○山崎委員長 次に、濱田健一君。
○濱田(健)委員 総括が終わる段階ですので、ちょっとこれまでのいろいろな質問に対するおさらいみたいなものを社民党的にさせていただきたいと思います。
これまでの論議の中で、日米共同作戦や相互協力等、日米安保条約の枠内でするのだと言われておりますけれども、私は、本当にそうかと思うのであります、安保そのものが変質してきているのではないかと。
その理由として、新ガイドラインの制定のきっかけとなりました日米共同宣言の中に、アジア太平洋地域という範囲が盛り込まれておりまして、それに連動する、極端に言えば、アジア太平洋から世界のどんな国でも、アメリカの守備範囲、アメリカ軍が行動する守備範囲を日本にバックアップさせる、そういう中身ではないかとこれまで論議もなされてまいりました。ましてや、安保条約第六条の極東の範囲というものを大きく超えて在日の米軍が行動できる中身にこのガイドラインを含めた法案が位置づけられているのではないかと思うのですが、その辺、改めてお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
○小渕内閣総理大臣 日米安保条約に言う極東につきまして、昭和三十五年の政府統一見解に述べられているとおりであり、この政府統一見解に変更なく、日米安保条約の対象地域は極東からアジア太平洋地域へと実質的に変質したといった御指摘は当たらないと考えております。
新たな日米防衛協力のための指針は、日米安保体制のもとで効果的かつ信頼性のある日米協力を行うため、日米防衛協力のあり方に関する一般的な大枠及び方向性を示すことを目的とするものであります。また、この新指針の実効性を確保するため、周辺事態安全確保法案は我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものでございます。
なお、周辺事態は、極東やアジア太平洋といった視点ではなく、あくまでも我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否かに注目したものであることを、改めて申し上げさせていただきます。
○濱田(健)委員 私は、安保そのものが変質してしまったからこそ附属文書であるガイドラインをつくりかえなければならなかった、そして、国内法の整備も、その中でうたわれていない中で周辺事態安全確保法という新しい法律もつくらなければならない、そういう状況に政府自身が追い込まれてきているのではないかと思うのですが、総理、いかがですか。
○小渕内閣総理大臣 安保条約そのものが変質しておるとは考えておりません。なるほど、国際政治、あるいは現下の、冷戦構造から全く世の中が、そういった意味では二大大国を中心にした国際政治の厳しい冷戦構造というのがなくなったということは事実でありますが、北東アジアも含めましてまだまだ不確定な要素は存在する中で、依然として、我が国の安全を確保するという意味で、日米が協調してこのことを行っていくということについては、安保条約の基本的な存在理由、存在意義というものは厳然として存在している、こう認識をいたしております。
○濱田(健)委員 私は詭弁だと思いますね、その総理のお話は。
それで、関連して言いますと、外務大臣にお尋ねしたいのですが、これまでも、周辺事態の周辺というのは特定した地域ではない、事態の方が、その中身の方が重要なんだと言っておられましたけれども、周辺という言葉がある以上は、当然地域があるはずだと私は思います。
日米安保条約が変質していないのであれば、安保の枠内ということであれば、極東及び極東のその周辺ということだろうと思うのですが、いま一度、周辺事態の周辺と安保で言う守備範囲、ここは同じなのか違うのか、お答えいただきたいと思います。
○高村国務大臣 日米安保条約の目的というのは、極東及び我が国の平和と安全ということでありますが、そのうちの我が国の平和と安全ということに絞ってこの周辺事態法ができているわけであります。
そういう意味から、極東に関する概念である極東そのものの言葉とか、あるいは極東周辺という言葉を使うべきでなくて、我が国の平和と安全に絞ってこの法案ができている以上、我が国周辺という言葉を使うのが適当だと考えたわけであります。
私も前から言っているのは、あらかじめ特定するという意味で地理的概念ではない、こういうことを言っているのと同時に、どなたでも、周辺という言葉が地理的意味を全く含まないなんて、そんなことは日本語じゃないよ、こういう疑問は、それはそれなりにもっともでありまして、私たちは、我が国周辺という言葉を使ったのは、それがどこまでもいっちゃわないというような、そういう気持ちを込めて使ったつもりでございますが、あくまで、一定の地域を特定してあらかじめ示すことはできない、そういうことであって、我が国周辺というのはどんどんどこまでも広がってしまうというものではない、事態の性質から当然におのずから限界がある、こういうふうに思っております。
○濱田(健)委員 今のお答えでいうと、事態が起きた、その中身によって、非常に遠いところであっても周辺になるし、近いところでも周辺にはならないという判断を政府がやるんだということでよろしいんでしょうか。
○高村国務大臣 そういうことでございます。そういうことでございますけれども、民主的な政府でございますから、そんな恣意的に何でもやれるというはずのものでもございません。
○濱田(健)委員 そこのところも、国民の皆さん方にはよくわからない、論議を聞いてきてもわからない中身だという話ばかりでございます。
時間がありませんので急ぎますが、周辺事態法の十二条でございます。
