○山崎委員長 次に、土井たか子君。
○土井委員 まず最初に、総理に外交姿勢について承りたいのです。
二十一世紀における我が国の外交はどうあるべきか。新世紀の幕あけを間近に控えておりますが、我が国に問われている最重要な課題と私は思います。
第二次世界大戦後の我が国は、平和主義を掲げた日本国憲法のもとで、国連中心主義という外交方針を打ち出しました。そしてまた、専守防衛、非核三原則を基礎としながら、国際社会の安定確保と繁栄のため、武力ではなくて対話による外交を推進してきたはずであります。
国家の外交政策と安全保障政策は不可分の関係にあると思います。それは、国家の安全保障政策を語る上で、総理は抑止と対話とおっしゃるのですが、逆であって、対話と抑止と私は言いたいのです。対話と抑止の必要性が説かれるという点からも、これは明らかだと私は思うのですね。言いかえますと、対話と抑止は車の両輪だと思います。双方の均衡がとれている限りにおいては、さほど問題は起こりません。しかし、近隣諸国が我が国に対して軍拡の疑念を抱いているとすれば、対話と抑止のバランスが抑止に偏りまして、対話すなわち外交が十分に機能しているとは言えない状況になります。
このように考えますと、我が国の安全保障政策の現状は、対話と抑止の果たしてバランスがとれていると言えるかどうかなんですね。我が国は、去年から、ガイドライン関連法案や偵察衛星の導入、TMDの共同研究の開始などを失継ぎ早に決定いたしました。このような措置は近隣諸国を刺激いたしております。新たな軍拡競争を招く結果となることは、台湾に向けた中国のミサイル配備状況を見れば、はっきり言えることだと思うんですね。
そこで、総理にお伺いいたしますが、我が国の安全保障政策は、対話と抑止のバランスがとれたものとなっているとお考えなのかどうかです。また、我が国の安全保障政策が、近隣諸国との間で軍拡競争を招く結果とならないかどうかなんです。この点、まずお伺いしたいと思います。
○小渕内閣総理大臣 我が国を取り巻く国際環境の安定と確保のために外交努力を行うことは、日米安保体制の堅持、節度ある防衛力の整備と並んで、我が国安全保障政策の基本だと思います。
このような外交努力の中で、特にアジア太平洋地域におきましては、各国間の信頼醸成を促進することは重要であると認識いたしておりまして、このような観点から、政府としても、ASEAN地域フォーラム等の多国間の枠組みや、域内各国との二国間の安保対話、防衛交流に積極的に取り組んできており、今後ともこのような努力を継続してまいるつもりであります。
他方、アジア太平洋地域におきまして、冷戦後も、朝鮮半島における緊張の継続等、依然として不安定、不透明な要素が残されております。このような中、地域における米国の存在と関与を確保することは、引き続き地域の平和と安定を確保していく上で前提であると考えます。日米安保体制は、このような米国の存在と関与の重要な基盤であり、その信頼性を高めるとの観点から、まさに本委員会におきまして、日米防衛協力のための指針関連法案の御審議をいただいておるところであります。
政府としては、これが早期に成立または承認されることを強く期待いたしておりますが、私が抑止と対話のバランスと申し上げておりますのも、このような信頼醸成のための外交努力と米国の存在と関与等が相まって、地域の平和と安定に寄与しており、両者をバランスを持って推進することが、アジア太平洋地域の情勢に即した最も現実的な対応であるという認識でございまして、お尋ねにつきまして、長くなりましたが、私は、対話と抑止、これは順番があるわけではないと思っております。
これは同時に、常に、安全保障に対して最終的な対応を考えつつ、そして対話を求める。具体的に申し上げれば、北朝鮮に対しましても、これは韓国、金大中大統領と意見の一致をしたところでありますけれども、自国の安全保障に対しては確固たる確信を持ってこの努力をし、同時に相手国に対してのいわゆる包容政策をとることが必要だということでありまして、私もこれに賛同いたしましたのは、対話と抑止というものは常にバランスをとってきちんとやっていく必要がある、このことは、私は、日本のとるべき対応であり、そのことのバランスは、現時点におきまして日本政府の対応はこの両方のバランスがとれておる、このように認識をいたしております。
○土井委員 対話と抑止のバランスについて御答弁の中で、朝鮮半島にお触れになりながらの御答弁でございましたが、私は、一点、これはひとつ総理にぜひ御意見を承りたいことがございます。
