2000年11月29日

農地法の一部改正案の成立にあたって(談話)

社会民主党農林水産部会
部会長 谷本 巍

  1.  本日、農地法の一部を改正する法律案が成立した。この改正案は株式会社の農業への参入に道を開くものであり、「耕作者主義」に立つ農地法の否定につながるものである。社民党はこの改正案は断じて容認できない。

  2.  この農地法改正案では、たしかに株式会社一般の農業参入は認められていない。農業生産法人と農業者などによる株式会社に限られている。また農地の転用など懸念される事態に対しては、株式の譲渡制限をはじめ農業委員会による審査、勧告、立入調査、勧告、斡旋などの防止策が講じられている。しかし、このような措置は、これを遂行する農業委員会の機能強化があって初めて可能となる。しかるに本改正案では、このことに関し、なんら具体策が示されていない。改正案の歯止め措置が有効に機能する保証はまったくない。

  3.  法人が倒産した場合の農地の国家買収についても、確実に実施されるかどうかは疑問である。農業生産法人の構成員の要件緩和などの面から、「耕作者主義」崩しが進むおそれは十分にある。農地所有の耕作者主義が崩れれば、農地は誰であろうと所有できることになり、株式会社による農地所有も転用も自由となる。転用された農地が農地法の規制からから外れるのは当然である。食料の供給や環境保全などの役割を果たしてきた農地は永遠に失われることになる。

  4.  かつてバブル経済が日本列島を覆い土地投機が猛威を振るった時、我々は「耕作者主義」に立つ農地法の存在を知った。この法律がなければ、バブル時の土地投機は際限もなく行われ、日本経済は想像を絶する打撃を受けたであろう。
     21世紀はまぎれもなく食料と環境の時代となる。我々が選択しなければならないのは、農地や環境を商品化の波にさらす道ではない。農地の「耕作者主義」の否定に繋がる株式会社の農業参入に道を開いてはならない。市場万能経済にはバブル化はつきものであり、いつ再燃するか分からないということを忘れてはならない