2001年4月6日
政府「緊急経済対策」について(談話)
社会民主党全国連合
幹事長 渕上 貞雄
- 種々の対策も、国民生活優先という太い心棒がない限り”積み木細工”にも似た脆弱さはあらわになる。これは、小渕内閣以降の累次にわたる経済対策が不発に終わってきた経緯からも明白だ。また、「政治のあり方」が市場に試されていることも忘れてはならない。苦しみを伴う経済の構造改革・再生を断行するためには、国民の支持は欠かせない。自公保政権体制の交代こそが、経済対策の前に強く求められる所以(理由)だ。
- 緊急経済対策の一番の問題点は、金融・産業再生に向けた強い目的意識はあっても、「国民の生活再建」の視点が決定的に欠落しているところにある。わが党が繰り返し強調してきたとおり、消費性向が一番高い中低所得者層の雇用・生活不安などへの抜本的な解消策が同時に講じられない限り、効果は限定的なものにしかなりえない。
とりわけ、経済の構造改革を進めるにあたって、生まれざるをえない雇用問題への対処に関しては、財政出動も含めた政策の総動員が要請されていた。にもかかわらず、”めぼしい”ところといえば、2,3の奨励金の拡充程度では、評価の対象にさえなりえない。
社民党は、規制緩和や企業再生などを優先し、それに伴い生まれる影響を緩和する、つまりは「後処理的」方策として雇用対策を位置付ける自公保連立政権の対極にある、「雇用(創出)を基軸」とした「社会の安定化」対策に全力で取り組む。
- 経済活動の血液(基盤)である金融システムの安定は、わが国経済が浮揚するための不可欠の要素だ。この観点からも、金融機関の「不良債権の抜本的オフバランス化」の必要性に関する認識は、基本的に同じくできる。
ただし、(1)融資企業の活動停止と市場からの撤退に伴う痛みや混乱をどう緩和していくか(2)その結果生じる雇用不安などに如何に対処するか−−など、国民が納得できるセーフティネットの整備が、前提条件として、まず具体的に明示されなくてはならない。
さらには、98年と99年の二度にわたって注入された公的資金の目的の一つが、信用供与を拡大し、善意かつ善良な借り手保護、とりわけ、中小企業向け資金貸付枠の増大にあったことも軽視されてはならない。直接償却を進める場合は、原則として、善意かつ善良な中小企業を除外することは、公的資金投入の主旨からも考慮されて当然だろう。
なお、この仕組みを実際に機能させる、つまりは、金融機関の体力(経営基盤)の消耗を防ぎ、かつ適正な売却価格の形成による「担保資産等の流動化」を図るためには、RCC(整理回収機構)機能の一層の発揮のみならず、第三者が買い取るための「流通市場づくり」等の早急な整備が、与野党の垣根を越えて取り組まれる必要がある。
- 企業の再建計画策定中の融資、いわゆるDIPファイナンスの積極的な活用は、一定の評価が可能だ。ただし、その前に、地域の経済基盤の充実こそが最重視されなくてはならない。
社民党は、自立をめざす地域経済を支援するため、中低所得層や中小ビジネス、ベンチャー企業などへの公正な融資を金融機関に義務づけ、「地域全体の需要」に応えていくことを目的とする、日本版「地域再投資法」の導入を積極的に進める。
- 不良債権対策も兼ねた株価対策として「銀行保有株式取得機構」(仮称)の創設も打ち上げられた。
同機構の目的は銀行等の株式の持合い解消に伴う株価の値崩れを防ぐことにある。先に宮沢財務大臣がコメントした機構の損失に対する公的資金投入の願望(狙い)は、「預金保険機構の活用を含め、株式買取りに要する資金に対する政府保証等公的な支援」の検討という形で、無定見にも、日の目をみることになった。その際にも、厳しく批判したところだが、金融機関だけは特別扱いし、「国民の血税を使っても損失補填してあげよう」というに等しく、論外だ。
また、預金保険機構の第一義的な役割は預金者保護にあり、業務についても、この目的にかなうものに限定されるべきだ。法改正を行ってまで、同取得機構に肩入れをする必要性は、何らないと考える。
- 約1400兆円にものぼる個人金融資産の多くが現金・預金に止まっている現状(現金・預金は53.4%、株式9.4%に過ぎない)を改革し、証券市場に引き出していくための方策は検討されなくてはならない。
ただし、与党案は、原理原則もなく、ただ「数打ちゃ当たる」方式の性格が極めて強いものとなった。
金庫株の解禁は、需給関係に直接訴え、改善を図ろうというものだ。しかし、この手の「対症療法的な対策」が用をなさなかったのは、日本経済の現在の有様が如実に物語っている。何より、自由な価格形成をゆがめることによって、投資家の見送り気分を強め、かえって売買高が減少する可能性すら否定できないだろう。
まず、重視されるべきは、市場で提供される商品(証券)の違法行為を取り締まるための、公正なルールを徹底する監視・執行体制(アンパイア)の抜本的な強化だ。証券取引(市場)の一層の透明化などが図られない限り、活性化の”鍵を握る”ビギナー投資家が増えるはずがないのである。
政府の対策にある”取って付けた”ような対応ではなく、米国のSEC(証券監視委員会)の成果に学びつつ、証券取引等監視委員会が「金融警察」あるいは「金融Gメン」としての機能を十分に果たしていくための体制整備、権限強化などに積極的に取り組むことが最優先されなくてはならない。遠回りのようだが、このことが、証券市場への信頼性を強め、国民の投資意欲を喚起することになるのである。