それは、日本政府は、一九七二年の日中共同声明、これを受けた一九七八年の日中平和友好条約によって、台湾が中国の一部ということを確認いたしております。アメリカ政府は、中国政府との間にそのような政府間の約束をしておりません。御存じのとおりに、上下両院では、台湾関係法という国内法が厳然としてございまして、台湾を軍事的にも支援する態度をとっているわけであります。つまり、日本とアメリカでは台湾に対する姿勢が全く違います。
したがって、万が一台湾有事が起こった場合、アメリカ政府が台湾を支援して中国に対して軍事行動を起こすことが可能でございますけれども、その場合、日本政府がガイドラインに従ってアメリカ軍の後方支援をすれば、それは日中平和友好条約違反になるのではございませんか。つまり、台湾、中国に関しては日米防衛協力のガイドラインを適用することはできないのではないかということであります。
このことを日本政府としてアメリカ政府に問題提起をしているというふうにはどうも見えないのですが、こういう話し合いをなすったかどうか、また一方、中国に対しては、台湾に対して武力解放という選択肢は、これは持たないということを話の中でしっかり、それは話し合っておられるかどうか、この点をひとつ承りたいのです。
○小渕内閣総理大臣 台湾につきましては、これもしばしば申し上げておるところでありますが、我が国の基本的立場は、日中共同声明にありますとおり、すなわち、台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国の立場を十分理解、尊重する立場でございます。米国がどのように対応するかにつきましては、私、そのことについて米国と話し合ったことはございません。
さらに、今次のここで御提案されております周辺事態におきましては、あらかじめ生起する地域を地理的に特定できないこと、したがって、このような意味で地理的概念ではない。それで、ある特定の地域における事態につき、これがあらかじめ周辺事態に当たるか否かの質問に答えることは、これは不可能である、こういうことでございます。
○土井委員 そういう話をしたことがないとおっしゃいますが、ぜひ、対話とおっしゃるのですから、そういうことについて率直に話し合うということが、大変に私はこれは大事と思いますよ。そして、そういうことを具体化していくための努力というのは初めてできるのじゃないでしょうか。これはひとつお願いします。
改めて総理にそれを申し上げさせていただいた上で、さて、日米新ガイドライン、これは条約ではございません。協定でもございません。実務的な政府間の取り決めだと思いますが、行政行為の中では、これはどういうことに相なるのですか。どのようにこのガイドラインというのを法的に位置づければいいのでしょう。憲法に従って考えてみれば、どういうことに相なりますか。
○高村国務大臣 新たな日米防衛協力のための指針でありますが、これは、日米両国政府が三つの分野、平素の場合と日本に対する武力攻撃あるいは周辺事態、こういった分野における日米協力のあり方について一般的な大枠、方向性を示したものでありまして、政治的な意思の表明として発表した文書でございます。
したがって、日米いずれの政府も、指針により立法、予算ないし行政上の措置をとることを義務づけられるものではないわけでありまして、法的位置づけといっても大変難しいのですが、今申し上げたように、いわゆる政治的な意思の表明として発表した文書でございます。
○土井委員 政治的意思とおっしゃいました。これは、安保条約に規定された軍事条項を日米両軍事組織が共同対処の作戦計画として実施する際に必要な運用マニュアルというふうに考えても間違っていないだろうと私は思うのですね。
そして、どういうことを私は承りたかったかというのは、もう二度三度お尋ねしても同じようなお答えだろうと思いますから申し上げさせていただきますけれども、憲法の七十三条に言う行政事務に当たるというふうに思います、条約の附属取り決めでございますから、間違いなく。当然、条約本文の指示範囲を超えた内容がそこで決められるということは本来許されない。したがって、条約の指示範囲をしっかり踏まえてこの運用マニュアルというのはつくられなければならないはずであります。
このガイドラインによって日米両軍に新たな任務や行動範囲が設定されて、それに基づいて関連国内法案がつくられて、そしてその条文の中の九条を見ますと、九条のところには「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」そして二項には「前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」とございます。
