2000年5月3日

20世紀最後の憲法記念日を迎えて

社会民主党

(1)競争と戦争の世紀

 20世紀は「競争と戦争の世紀」だったということができる。この100年は、個人も企業も国家も、さまざまな競争に打ち勝つことが至上の命題だった。その結果、働き盛りの世代からこどもたちや介護の必要な高齢者・障害者に至るまで、人間関係は希薄となり、“孤立と不安”が世界共通の問題となっている。また、二度にわたる世界大戦や広島・長崎の原爆投下など、人類史上空前の大量殺戮が度重ねて行なわれ、この500年間の戦死者(約4、600万人)のうち、今世紀だけで三分の二を占めるといわれている。 

(2)国連憲章の発展強化

 第二次大戦後に発足した国際連合は、「戦争の惨害から将来世代を救う」(憲章前文)ことを宣言し、武力不行使の原則、飢餓と貧困の絶滅、大小国家間の平等、さらに基本的人権、人間の尊厳、男女の平等などを確認した(1945年10月24日発効)。その二年後に施行された日本国憲法は、これらに加えて戦力および交戦権の放棄、生存権や幸福追求権の保障など、国連憲章がいっそう強化されたものということができる。つまり憲法は、大きな犠牲の上に到達した人類の叡智の結晶であり、人類共有の財産なのである。

(3)憂慮すべき現状

 しかし今日、日本と世界の実情はこれらと乖離し矛盾することが多く、憂慮すべき事態にある。核兵器や生物化学兵器の保有国がふえ、民族・宗教対立による内戦が頻発し、大国が国連を無視して他国に武力攻撃を加え、開発途上国では餓死と貧困が拡大している。さらに、競争原理に支えられた経済がグローバル化し、これがインターネットや遣伝子操作による技術開発と結びつくことによって、経済や技術に対する社会のコントロールが困難となり、人間の尊厳が損なわれ、地球環境の存続が危ぶまれている。

(4)憲法調査会に見る無責任

 一方、この国会で設置され議論が始められている憲法調査会では、与党はもとより野党の一部からも、現実に合わせて憲法を変えようという主張が出されている。それは、憲法を実現してこなかった責任、憲法に矛眉する事態を招いた責任、現実を改革してこなかった責任一一を頬かむりするものである。アメリカは国連を無視して他国に武力攻撃を加えることがしばしばあるが、このような論法では、国連憲章をこうした現実に合わせて変えろということにもなりかねない。

(5)アジア不戦フォーラムの提唱

 社会民主党は、憲法を暮らしに生かし世界に広げるため、「アジア不戦フォーラム」という名のアジア市民共同のデスクを設けることを提唱する。昨年5月に開かれた「ハーグ平和市民会議」は、「21世紀の平和と正義への課題」を提起した。共同デスクは、このアピールの内容を実現するため、日本とアジアは何をなすべきかを研究・討論する場であり、たとえば「不戦と共生の21世紀を一一アジアと日本の課題」といった集いである。心ある市民の積極的なとりくみに対し、わが党としてできるかぎりの支援をさせていただきたい。