは、二十三時四十七分にその船がとまって、そしてその直後に海上保安庁から海上自衛隊を中心とする海上警備行動に切りかわったというつながりになるんですが、時間的にはそうなりますが、この停止したというのはどういうふうに考えておられるんですか。

○野呂田国務大臣 何時にどの船が停止したかというのは今運用局長から答弁したとおりでありますが、私どもが想像するには、これは二十二分間停止したわけですが、これはガスタービンのトラブルであったのじゃないかと思います。その時点では、実は九時前に運輸大臣の方から私の方に連絡がありまして、この海上警備行動発動の協力要請ではなしに官庁間協力をやっていただきたいと、こういう要請がありまして、私どもは「はるな」という護衛艦を差し向けておりました。そして、とまった船の前方に私どもは護衛艦をとめまして、海上保安庁が到着するのを実は待ったのであります。そのときは官庁間協力ですから私どもは何にもやる権限がなかったわけですから、前方に船をとめて押さえる形で海上保安庁の到着を待ったんですが、到着する以前に二十二分の休止で出てしまった。三十メーターぐらいの船ですから回転が速くてすぐ出ちゃった。こっちは大きいものですから回転に時間がかかったというようなトラブルもあったわけですが、そういう状況であります。

○田委員 いずれにしても、ここで停止しなければそのまま海上保安庁の船は追尾できなくなっていたわけですから、終わっていたかもしれないんですね。過去の例からも、宮崎の例もありましたが、今までは、さっき海上保安庁長官の御答弁で過去に十八回あったというお話がありますが、追尾し威嚇をしたこともありますが、いずれにしても拿捕していない、海上保安庁で終わっている。今回は海上自衛隊に切りかわって、その上に、海上警備行動ですから違うのは当たり前かもしれませんが、爆撃までしていると。そういうことは政府の領海侵犯ということに対する方針が変わったと、こう受け取っていいんですか。

○野呂田国務大臣 念のためにお断りしておきますが、私どもは爆撃したというのではなくて、これはあくまでも相手の船を攻撃したわけではないということだけは絶対に取り違えないでいただきたいと思います。私どもは警告をするために五百ヤードも前方に落としているわけで、そのものを攻撃のために用いたという事実は全くない。そういう爆弾を投下したということであるということを御理解いただきたいんです。なぜ八十二条を動員することになったかというのは、とまった時点で実は海上保安庁の船はあと三時間以上かからなきゃ追いつけないというような状態で、みすみす逃がすことになってしまうということは明白ですから、官邸の方でもそのことを判断して、運輸大臣からも協力要請がありましたから、そこで八十二条の動員に至ったという経過をたどったということであります。

○田委員 いずれにしても、従来の政府の方針と領海侵犯あるいは不審船に対する対応がなぜか今回変わっているというふうに受け取らざるを得ないので、ここのところは一つ宿題にしておきたいんです。それからもう一つ、爆撃にこだわるようですけれども、私も船のことについては若干若いころ旧海軍におりましたから承知しているところがあるんですが、船をとめるのに威嚇射撃という、爆撃を含めて、それだけしか方法がありませんか。今度も実はスクリューを撃とうとしたけれども、それは不測の事態を招くおそれがあるからやめた、しなかったというような報道もありますが、スクリューを撃たなくてもとめられるのじゃないですか。漁綱が巻きついてよく漁船は動けなくなる、これは何かを教えているのじゃないかと思いますが、海上保安庁、海上自衛隊ともにこういう研究をする必要があるのじゃないですか。

○楠木政府委員 あくまで一般論でございますけれども、私どもがふだん、漁船なんかが高速で逃げようとするときに、そういうものにつきまして、例えばブリッジのガラスが全部ペンキで覆われて見えなくなるような球を投げるとか、いろいろな工夫はしておるつもりでございます。

○野呂田国務大臣 せっかくのサジェスチョンですからお答えしなきゃいかぬと思いますが、実は成功しなかったから私たちもそっとしてあるんですが、綱も投げてみたんですが、うまくいきませんでした。

○田委員 私の感覚で言えば領海侵犯、領海侵犯といっても領海を走ってはいけないということはないのでありまして、無害航行権というのは国際法的に認められているわけですから、領海の中を走ったからいけない、全部領海侵犯だということにはならないはずなので、さっきから出ているような船の性格を把握して、それで領海侵犯ということを区別する。これは海上保安庁長官、そのとおりですね。

○楠木政府委員 先ほど別の委員の方から御質問ございましたように、なかなか船の見分け方というのは、漁船のタイプでいきますと難しいと、年間何百件もあるわけでございますので。今、田先生がおっしゃったようなことで我々の方はそれを見分けた上で、無害通航権というのがあるわけですから、それをやりながら対応しているというものでございます。

○田委員 今度の領海を侵した船を公海まで追っていくというのも、これは国連海洋法条約にはっきりそれをやることが許されている条項がありますからこれも違反ではないと思いますが、それはいいですね。

○楠木政府委員 その前にちょっと一言私どもの立場を申し上げますと、国連海洋法条約に基づいてそういう侵犯を追跡するというのはもちろんございますけれども、そもそも日本漁船を標榜しておりますので、漁業法違反というのはずっとかかっていくわけでございます。したがって、私どもの方はそれの違反、立入検査の忌避ということで対応したわけでございます。

○田委員 外務大臣はさっきお答えになっていますけれども、北朝鮮に対する態度、政策は変わっていないと。しかし、国と国といえども人問同士のことですから、今度のようなことがあると影響を受けることは当然だと思いますが、せっかく先日小渕総理が訪韓されて、その中の話でいわゆる包容政策という金大中大統領の政策を支持するということが合意されてきているわけでありますし、また北朝鮮に対して対話をしようという政策を強調しておられた、先日のこの委員会でもそうですが。これは変わりませんか、確認をしておきます。

○高村国務大臣 対話と抑止、その基本的立場は変わっておりません。ただ、おっしゃったように、それぞれ国民感情というものがありますし、いろいろあると思いますが、対話と抑止の、対話という部分の中の対話と交渉、これを引っ込めてしまうと、そういうような考えは毛頭ありません。

○田委員 もう時間がありませんから、意見だけ申し上げます。金大中大統領が小渕総理に言われたという、非常に扱いにくい国ですという言い方は、私は長いつき合いもありますけれども同感のところがあります。しかし、なおさらその扱いにくい国との間にいい対話をしていくという努力が私はこれからますます必要じゃないか、今度のことを契機に対決姿勢に転ずるというようなことにならないようにお願いして、終わります。