これから考えてまいりますと、まず、この九条の一項なんです。周辺事態に際しての米軍への後方地域支援に関して、地方自治体の長に対して「その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」となっているんですが、これに対して、今までの御答弁をずっと承っておりますと、一般的な義務規定として、よくわからないんです、私、この一般的な義務規定とおっしゃるのが。公共性の観点から当然協力が期待されるが、拒否を正当化し得る合理的な理由があるならば自治体による拒否も可能であるというお答えも出ているんですね。いよいよわかりません、これ。新ガイドラインが想定する局面での自治体による協力とは、協力が必ずしも得られることが保証されていない不確実なものであるということになるわけです、これはどうも、総じて言えば。
日米両国間においてこういうことが話し合われているんでしょうか、そしてこういうふうに理解しようということが合意されているんでしょうか。いかがですか。
○竹内政府委員 そもそもガイドラインを作成しましたときの基本的な前提というところで、指針及びそのもとにおける取り組み、これは、国内の法律的な整備の問題もございますけれども、それの前提といたしまして、安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務というものは変更されないという点と、さらには、ここでガイドラインに書かれておりますことにつきまして、いずれの政府にも、立法上、予算上または行政上の措置をとることを義務づけられてはいないという点が確認されております。さらに、おのおのの判断に従って日米両国政府はおのおのの具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待されるとされておりまして、日本のすべての行為は、その時々において適用のある国内法令に従う、こう明記されているわけでございます。
したがいまして、日米間におきましても、日本がとります措置というものはその時々の適用のある法律に従ってやるということでございます。したがいまして、法律以上のものをアメリカ側から要求されてやらなければならないということにはなっていないわけでございます。
○土井委員 今のはお答えになっておりませんね、それは。新ガイドラインと称される文書をお読みになったにすぎない。
私が聞いているのは、一般的な義務規定と言われる意味がわからないと言っているんです。それから、公共性の観点から当然協力が期待されるけれども、拒否を正当化し得る合理的な理由があるならば自治体による拒否も可能であるとも言われている、いよいよわからないと言っているんです。これはどういうことですかということなんです。ガイドラインの中身について読んでくださいと私は申し上げておりませんよ。いかがですか。もうこちらの方からお答えいただきたい。(発言する者あり)
○伊藤(康)政府委員 御指名でございますので、答弁させていただきます。
先生御指摘のとおり、まさに公共団体に対して強制をするものではございません。これは、これまで累次、大臣あるいは関係の方々から御答弁があったとおりでございます。
そこで、先生、意味がわからないというお話でございますが、私どもといたしましては、政府として、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際しまして、政府が基本計画を閣議決定した上で、これに基づいてその協力の求めを行っている、そういうものでございます。
地方公共団体の長としても、そういうことを踏まえまして、それぞれの法令上持っている権限を適切に行使していただけるものと期待しているところでございますし、また先ほど、正当な事由がある場合には断る、これは当然のことでございまして、不可能なことをお願いすることはできないわけでございます。そういったことでこれまで御答弁をしている次第でございます。
○土井委員 もう今の御答弁はお答えになっていませんから、幾ら聞いてもこれは本当にわからない御答弁ですよ。一般的な義務規定というふうに言われているのがそもそもよくわからない。
それで、周辺事態法の九条一項を見ますと、そこに書いてあるのは、「協力を求めることができる。」というふうに定められているにすぎないんです、これは。それ以外ではないんですね。「協力を求めることができる。」と。
