社民党政策審議会長 濱田健一
1.本日の衆議院労働委員会において、「労働者派遣法改正法案」並びに「職業安定法案改正法案」が、社民党も賛成のもと可決された。社民党が賛成した理由は、法案審議に当たり労働省に提示してあった「濱田試案」に対する回答が、衆議院段階で得られる水準としては、概ね了とできると判断したからである。
衆議院段階において、この水準で概ね了とせざるをえなかったのは、社民公3党の修正協議に加わることなくして、この水準までの「改善(到達点)」は望めなかったこと、また何より、手をこまねくならば(有用な社民党案の最大限の実現に向けた努力を放棄することと同義)、より低い内容での可決が不可避であったからでもある。
なお、社民党が修正等の協議に加わることによって前進した項目は、その全てではないが、「資料5」の「濱田確認質問」にあらまし明らかになっている。
2.ただし、積み残しとなった課題が多いのも事実である。
例えば、派遣業務の自由化が正規雇用の代替機能として作用(正規雇用を侵食)することを防ぐ観点から、現行の適用対象業務(専門的な業務等の26業務)以外に新たに労働者派遣の役務の提供を受けられる(派遣労働の拡大が認められる)のは、派遣先における業務量が「臨時的・一時的に増加した場合」に限る一一の重要事項に対して、「改正案の施行3年経過後」というように、その結論が先送りされたことなどである。
また、(1)労働者派遣の役務の提供を受ける派遣先の法的責任のあり方、(2)自由化の“荒波”をモロにかぶらざるをえない派遣労働者の賃金(自由化によって派遺元間の競争激化は必至であり、派遺元は競争力確保の手段として、いっそうの派遣料金の切り下げに取り組む)については、その水準を公正かつ適正に維持するため「均等待遇の原則」を追求する一一などについても、同様の扱いとなってしまった(結論の先送り)。
3.これらの課題については、参議院の委員会審議に際して「対案(大脇雅子試案)」を提起し、徹底審議を尽くすことで、より高い水準での改善等を獲得していく。
1999年5月19日
<労働者派遣法>
問1 派遣元が労働者を新たに派遣労働者にしようとする場合において当該労働者の同意を得られなかったときに解雇等の制裁が行われないよう措置を明確に定めるべきではないか。
(答)派遣労働者になることを同意しなかった労働者に対して事業主が解雇等の制裁を行うことのないよう指針に明記することとしたい。
問2 専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われることを防止するための実効ある措置を講ずるべきではないか。
(答)特定派遣の是正に関する勧告制度の的確な運用を図るとともに、専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行わないことを許可の条件として付することといたしたい。
問3 派遣元事業主は、派遣労働者が情報の開示、訂正の請求をしたことを理由として派遣労働者等に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととすべきではないか。
(答)御指摘の趣旨に沿って指針において具体化することとしたい。
問4 派遣元に係る個人情報の保護の規定違反について、許可の取消し、事業停止命令、改善命令等の行政処分や改善命令違反についての罰則等の措置の適用の徹底を図るべきではないか。
(答)派遣元事業主に係る個人情報の保護規定違反に関し、許可の取消し、事業停止命令、改善命令等の行政処分や、改善命令違反に対する罰則等の措置について周知、徹底し、個人情報保護規定違反の発生の防止を図ることといたしたい。
問5 派遣元が派遣先による労働者の特定を目的とする行為に協力することを禁止する旨明確化するための措置を講じ、指導の徹底を図るべきではないか。
(答)派遣元が派遣先による労働者の特定を目的とする行為に協力することを禁止する旨を指針に明記した上で、指導の徹底を図ることとしたい。
問6 労働者派遣契約の中途解約に際して、派遣元に契約解除の理由を明示することについて必要な措置を定めるべきではないか。
(答)派遣先は、派遣元から請求があったときは、契約解除の理由を明示すべき旨を指針に明記することとしたい。
問7 派遣元が教育訓練の実施を確実に行うよう、許可基準の厳格な判定を行うとともに、教育訓練の実施について指導の徹底を図るべきではないか。
(答)派遣元が教育訓練の実施を確実に行うよう、許可及び許可の有効期間の更新に際し、許可基準の厳格な判定を行うとともに、許可等の後においても教育訓練の実施について指導の徹底を図ることとしたい。
問8 派遣先における派遣労働者の福利厚生施設の利用、教育訓練に機会に関する事項について労働者派遣契約の必要契約記載事項とするための必要な措置を定めるとともに、派遣元による労働者派遣契約の締結事項の派遣労働者への明示事項の一層の徹底を図るべきではないか。
(答)派遣労働者への明示事項として省令の第26条に規定されている派遣先における派遣労働者の福祉増進のための便宜供与に関する事項を労働者派遣契約の必要記載事項として省令に規定するとともに、派遣先による教育訓練についての必要に応じた便宜がこれに含まれる旨を指針に明記し、就業条件の明示の徹底を図ることといたしたい。
問9 派遣先における派遣労働者に係る適切な業務上の指示について、契約に定められた業務以外の業務の指示や時間外の業務指示を受けること等のないよう徹底を図るための措置を定めるべきではないか。
(答)法39条に規定されている「派遣契約の定めに反することのないよう派遣先が講ずるべき適切な措置」の内容を指針においてより一層具体化、明確化することにより対処することといたしたい。
問10 派遣元に労働者派遣法及びこれに基づく命令の要旨を派遣労働者に周知させるための必要な措置を定めるべきではないか。
(答)派遣元が労働者派遣法関係法令の周知を行うべき旨を指針に明記することといたしたい。
<職業安定法>
問11 新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他命令で定める方法により労働者の募集を行う者が職業安定法第5条の3第1項により当該募集に係る従事すべき業務の内容等を明示するに当たって、当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないような的確な表示が行われることを徹底するための措置を定めるべきではないか。
(答)御指摘の趣旨に沿って的確な表示のための具体的な留意事項を指針に明記することといたしたい。