この法律の必要な事項は政令で定めることとする。必要な事項は政令で定めることにするということでございますが、政令事項というのは、私が知っている範囲で言うと、こうこうこういうものについて細かい中身は政令で定めるというふうに普通は書かれていると思うのですが、この法案については、この法律に必要な事項ということだけを書かれているわけでございまして、必要な事項は政府自身にすべて白紙委任をしろというふうにおっしゃっておられるように感じております。
これは、我が党の土井党首が二十六日の質問の中でも皆さんにお聞きしたわけですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
○野呂田国務大臣 この十二条は、「この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項」としていることから明らかなように、本法案の実施のための手続規定を政令で定めることを規定しているわけであります。
したがいまして、国民の権利を制限したり、また、国民の義務を課することを内容とする規定の根拠を与えているものではありません。したがって、この法案の成立後にこの法案の十二条に基づき定められる政令の内容は、当然、本法の実施のための手続の範囲内のものであって、その具体的な内容が決まっていないからといって、本法案を論議することが国会軽視であるというような指摘は当たらないと思っているところであります。
○濱田(健)委員 共同計画検討委員会というのがございます。この中で相互協力の計画を立てる、共同作戦の計画を立てるというふうに言われておりますけれども、これは、九条のいわゆる自治体や民間協力、これらもやるんでしょうか。今長官がお答えいただいた、その他のすべての政令事項で定める中身もこの中で検討するんでしょうか。
そしてこれは、これまで、新ガイドラインがつくられた後何回ぐらいこの委員会というのは開かれているんでしょうか。
○柳澤政府委員 まず先に回数の方を申し上げますと、昨年の一二月から一回目を立ち上げまして、現在まで二回会合を持っております。
そして、この共同作戦計画の検討とそれから相互協力計画の検討でありますが、これは何度か御説明申し上げましたけれども、そういう事態にコアになって活動するであろう米軍と自衛隊の間で、米軍、自衛隊それぞれがどんな活動をするかということを中心に議論をしておりまして、それをいわばエンドレスに、いろいろなパターンの協力を考えながらスタディーしていくというものであります。
したがって、具体的に起きた事象にどのように対応するかというのは、やはり具体的に起きた事象に従って基本計画等に反映されていくわけでありますが、そういう性格のものでありますので、あくまでも米軍と自衛隊の活動のあり方といいましょうか、そういうところを検討しているものであります。
○濱田(健)委員 ということは、私が今言いました自治体の協力とか民間の協力とかというところについて共同で論議をし合う場ではないというふうに理解してよろしいですね。
○柳澤政府委員 そして、この共同計画検討委員会は、いわゆるガイドラインで言いますところの包括的メカニズムの一環として作業をしておりますので、そういう米軍、自衛隊の活動を受けて政府としてどんな対応が必要になるかという部分については、これは、政府としての包括的メカニズムといいましょうか、関係省庁との御調整というようなことも、それはその共同計画検討委員会ではなくて、その成果を受けて上部機関の、恐らくまず段取りとしては局長級の会合でお願いすることになると思いますが、そういう手順はあり得ると思いますけれども、その中で今先生言われたようなこと自体をやるということではございません。
○濱田(健)委員 今の、局長級のところで自治体や民間の協力の中身は決めていくということですが、それはいつごろ発表する、できることになるんですか。
○柳澤政府委員 これは、今、先ほど申し上げたように三回ほど会合を持っておりますが、それで節目ごとに、実はそのもう一つ上にございます外務、防衛の局長級のSDC、さらには閣僚級のSCCに報告をし必要な指示を得るという段取りを予定しておりますが、そういう段取りにまだ至っていないということが一つございます。
それから、具体的に民間等にどのような協力の必要が出てくるかということは、何といいましょうか、今進めておりますのは具体的なケースに応じたスタディーではないわけでありますので、果たしてどの程度定量的な形で出せるかというのは今ちょっと私どもは予断を持っていない状況でございます。
○濱田(健)委員 この共同計画検討委員会が過去三回行われたということでございまして、自治体の協力等々について二月に十項目出されました。まだまだこれから出てくる中身なんでしょうが、この十項日というのが、今答弁された、今までの論議の中で出されてきたものを具体的にこういうものですよというふうに政府としてペーパーにして出したということに考えてよろしいのでしょうか。
○伊藤(康)政府委員 本年の二月三日に協力項目例ということでぺーパーをまとめましたのは、当時予算委員会等で御議論がございました、その中で出てきたものを一通りまとめたものでございまして、この文書の中でも書いてございますように、既にこれに限られるというものではございません。
○濱田(健)委員 予算委員会の中で出てきたものという今の答弁は、予算委員会の中で、どういう中身が考えられるか、今考えられる範囲という形で提示をしたということであって、まだまだこれからいろいろなものが出てくるというふうに私は理解しなければいけないのでしょうか。
○伊藤(康)政府委員 予算委員会でいろいろ御議論がございました。そういう中で、政府側からいろいろ、各大臣から御答弁申し上げたその中身をまとめたものということでございます。