憲法では、御存じのとおり、地方自治に対してのきちっとした規定がございます。したがって、国による命令や指揮はもちろんのこと、通常、公共団体に対して義務を課すなんていうことになってまいりますと、それに用いられるきちっとした具体的な規定がなきゃならない。九条一項の協力要請を、地方公共団体に一般的協力義務を課するものであるというふうに言われている御見解は、どうもその辺、法律主義とか法定主義とかいうふうなことからすると、この問題に対しての理解は全くないんじゃないかなというふうに私はまず思う。やはりこの辺は、一般的な義務規定と言われて、いよいよわからなくなってしまったんですが、九条一項を見ると「協力を求めることができる。」とあるわけですから、これは義務規定じゃないというふうに考えてよろしゅうございますな。いかがでございますか。
○野呂田国務大臣 お断りしておきますが、このあたりの地方公共団体等に対する協力義務は、内閣の所管になっておりますので、さっき室長から答弁したわけでありますが、向こうの方から、長官答えろという呼び出しの声もかかりましたから、私答弁申し上げますが、この法案では、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります周辺事態に対する対応の重要性にかんがみ、お話しのように、地方公共団体に対する一般的な協力義務について定めたものであります。この場合、あくまでも協力を求めるものでありまして、地方公共団体に対して強制するものじゃございません。地方自治の観点から問題があるとは私どもは考えておりません。
今、先生から、一般的な義務とは何かという御質問がございましたが、この九条一項における協力の求めとは、地方公共団体の長の有する権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であり、例えば港湾の管理とか空港の管理等はそうであります、そういう事情にかんがみ、個別の法令、条例に基づいて権限を適切に行使することを求めたものであります。
○土井委員 それは、現行法に対してそれを認識して適用するということは当たり前のことでございます。
ところが、長官は、二月の一日に御発言になった中身を見ますと、当日本の存立にかかわる、日本の平和と安全に重大な影響を持っている事態に際してでありますから、一般的な協力義務としては、それは協力するのが私は当然だと思うとおっしゃっているのですね。それから、協力するのが常識であるとも言われているのですね。
このような御発言を踏まえますと、これまで政府が言ってこられましたように、正当な理由があれば九条一項による協力要請を拒否することは可能であるということは、実際問題としてはあり得ないということを長官はおっしゃっていることになるわけであります。明確な法的根拠も、条文を読んだらどこにもありませんよ。ないままに、なし崩し的に地方公共団体がアメリカ軍への協力体制に組み込まれることになるのではないかという危慎が大変あります、これ。政府の御見解を承ります。
○野呂田国務大臣 もう少し補足したいと思いますが、一般的な協力義務と申しますのは、地方公共団体の長が求めに応じて権限を行使することが法的に期待される立場に置かれることを意味する、私どもは、一般的協力義務というのはそういうふうに解しております。そして、地方公共団体の長がこの九条一項による協力の求めに応じないことをもって直ちに違法とするものではないということはもうそのとおりでありまして、正当な理由がある場合にこれを拒むことを排除しているものでは全くありません。正当な理由であるかどうかは、本法の第一項に基づく協力の求めを受けたということを前提として個別の法令、条例に照らして判断されるということになるわけであります。
今、委員から、国の存立にかかわるような、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態について協力をするのが私は当然と思うと言ったのは、政治家個人としての立場から、私の政治姿勢として申し上げたわけであります。
○土井委員 それは防衛庁長官でおられますからね、防衛庁長官としてのやはり御見解、御答弁ということを、この場所ではぜひお願いを申し上げます。
先日、求められる中身というのが一体どういうことに相なるんだろうかと、自治体の方が大変それに対して心配をされるというのは、私、至極当然のことだと思うのですが、その声がやはり高くなってでしよう、そしてまた、当委員会でもそのことが取り上げられるということがあったということも影響していると思いますけれども、十項目の中身を二月にお出しになりました。その中にもあるのですけれども、港湾空港。
