2001年11月6日

プロバイダー規制法の委員会可決についての談話

社会民主党 幹事長
福島 瑞穂

 本日参議院総務委員会で、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、いわゆるプロバイダー規制法が可決された。インターネット等の普及は行政・企業等の情報の公開、国民の知る権利の拡大をもたらした反面、インターネット上の名誉毀損などの人権侵害に対して、適切な救済手段が必要であり、そのためには、明らかな人権侵害を含む情報の発信者に関する情報を被害者が知ることができる法的な制度の必要性があると、我が党は理解している。

 このような立場から、我々はこの法案に賛成したが、今回の参議院の委員会審議は半日のみで即日採決され、とりわけ本件で必要と思われる、専門家・利害関係者への参考人聴取等も行なわれていない。テロ対策法・自衛隊法等で見られた強行日程はこの際改め、今後の日程で十分に審議すべきである。

 この法案にはその運用を誤れば重大な人権侵害を招きかねない問題点が潜在していることも指摘せざるを得ない。法案四条は権利侵害情報について、被害者がプロバイダーに発信者の氏名等の開示を求められるとしている。その要件は「人権侵害が明らか」「正当な権利行使に不可欠」と明確に定められている。しかし、発信者側の意見を聞く手続き以外には、判断基準は何ら定められておらず、各プロバイダーの自主的判断に委ねられている。

 プロバイダー等掲示板の運営者の中には極めて小規模のものもあり、法的な専門家ではない、プロバイダーがこのような情報開示の法的要件について適切な判断ができるかどうかには疑問がある。この制度が恣意的に運用されれば、市民活動による政治家や企業・団体に対する正当な批判活動が「人権侵害」とされ、発信者情報が特定されて、損害賠償請求訴訟のターゲットとされる可能性がある。

 とりわけ、政治家や大企業からの情報開示の請求に対しては安易に応ずるような運用がなされれば、市民のインターネット上での自由な情報の発信が妨げられる危険性がある。付帯決議の一でも「特定電気通信役務提供者による情報の削除や発信者情報の開示が濫用されることのないよう配慮し、発信者の表現の自由の確保並びに通信の秘密の保護に万全を期すこと」と指摘したが、この情報開示条項の運用に当たっては、プロバイダーの慎重な姿勢が求められる。

 このような慎重な判断を担保し、各プロバイダーの判断を客観的に行うため、この法律の中に、専門家からなる第三者諮問機関を法定することも可能である。それが不可能でも、各プロバイダーには単独で、もしくはいくつかの会社が共同で社外の専門家を含む「情報開示審査会」をもうけ、その判断を求めた上で、開示の許否を判断するような、システムを作り上げる努力が必要とされている。

 我が党は、今後の法案審議においては、このような問題点を掘り下げ、情報の開示によって新たな人権侵害が発生しないシステムがどうしたら可能かを、当事者であるプロバイダーやインターネット利用者の意見も聞きながら、慎重に審議を進めることを強く求めるものである。

以 上