戦争協力法案を廃案へ!!
新ガイドライン関連法案の問題点


問題点その1

米軍の戦争に自衛隊が協力 自治体や民間企業も動員

 政府は日本が再び戦争の加害者となる危険な法案を、国会に提出しています。周辺事態法案、自衛隊法改正案、日米物品役務相互提供協定(ACSA)改正案の新ガイドライン関連三法案です。

 新ガイドラインは、日米の防衛協力を具体化するために九七年九月に日米両政府で策定されたもので、関連三法案はそれを立法化したものです。

 その内容は、日本が直接攻撃されてもいないのに、日本の周辺地域で日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態=周辺事態が発生した場合に、それに対応して米軍が引き起こす戦争に自衛隊が協力する。また政府機関をはじめ、地方自治体や民間企業なども協力を強要し、国の総力を、米軍協力に動員するというものなのです。

これが戦争協力三法案だ

●周辺事態法案・・・日本の周辺で米軍が引き起こす戦闘において、自衛隊が米軍の後方支援、遭難した米兵の捜索救助活動、船舶の臨検をする。その際の自衛隊の武器の使用も認めている。また地方自治体や民間企業の米軍への協力を定めている。

●自衛隊法改正案・・・海外の日本人を救出する際に、これまで非武装の航空機に限られていた救出手段を、海上自衛隊の艦船やヘリコプターにまで拡大し、武器の使用を認るもの。

●日米物品役務相互提供協定(ACSA)改正案・・・戦争時における、米軍に対する物資の補給や武器・弾薬の輸送を合法化する。


問題点その2

米軍協力は憲法違反・安保条約も逸脱

 これまで自衛隊の武力行使は専守防衛の範囲内、つまり日本が直接攻撃を受けた時に反撃する場合にのみ合憲とされてきました。ですから、日本が直接攻撃を受けていないのに米軍の戦争に協力するのは専守防衛の範囲をはるかに越えており、憲法の禁じる武力の行使、集団的自衛権の行使にあたります。憲法に違反することは明らかです。

 そもそも、日米安保条約は日本が直接攻撃を受けた場合の日米協力を定めたもので、日本が攻撃を受けていない場合の米軍への協力は在日米軍基地の使用を認めているだけです。ですから、この新ガイドラインは、日米安保条約にすら逸脱しているのです。


問題点その3

あいまいな「周辺事態」の範囲

 問題点の第一は、米軍協力の対象範囲があいまいで、でたらめなことです。政府は周辺事態を「地理的概念ではない」と説明しています。しかし「地理的概念でない」などという、子どもだましの説明が通るわけはありません。この説明が通るなら、世界中のあらゆる地域で米軍が引き起こす戦争に、自衛隊が協力することになりかねません。

 そもそも日米安保条約は第六条で、米軍が日本の基地を使用して戦闘行動のできる範囲を「極東」に限定しています。ですから、安保条約に基づくとされる新ガイドラインの適用範囲も、「極東」を越えることは許されません。


問題点その4

「周辺事態」の対象から台湾を除外すべき

 しかし、極東に限定するだけでは不十分です。政府見解では「極東」に台湾が含まれているからです。日本は日中共同宣言や日中平和友好条約で台湾が中国の一部であることを認めています。台湾の問題は中国の国内問題です。日本はアメリカの台湾への軍事行動を支援することは出来ません。政府は新ガイドラインの適用範囲から台湾を除外することを明確にすべきです。


問題点その5

国会を無視して戦争協力を強行

 周辺事態法案は、戦争時の米軍協力を、国会を無視して実施しようとするものです。法案では米軍支援を実施する場合には「基本計画」を閣議決定し、国会にはその内容を「報告」をすればよいとしています。

 では、具体的な米軍協力はどこで計画されるのでしょう。新ガイドラインでは、日米両国は普段から「包括的メカニズム」と「調整メカニズム」を作り、戦争時の協力計画を作るとしています。「包括的メカニズム」は自衛隊と米軍を中心に、関係省庁を含んだ両国の協議の場であり、調整メカニズムは日米両軍の統合司令部です。

 つまり、自衛隊と米軍とが作成した戦争協力計画を、内閣が閣議決定し実施するのです。米軍と自衛隊の決定を、事実上、国会を無視して、強行することは文民統制を逸脱しており、なによりも国会は国権の最高機関とした憲法に違反しているのです。

 

なぜ国会にはからないのか?