この港湾、空港に対して協力が要請され、現在、地位協定の五条一項を見ますと、アメリカ軍の日本の港湾と空港への出入りを認めております。しかし、これはあくまで一般的な使用でございまして、優先的な使用ではございません、また、独占的な使用を認めているものではございません。そのために、周辺事態においてアメリカ軍から求められる我が国の民間空港、民間の港湾の使用は、その提供を求められる背景にある事態の性格から考えて、アメリカ軍はきっと優先的、独占的使用ということを求められるに違いないというふうなことを予知している向きは強いです。
そうした場合、政府とされては、その使用が求められる港湾や空港を、地位協定の二条四項(b)によって提供される区域として指定することに相なるのかどうか、この辺を少しはっきりさせておいていただきたいと思います。いかがでございますか。
○竹内政府委員 周辺事態に際しまして、米軍艦船、航空機によります港湾、空港の使用が必要になる場合のお尋ねでございます。
先生御指摘の、この法案第九条第一項に基づきまして地方公共団体等に何らかの協力を求めることになるかというようなことにつきましては、事態のそれこそ態様等を総合的に勘案した上で、個別的、具体的に判断することになりますので、あらかじめ申し上げることは困難でございます。
しかし、その上で、あくまでも一般論として申し上げさせていただきますと、法案第九条第一項に基づきまして協力を求める場合に、一つは、日米地位協定第五条によりまして我が国の港湾及び空港に出入りすることが認められている米軍艦船及び航空機による使用と、それについての便宜の供与を依頼するということもあり得るわけでございます。
さらに、先生今御指摘の、地位協定第二条四項(b)に基づきます民間の港湾あるいは空港の共同使用の問題を含めまして施設・区域を提供するかどうかというような問題が、理論的にはあろうかと思いますが、一般論として申し上げますと、安保条約の目的達成、我が国の財政負担の問題、それから地域社会、経済的な影響というようなものを総合的に勘案した上で判断されるということでございますので、仮に周辺事態に際してというお尋ねでございますけれども、その場合にも、今申しましたようなことで判断をしていくということであろうと思います。
○土井委員 否定なさらないですね。これはやはり、心配が当たったと思われる方は多いですよ。
今、安保条約の目的を達成せんがためにということもまたおっしゃっていましたけれども、この新ガイドラインの中身を見ますと、安保条約で決めていることよりはるかに時間的にも空間的にも広い問題を問題にしなければならない、それが周辺事態の中身です。したがって、この地位協定の二条四項(b)によって提供される区域として指定するということになりますと、アメリカ軍の使用に対しては、優先的であって、場合によったら独占的使用ということを認めるということにもつながりますから、したがって、この点は、否定なさらなかったということをはっきりさせておきましょう。
周辺事態においてアメリカ軍から求められる我が国の空港、港湾の使用は、その提供を求められる背景にある事態の性質上、今御答弁にもありましたけれども、アメリカ軍による優先的独占的使用が求められるということは明らかだと言わなきゃならないと思うんですね。
一方、地方公共団体の方、地方公共団体の立場に立ちますと、公の施設を利用する住民の皆さんに平等な利用権を保障するということを目的として、自治体の側は、利用なさる方々の使用についても、平等な利用ということを念頭に置いて規制をするということがあります。地域住民の生命や安全を守るということが自治体の長の責務でありますから、そのために、地方公共団体は協力要請を受け入れるか受け入れないか、どうするかこうするかという問題について、そうした立場からアメリカ軍に対する特別使用の可否を判断するということになり、結果として、住民の皆さんを初めとする一般利用者の使用に支障がない範囲で認めるというような事態も想定されると私は思うんです。
これは、運輸大臣、いかがですか。これは、空港の問題について、あるいは港湾の問題について今問題にしつつあるわけですから、運輸大臣、ぜひお考えを聞かせてください。
○川崎国務大臣 先ほどの外務省の御答弁ですけれども、私どもの基本的な認識としては、五条の適用が今回の基本計画を組むときの前提であると考えております。特に第二条第四項の(b)、すべてを否定するものではありませんけれども、施設提供に当たっては日米合同委員会を通じた手続が必要であって、迅速な協力の観点からこれを適用するというケースはまれな話であろうと。基本的な認識としては五条であると考えております。