それで、後、では、これからさらにどんなものが出てくるかということでございますが、それはそれぞれの、個別の事案、事象ごとのニ−ズに従うものでございまして、これに限られるものではないということまでは現在申し上げられるわけでございますが、さらに何が出てくるかということについては、なお私どもも今検討をしているところでございます。
○濱田(健)委員 先に行きます。
後方地域支援と後方支援の違いを改めてお伺いしたいと思います。
○野呂田国務大臣 後方支援というのは、一般に作戦部隊に対する装備品の補給、整備、改修、輸送等、あるいは人員の輸送、傷病者の治療、後送、施設の取得、建設、維持、運営等及びこれに関連する義務の提供を指していますが、この場合には特に活動の地域を限定した概念ではございません。また、後方支援は、兵たんとも訳される場合もあります。
これに対しまして、周辺事態安全確保法案における後方地域支援は、活動の内容としては後方支援に類似するものでありますけれども、後方地域という新しい活動地域に着目した概念でありまして、後方地域において、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する輸送、補給といった物品、役務の提供等の支援措置を実施することを指すものであります。
○濱田(健)委員 後方地域支援という言葉について、政府のこれまでの憲法解釈というものをちょっとおさらいしてみましたが、後方地域支援は、戦闘行為が行われていない後方地域で、それ自体が武力行使に該当しないものを行うのだから、集団的自衛権の行使に該当せず、憲法に違反しないとしてこられたと思うんですけれども、この解釈は変わりませんか。
○野呂田国務大臣 そのとおりであります。
○濱田(健)委員 しかしながら、憲法に違反しないからといって、後方地域支援のような活動を行う場合に、国際法上の根拠が何らか必要になってくると思うんですが、ここはいかがですか。
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
現在検討されております後方地域支援、これが国際法上どのような位置づけになるかということかと思いますが、米軍が安保条約、国連憲章に従った行動をとっております。その正しい行動をとっている米軍に対して、我が国がこれを支援するということは、国際法上何ら問題のない行動でございます。これが現下の国連憲章下における法的な位置づけになるということかと思います。
○濱田(健)委員 これまでの憲法解釈によれば個別的自衛権の発動の要件、これが三つあったと思います。我が国に対する急迫不正な侵害のあること、二番目に、これを排除するために他の適当な手段のないこと、三番目に、必要最小限の実力行使にとどまるべきこととされていたと思います。
後方地域支援について考えますと、後方地域支援が行われる場合は、地理的概念でない日本の周辺において日本の平和と安全に重要な影響を与える事態という部分に対処するものであると。これは我が国に対する急追不正な侵害のある場合とは私は言えないと思うわけでございまして、後方地域支援は個別的自衛権の行使ではないこととなると思うんですが、ここはいかがですか。
○東郷政府委員 一点申し上げたいと思います。
現在御検討いただいている後方地域支援、これは実力の行使ではございません。武力行使ではございません。したがいまして、自衛権の行使、あるいは先ほど言及なされました集団自衛権の行使、このような問題はそもそも発生しないというふうに考えております。
○濱田(健)委員 武器の使用等々もうたわれているわけでございますけれども、やはり国際法上の何らかの根拠というものを、先ほど回答ありましたように、必要ないと言われましたけれども、これはほかの国々は当然要求してくるんじゃないですか。違いますか。
○東郷政府委員 お答え申し上げます。
国連憲章下の武力行使及びその武力行使に対応する各国の行動という観点から、この法案で検討されておりますような後方地域支援というものは国際法上何ら問題のない行動であるということでございまして、別の言葉で申し上げれば、国際法上十分根拠のある行動であるということかと思います。
○濱田(健)委員 時間がなくなりましたので、改めてお願いといいますか、前回の土井たか子党首の野呂田防衛庁長官への質問、つまり、共同計画検討委員会で行われている日米防衛協力のための指針に基づく日米共同作戦計画と日米相互協力計画についての実務的な検討の中身は、審議に対して必要要件であり、不可欠の要件である、委員長にそれをきちっと整理をお願いしたいということでございまして、包括的メカニズムの問題については総括質疑が終わった時点で論点整理をするというふうに答えていただきました。
このことについてしっかりと論点整理を当然してもちいたいとは思うわけでございますが、この中身そのものについては、先ほど私が質問しましたように、この委員会で私たちが質疑をする前段として必要な中身もいっぱいあるというふうに思っておりますので、この総括が終わった後、ぜひ示していただきたいというふうに思うんです。その辺はいかがでしょうか。
○野呂田国務大臣 これは日米双方の軍事機密に属することでありまして、その手のうちを全部さらけ出すということはとてもできないことでありますので、これについては慎重に対処しなければいかないことだと思っております。
○濱田(健)委員 野呂田長官は、平素から協議をし、そして緊急なときに備えると。平素から研究をする、論議をするわけですから、これはきちっとやはり国民の前に明らかにすべきだというふうに申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。