 防衛庁首脳は基本計画を国会報告にとどめたことについて「もし国会の事後承認事項にした場合、政府が決めた後に国会が認めなければ、米国との関係が問題になってしまう」(朝日・98年4月11日)と述べました。


問題点その6

米軍への補給、武器・弾薬の輸送は重大な「参戦」行為

 周辺事態法案では、戦争時に米軍協力として、水や油、食事や整備用物資の補給や、それらの物資に加えて武器・弾薬・武装した米軍兵士の輸送を行うとしています。法案は物資の補給や輸送を行う地域を、日本の領域や公海とその上空で戦闘がおこなわれていない後方地域としています。

 しかし、後方かどうかは日本政府のかってな判断であり、米軍が戦争をおこなう相手国が後方と認めてくれるとは限りません。また、武器・弾薬の輸送のように直接的に戦争支援をおこなうことは、重大な参戦行為となり、相手国から、いつ、攻撃を受けのか分からない状態になります。日本の船が米軍のために輸送を行えば、相手国は拿捕することもあるのです。

 政府は物資の補給や輸送に関して、後方地域でおこなわれ武力行使と一体化しない限り憲法上も問題はないとしています。しかし近代戦争では、武力行使と補給・輸送は一体のものです。近代戦争では、補給や輸送は「参戦」なのです。


問題点その6

海上での船舶検査活動は武力行使の危険

 法案では、自衛隊が国連決議に基づく経済制裁を実行するための措置として、船舶検査活動を行うとしています。船舶検査活動とは、相手国に入国・出国しようとする船舶の積み荷を検査し、場合によっては進路変更を求めるものです。自衛隊の軍艦が相手の船に停船を命じる際には、信号弾や照明弾は使用しますが、武器は使用しないとしています。しかし、職務遂行に際して、生命・身体の防護のためやむを得ない必要がある場合は、武器の使用を認めています。船舶検査活動を行う海上自衛隊の軍艦には、機関砲やミサイルが搭載していますが、停船を命じた相手の船が発砲してきた場合には、自衛艦も武器で応戦し、戦闘になる恐れがあります。

 軍艦を動員した船舶検査活動は、武力の行使や武力による威嚇と同一視される可能性が高く、極めて危険な活動と言わざるを得ません。


問題点その7

邦人救出での武器使用を合法化

 自衛隊法改正案では、在外邦人の救出に際して航空機に加えて自衛隊艦船とヘリコプターを使用できるようにし、またその際、自衛隊員や邦人の生命を守るために武器を使用できるとしています。

 そもそも自衛隊の任務に在外邦人の救出活動はありませんでしたが、湾岸戦争の経験から九三年に自衛隊法を改正し、航空機による邦人救出、ハイジャック対策の拳銃の携帯、出動の際には閣議決定が必要であることを定めました。

 今回の改正で海上自衛隊の護衛艦や大型補給艦の派遣が可能になりますが、戦闘が行われている地域に重武装の自衛隊艦船を派遣するのは、危険を煽ることにもなりかねません。


問題点その8

拡大する自衛隊の武器使用

 関連法案では、遭難した米兵の捜索救援活動と船舶検査、邦人救出に際して、自衛隊が生命・身体を守るために武器を使用することを認め、しかも使用する武器に制限を加えていません。

 自衛隊の武器の使用は、九二年に国連平和維持活動(PKO)協力法が成立して、PKO活動に際しての自衛隊の武器の携帯と、生命に危険がある場合の個人判断での武器使用が認められ、また九八年のPKO協力法の改正では、自衛隊の上官命令による武器使用が合法化されました。そして、いま米軍協力と邦人救出に際しての武器使用が合法化されようとしています。たとえ生命・身体を守るためであろうと、自衛隊が集団で武器を使用すれば、それは、憲法の禁じる武力の行使であり、まぎれもない戦争です。

 そもそも、PKO活動も船舶検査も邦人救出も、海外で行われるのです。自衛隊が武器を使用するとなれば、その武器が向けられる相手は他国の人々であり、自衛隊が海外に出動しなければ、そもそも戦闘行為はさけられるのです。

 