そういう考え方からいきますと、まず日米地位協定に基づいて、港湾、空港の使用は、これは今お話がありましたように米軍に認められている。しかしながら、優先使用権はありませんから、当然、そこで、例えば混雑な空港であるとか、民間が今現在満杯の使用状況になっているということになれば断る理由もあるであろう。しかしながら、それは基本計画を組む段階において、地方公共団体の長またそれぞれの管理者と我々が話し合いながら基本計画というものはつくられていく、こういうふうに考えております。
○土井委員 先ほどの防衛庁長官の御答弁と大分ニュアンスが違いますね。防衛庁長官の方は、何だかこれは、一般的なこれに対しては義務があるというふうな認識が非常にうかがわれるわけでありますけれども、運輸大臣の方は、やはりそれに対して自主的にきちっと判断をするというふうなことに対して、それを前提として考えていかなきゃならないというふうな御見解だと、今承りました。それは間違っていないと思いますね。首を縦に振っていらっしゃるから、そうでしよう。
そうすると、これは、いかがですか、内閣の中で大分これは違いますね、こういう問題に対しての取り上げようが。それは少し意見としては、このあたりは非常に大事なんだけれども、なぜそういうニュアンスの違いというのがそろそろ出てくるかといったら、法文自身がきちっとしたものじゃないからですよ、これ。きちっと決めなきゃならないところが決められていない。だから、「求めることができる。」なんというのはどうにでも解釈できるということにもなります。だから、きちっとこの辺は、やはり権利義務がこれに対して出てくる問題でありますから、法文としては明確に規定するというのが本来のあるべき姿だと私は思うんですよ。
さて、私はここに議事録を持ってまいりました。この議事録は古い議事録ですが、昭和四十四年の七月十二日、当時社会党の小川三男議員が質問者であります。残念ながら亡くなられましたが小川議員は、成田新東京国際空港周辺整備のための国の財攻上の特別措置に関する法律案についての質問をされている。そのときに答弁をされているのは、佐藤総理でございます。佐藤総理のお答えはこういうことなんです。議事録を読みます。
まず、地位協定第二条第一項に基づく施設、区域として提供し、同四項による共同使用区域として認めることは拒否する。すなわち、戦闘目的として、または軍事基地としての使用は許さない方針であります。この点は、はっきり申し上げておきます。
また、地位協定第五条第一項に基づくMACチャーター機を含め米軍用機の離着陸についても、この空港が国際民間空港の発着に対応して新たに建設するものであり、純民間空港として育ててまいりたいと考えているので、地位協定第二十五条の合同委員会を通じて、極力制限するよう調整したいと考えております。この点をはっきり申し上げまして、誤解を解きたいと思います。
という御答弁なんですよね。
実はこれは、新聞紙上に載りまして、全国で大変話題を呼びましたけれども、一九九四年、朝鮮半島で、特に北朝鮮の核開発疑惑というのが発端でございまして、アメリカ側から政府に対して、日本側に、あの空港、この港湾と協力が求められていたという記事が出ました。
その中の空港の一つに、成田空港という名前がちゃんと具体的に固有名詞が出たものですから、ございました。全国では、この固有名詞を見て、その周辺の皆さんというのは随分心配されたんですが、この成田空港について、運輸大臣、佐藤総理が当時こういうことをおっしゃっていることは、ただいまもこのことをしっかり、総理の御発言ですし、御答弁なんですから、大事に考えなければならないと思っていらっしゃるかどうかをお聞かせください。
○川崎国務大臣 まず最初に、一部の新聞報道を取り上げられましたけれども、運輸省には全くその話は伝わっておりませんので、否定をしておきます。
今もお話し申し上げましたように、民間航空機による民間空港の一時的使用、これは日米地位協定によって認められております。しかしながら、例えば成田の問題でありますけども、混雑空港の問題については難しい問題であると第一に考えております。
また、同時に、ここまで積み重ねられてまいりました国会答弁、佐藤総理だけではございません、中曽根運輸大臣を初め、多くの方々の御答弁がございます。それから、地元の方々との今日までの話し合いの経緯、こういうものも十分考えながら進めなければならないだろうと思っております。
