「日の丸」「君が代」の法制化に対する見解

1999年6月25日
社会民主党

1.有史以来法制化されなかった「国旗・国歌」法案が国民的な議論がないままに唐突に閣議決定され、国会を延長してあわただしく審議されようとしている。とくに法案提出に至るまで、小渕内閣は、当初法制化は考えていないと言明したにもかかわらず、その後見解が右顧左眄したことは、法制化の目的のあいまいさを露呈するとともに、それがきわめて政治的に取り扱われたことを示している。なぜ性急な法制化が必要なのか政府の姿勢は理解できない。

2.すでに学校現場等で国旗を「日の丸」、国歌を「君が代」として掲揚、斉唱を強制させることについて、わが党は憲法の思想・良心・信教の自由、さらに主権在民の基本原理を侵害するものとして、村山内閣当時を含め一貫して強く反対してきた。法制化は強制をさらに強めるものであり、個人の内心の自由にまで立ち入りかねず、国民を一方の方向に駆り立てるものであり強く反対する。

3.「日の丸」「君が代」が不幸にして近隣のアジア・太平洋地域の人々に対する侵略のシンボルとなった歴史を忘れてはならない。日本が、21世紀に国際社会でより多く真の友人を得、名誉ある地位を占めるためには、次世代を担う子どもたちに「日の丸」「君が代」を強制するのではなく、過去の歴史を正しく伝えることこそが重要である。

「日の丸」については「国家の標識」として取り扱われてきたことは事実であり、それを否定するものではない。だが、「日の丸」が平和国家日本の象徴として意味を持ちうる国旗たるには、過去の侵略戦争、植民地支配への反省の意が内外に宣言されなければならない。しかしいまだにその実現をみていないことは重大な問題である。

「君が代」については、今回の政府見解で「象徴天皇」と置き換えてみても、旧帝国憲法下で「天皇の世」とされてきた歌詞の意味に変わりはなく、国民主権の現憲法の精神にふさわしいものとは認めがたい。

4.政府・与党はガイドライン関連法に続き、組織犯罪対策三法案、住民基本台帳法改正案、さらに憲法調査会の設置の動きなど、平和主義、基本的人権の尊重など憲法を形骸化させる動きをいまがチャンスとばかりに一気に押し進めている。拙速な「日の丸」「君が代」の法制化も、我が国を国民主権から国家主義的に再編し統合しようとする動きの一環であると考えざるをえない。

5.以上の理由から、わが党は「国旗・国歌法案」について、廃案を求めるものである。そのうえで、これからの「国旗」「国歌」のありかたについて、幅広い見地から国民的論議を行うべきであると考える。

以上