カンボジア邦人救出

 九七年の夏、カンボジアの内政混乱にともなう日本人救出を理由に、日本政府は自衛隊の輸送機をカンボジアの隣国のタイに派遣しました。しかし政府はこの時、自衛隊機の派遣ばかりを強引に推進し、肝心の当事国であるカンボジアと一切協議を行わなかったのです。カンボジア政府は「日本政府から自衛隊機のプノンペン乗り入れの要請があっても認めない」と、自衛隊機の派遣に不快感を表明しました。幸いカンボジア国内での混乱が収束したことから、自衛隊機のカンボジア派遣はおこなわれませんでしたが、仮にカンボジア政府の同意のないまま自衛隊機が強行着陸していたら、邦人を救出するどころか、カンボジア政府軍との戦闘になっていたかもしれません。今回の法改正で武器使用が合法化されたら、その危険性はさらに増大することになります。


問題点その9

地方自治体や民間企業にも戦争協力を強制

 周辺事態法第九条は、「国以外の者による協力等」として、地方公共団体や民間企業による戦争時の米軍協力を規定しています。

1.米軍による民間空港の利用

戦争が起きれば、民間空港を米軍に提供することになります。空港は米軍機の発着が中心となり、民間便の利用は制限されるでしょう。

2.米軍による民間港湾施設の利用

米軍は既に八〇年代から日本の民間港湾の調査をしています。戦争が始まれば、米軍の軍港だけでは足りないので、民間港湾にも米軍の軍艦や補給艦も入ることになるからです。民間海運会社の港湾使用は制限され、一方物資や弾薬などの米軍荷役は、民間の荷役業者に要請されます。

3.民間業者による米軍物資の輸送

現在でも米軍の弾薬は日本の民間の運輸業者が輸送しています。戦争が始まれば、さらに多くの運輸労働者が米軍物資の輸送に動員されることになります。

4.民間企業による兵器の修理・整備

兵器の修理・整備も、日本の役割です。自衛隊で足りない場合は、民間企業に委託さるでしょう。

5.米軍による病院の利用

米軍の負傷兵は、日本の病院が受け入れることになります。病院が米兵の治療中心となり、日本人の患者が追い出されることにもなりかねません。

6.米軍への給水・給電・汚水処理

増強された米軍に対しての汚水処理や給電・給水も地方公共団体や民間企業の役目です。

7.米軍への自治体職員の協力

 九七年、米海軍の空母インディペンデンスが北海道の小樽港に入港した時には、市役所の職員は交通警備や会場整備などにかりだされ、市営のタグボート、NTTや水道局、市委託のゴミ収集業者や民間の輸送会社などが動員され、深夜まで作業が続きました。

 

地方自治体の協力は当然、協力拒否の公務員は処罰と防衛庁長官

九九年二月一日に開かれた衆議院予算委員会で、野呂田防衛庁長官は、辻元清美衆議院議員の質問に次のように答弁しました。

辻元 地方自治体の長は、正当な理由がない場合は、米軍協力を拒めないのか?

野呂田防衛庁長官「日本の存在にかかわる、日本の平和と安全に重大な影響を持っている事態に際してでありますから、一般的な協力義務としては、それは協力するのが私は当然だと思います。」

 

辻元 管理者の判断に従わない地方公務員の職員が出てきた場合は?

野呂田 「管理者がその職員に対して責任をとらせるという措置に及ぶと思います」

 

辻元 国家公務員が職務を怠った場合は?

野呂田 「重大な違反であれば、当然処罰されると思います。」


私たちの手で、新ガイドライン関連法案を廃案へ

 昨年八月、米国は突如としてアフガニスタンとスーダンにミサイル攻撃を行いました。また十二月には米英合同軍がイラクを爆撃しています。冷戦体制は崩壊し、世界は軍縮に向かっています。しかし米国は米国の政策に従わない国を「ならずもの国家」と決めつけ、いつでも戦争をしかける準備をしているのです。しかし、これほど危険なことはありません。米国が敵だと判断すれば即座にミサイル攻撃を仕掛けるような無法が、まかり通っていいはつはありません。

 イラク空爆では国連憲章を無視する米英の攻撃に対して、各国が非難の声をあげましたが、国連安保理の中で日本のみが空爆を支持しました。米英の軍事行動を無条件に支持する日本政府は、新ガイドライン関連法案が成立すれば、進んで米軍の戦争に協力するでしょう。

 日本が再び戦争の加害者とならないために、平和憲法を破壊するこの法案を私たちの手で廃案に追い込みましょう。