ただ、先ほどお話し申し上げたように、基本計画を組んでいく過程の中において、今日までの事情というものを十分話しながら、しかしながら、同時に、事の緊急性とかいろいろな問題を話し合いながら進めてまいりたい。
今土井委員が言われたことは、私どもも十分承知した中で話を進めてまいりたい、このように思っております。
○土井委員 運輸大臣はやはりいろいろ御配慮なさりながら御答弁されているというのがよくわかります。
それでは、総理にこの問題で承りたいんですが憲法の中では、御存じのとおり、地方自治を保障しております以上、地方公共団体はその立場において果たすべき責務がございます。いかに周辺事態であれどうであれ、明確な法的根拠もなく自治体の権利を制限するようなことがあってはならないというふうに考えられますが、総理の御見解はいかがですか。
○小渕内閣総理大臣 関係行政機関の長は、地方公共団体の長に、周辺事態に対する措置の緊要性にかんがみ、その権限の行使につきまして、公権力の行使にかかわる権限の公共的性格、他に代替手段を求めることが困難であるという事情を考慮し、基本計画におきまして重要事項が定められることを前提として、必要な協力を求めることができるとされております。
この協力の求めは何らの強制を伴うものでないけれども、上記の趣旨に照らし、かかる協力の求めを受けた地方公共団体の長において、正当な理由がない限り、これに応ずべきことが法的に期待をされる。この意味において一般的な義務を負う、こういうことでございまして、地方公共団体に対する協力の求め、すなわち第九条第一項はそのようなこととして、ぜひ、期待を法的にされておるものでございます。
○土井委員 そうおっしゃるのなら、ここで最後に申し上げたい。自治体に何を求められるのか、具体的に。この前の十項目、これに尽きるわけではありませんとおっしゃっていますから、まだあるんでしょう。しかし、あの十項目も中身はよくわかりません。はっきりしないです。これはやはり、今そういう問題で、周辺事態や、自治体や民間に後方地域支援を求める内容は日米間で協議する、その協議するのは相互協力計画としてであると思いますが、この点はどうなっているんですか。
○柳澤政府委員 先生言われましたガイドラインの中に言いますところの相互協力計画につきましては、昨年の三月から実質作業を始めた段階でございまして、これはいわゆるガイドラインに言いますところの包括的なメカニズムの中で、現在のところ、統合幕僚会議事務局とそれから在日米軍の司令部の担当者の間で、今いろいろ非常に入り口の段階の共同作業をやっておるというところでございます。
これは一定の節目に参りますと、外務、防衛の局長級の、SDCと言っておりますが、防衛協力小委員会でありますとか、その上の閣僚級の2プラス2、日米安全保障協議委員会に上げまして、その適切な御指導をいただくということで進んでいくことになっております。
○土井委員 これは法案を読んでもどこにも出てまいりません。新ガイドラインの中には、今おっしゃる包括的メカニズムという問題が出てまいります。しかし、そういう組織をつくって検討していくということについては、法案のどこを読んでもこれは出てこない。ただ、共同計画検討委員会というのが相互協力計画を検討する実務的な委員会であるということは、ただいまの御答弁の中でそれは出ている問題なのですが、その共同計画検討委員会というのは、中身は日米の制服組でしょう。これはシビリアンコントロールじゃないのでミリタリーコントロールですよ。制服組で構成されている。そこで実務的な検討がずっと進んでいるということだと思うのです。ところで、もう一度法案に戻ります。法案の十二条を見ると、この法律の必要な事項は政令で定めることということになっていますから、政令に委任するのですね。少なくとも、今までこの共同計画検討委員会がどこまで検討を進めておられるか、作業の内容がどの辺になっているか、これから先の見通しはどうなっているか、さっぱりわかりません。
十二条で、この法律の必要な事項は政令事項ということになれば、まるで私たちがわからない間に政令に白紙委任してしまって法律が万が一成立した、成立してから後、後を追っかけるように、後で政令の中身として、この具体的に何を求めるかというのが出てくる。これでは立法府としての見識にかかわると私は思いますよ。しっかりこの点は、国民の権利義務を左右するという問題ですから、白紙委任することは許されません。作業の内容を国会に報告していただきたい。
