2001年11月9日
2001年度補正予算案について(談話)
社会民主党全国連合
幹事長 福島 瑞穂
- 今年7月、完全失業率が史上初めて5%という「危険水域」に達したのも束の間で、9月は5.3%となるなど雇用・失業情勢は悪化の一途をたどっている。
現連立政権下の"政策不在・無策"によってもたらされたその深刻さは、完全失業率が高いという問題に止まらない。就職の意欲はあるのに、自分に適した仕事がないために求職活動をあきらめている事実上の失業者も加えると、いまやわが国は10人に一人が失業者という時代に入ったともいえる。この冷厳な現実を踏まえ、潜在的な失業者も視野に入れた「構想力」を持つ失業対策が求められている。
現下の最大の政策課題は、積極的な雇用安定・創出策の展開による、「先の見える安心社会」をつくることに収斂されるべきである。
本日閣議で了承された本年度補正予算案は(1兆610億円規模)、底割れ懸念すら現実味を帯びつつある失業情勢に対する目的意識を決定的に欠く内容である。目的意識のない雇用対策に大きな期待をよせることはできない。
雇用対策に万全を期すはずであったのに、手当てされた額は5500億円にすぎない。危機的状況を迎えている雇用・失業情勢の改善に向けた決意があるのかさえ疑わしい補正案であると、厳しく批判せざるをえない。
- 小泉流の構造改革は骨太方針に貫かれているというのが"うたい文句"だが、こと、雇用に関してはその片鱗はまったく見えない。
社民党は、「ミクロの生活権(安心できる生活)」保障の積み上げこそがマクロの景気回復を果たすための"牽引車"たりうるとの立場から、国民の生活再建に直結する施策を最優先すべきことを強く求めてきた。とりわけ、政府の後追いの雇用政策で痛みを強いられてきた人々に的確に対処でき、「費用対効果」も追求しうるの施策の実現を図る観点から、「日々の営みと働き方を大切にする─雇用対策」をまとめ(11/2)、世に問うたところだ。
その要諦は、時短とワークシェアリングにある。
労働時間の短縮が、ワークシェアリングの効果を持ち、雇用の創出にむすびつくことは諸外国の例からも明らかだ。フランスでは「時短でも賃下げなし」を基本に、98年に施行された「週35時間制」によって4%強の雇用増大という、新たな雇用創出につなげる成果をあげている。
中高年者の生計費を軽減する社会保障制度の拡充を図ることを前提に、「同一価値労働・同一賃金」を含むすべての権利および労働条件の均等待遇原則に基づく、ワークシェアリングの推進こそが、迂遠なようでも、21世紀のわが国の「真の経済基盤強化」につながる。
ワークシェアリングに取り組む企業に対する助成措置や雇用保険三事業会計にかかわる負担の軽減等の実現を早急に図っていくことにしたい。なお、この施策は、一見財政上の持ち出しが多いと思われがちだが、フランス等の実績を見ても、失業給付対象者の減少や所得税等の増収によって、結果的にはレベリュー・ニュートラル(収支均衡)を確保できる余地は大きい。
- 雇用や年金に係る将来不安の解消策などに特化した、暮らしの向上に直結する構造改革の具体案の提示がない限り、GDPの約6割を占める個人最終消費が好転することは困難だ。このままでは、個人最終消費低迷の一層の膠着化によって、モノは売れない(減収)→業績の不振→リストラの拡大(合理化)→所得減→消費減→量・価格の減(デフレの進行)→減収という「負の連鎖」に引きずり込まれてしまうのは、火を見るより明らかだ。
結果的には、必然的に生じる税収不足のために、特例公債に頼らない限りは、構造改革推進へ欠くことのできないセーフティネットのための財源すら用意できないことになる。この"自家撞着"に陥っているのが、現在の小泉改革の実態といえる。
生活再建を最優先する構造改革なくして、財政再建は成らず─。この論理の帰着を政府・与党は真摯に受け入れるべきだ。