2000年8月11日

日銀のゼロ金利政策解除について(談話)

社会民主党       
政策審議会長 辻元清美

  1.  日本銀行は、本日の「金融政策決定会合」で、無担保コール翌日物(注)の誘導目標(金利)に関して、限り無くゼロ水準をめざすという99年2月以降のいわゆるゼロ金利政策を転換し、それ以前の0.25%水準へと見直すことを決定した。
     もともと、ゼロ金利政策は、需要の弱さから生じる物価の低下、すなわち、景気と物価の悪循環に陥るおそれのあったデフレスパイラル(圧力)に対処するためにとられた、世界的にも例を見ない「超異例の金融政策」といえた。したがって、各種経済指標が堅調さを強めつつある段階で、日銀が今回の判断を下したことは、金融政策の柔軟さを回復する(選択肢をふやす)意味でも歓迎したい。
     日銀には、本決定に対する市場の信任を受けるための努力だけではなく、国民に対する説明義務も十分に果たすよう強く求めたい。
    (注)コール市場とは、金融機関相互間の極めて短期の資金の貸借(支払い準備金等の過不足の調整)を行う市場をさす。日銀は日々の金融調整を通じて、コールレートを望ましい水準に誘導している。日銀の金融政策のスタンス・基本姿勢は、翌日物の無担保コールレートの誘導目標に端的に表れることになる。

  2.  ゼロ金利の見直しは、消費マインドに明るさをもたらすなど(1200兆円にのぼる個人金融資産の価値上昇に伴い、暮らしの先行き不安が薄まり、消費意欲の活性化につながる)、景気浮揚に向けた寄与度は大きいと考える。
     なお、今回の見直しは、”微調整の城”をでないものであり、貸し出し金利等がいたずらに上昇する事態は想定し難いともいえる。ただし、万全を期すためにも、日銀は資金を潤沢に市場に供給する「金融緩和」継続の意思を、より明確にする必要のあることを強調しておきたい。
     同時に、社民党は、中小企業等の経営や雇用問題への波及等に細心の注意を払いつつ、必要に応じて、機動的かつ十分な政府系金融機関の対応(利子補給の検討)などを求めていくこととする。

  3.  今回の見直し過程における森総理をはじめとする政府与党の反対の大合唱は、自社さ政権時代の最大の成果の一つともいえる、中央銀行の「独立性確保」を根幹規定とする改正日銀法に真っ向から挑戦するものだ。あろうことか、政府代表の大蔵省と経済企画庁が議決延期請求権(改正日銀法19条)を実際に行使するに至っては、改正法の意義・目的すら理解できない、現連立政権の限界を露呈することになった。
     日銀がゼロ金利政策に踏み切らざるをえないまでに経済運営を誤っておきながら、引き続き、日銀に尻拭いをさせようというのでは、自民党政治が、日銀に強いた結果ともいえるバブル経済誘発等の歴史の教訓になんら学ぼうとしないものだと、厳しく批判せざるをえない。