少なくとも、どういうふうに考えられているかということがここで知らされなければ、これは法案審議できないですよ、その法案の中身なんですから。自治体に対してどう考えているか、何を求めるか、また民間に対してどういうことを求めるか、これは大事だと思うのですね。法治主義が廃れます、そうでないと。しっかり知らせていただいて、そのことをひとつ審議の中身として審議しなければ、法案審議にならないと私は思います。
中身のないことを判断しなさいと言われても、できるはずがございません。お互い、やはり憲法を見れば四十一条に、国会は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるとなっているその唯一の立法機関という法律に対して、責任を持とうじゃないですか。そうすると、白紙委任というわけにはこれはいかないですよ。その辺はひとつしっかりと、共同計画検討委員会の現状に対しての報告を求めるということを、委員長、これはぜひともお願いします。そうでないと審議はできないと思います。
○野呂田国務大臣 これは、ガイドラインで言う包括的なメカニズムの構成の中で、防衛協力小委員会とか共同計画検討委員会というのが出てくるのですが、さっきシビリアンコントロールに欠けるというお話でしたが、この組織は、大統領と総理大臣が一番トップにおります。これは日米安全保障協議委員会というものでやるわけですが、これは国務長官と国防長官、外務大臣と防衛庁長官というふうに、そういう段階で、2プラス2と言っておりますが、そういうところでやりますので、何か軍人さんだけが集まってこの計画をつくるということには決してなっておりません。
そこで、共同計画検討委員会における相互協力計画についての検討は、日米両国政府が周辺事態に円滑かつ効果的に対応することができるように平素から行うものでございます。
周辺事態に係る日米協力の考え方や協力の対象は指針に明記されているところでありますが計画についての検討作業は、その結果が日米おのおのの計画に適切に反映されることが期待されるという前提でつくられておるものであります。その成果は、防衛庁として、所要の検討、準備に反映されることとなります。日米は実際の状況に照らしておのおのの計画を調整することとされており、周辺事態に際して自衛隊が実施する後方地域支援の内容等は、具体的には基本計画や実施要領に基づいて決定されるということになります。その際には、計画についての検討作業の結果を踏まえつつ、国益保護の観点から我が国が主体的にこの判断をするということになっております。
なお、御質問の中に計画についての検討の具体的な内容について示すべきだというお話がありましたが、これらの問題は、緊急事態における日米の対応ぶりにかかわってくるものでありまして、事柄の性質上、その内容について答弁することは差し控えたいと思います。
○土井委員 これは黙っておれませんね。
平素から準備段階でこれは整えていかなきゃいけないということになっているじゃないですか。そうすると、それは、いざとなつたときに間に合うという状況で、平素からとかふだんからとかいうふうな問題になっているのでしょうけれども、これはもう一年半近くたちますよ、構成されてから。したがって、これは今るる御説明を承りましたけれども、これはこの図についての御説明でございまして、新しくございません。
しかも、共同計画検討委員会、ここは自衛隊の統合幕僚会議と、アメリカ側は太平洋軍司令部、在日米軍の司令部の幹部が参加をして、それは日米防衛協力のための指針に基づく日米共同作戦計画と日米相互協力計画についての実務的な検討が今行われているということであるというところまではわかっております。だから、御答弁の中にもその御説明はございましたが、長官、これは作業が進んでおりますから、その中身についてお聞きになったらどうですか。聞いておられるのでしょう。そうしたら、ここに対してそれは知らせていただかなければなりませんよ、これは。
これはやはり、自治体とか民間の協力が要請される中身についてすっかりわからないまま、何かはっきりしないまま決めてくださいとおっしゃっても、決めようがありませんから。だから、これは審議に対しての必要要件であります、不可欠の要件であります。
委員長にそれをお願いします。
○山崎委員長 包括的メカニズムの問題につきましては、この総括質議が終わりました時点で論点整理をいたしますので、土井党首の御発言でございますので、論点整理の中に当然入ると思います。その論点整理を踏まえまして、また各党協議を続けていくということになるわけでございます。
○土井委員 御配慮、ありがとうございました。
ただ、それが具体的に実現することを私は願ってやみません。そうでないと審議になりませんからね。
終わります。