2000.8.31

参議院選挙への非拘束名簿式の導入についての考え方

社会民主党政策審議会
会長 辻元清美

  1.  自民党はじめ与党各党は、来年夏に行われる参議院の比例代表選挙に非拘束名簿式を導入しようということを検討している。たしかに、非拘束名簿式は、個人の名前を書くことができる、順位付けが民主的・透明なものになる、有権者の意思をストレートに反映できるなどの制度としての特性があることは否定できない。しかし、それらのメリットがあるにもかかわらず、これまで採用してこなかったのは、自民党が各候補者に党員集め=資金集めを競わせて、その結果を順位付けに反映させてきたからである。今回の久世前金融再生委員長の事件をきっかけに、順位付けと金銭の関連が取りざたされたから急に非拘束名簿に変えようというのは、単なる疑惑隠しの党利党略にすぎない。

  2.  非拘束名簿式は、旧全国区が「銭酷区」と批判されたように、選挙区の範囲が広過ぎて、選挙運動に金がかかり過ぎるという問題が生じる。また、全国から得票しなければならず、タレントなどの有名人や知名度の高い候補者が有利になるなど、政党本位の選挙の趣旨を弱めるとともに、無名でも有為の人材を国会に輩出するという現行制度のメリットを損なうことになる。結局、参議院比例区は、格段の知名度を持つか、膨大な資金を注ぎ込んで名前を売り込める候補者だけに有利な制度になってしまう。

  3.  問題は、自民党内の比例代表の順位付け、候補者の選び方にある。自民党の比例代表名簿の順位が、業者や業界からの多額の資金提供によって、党費の立て替えという形で決められているのであれば、そのことを来年の参院選からやめることが先決である。また久世氏の発言と政府答弁の相違・齟齬も依然として解明されていない。自民党は、名簿登載順位の基準を国民に公表し、党費立て替えのような、国民の疑惑を招く行為が行われないような基準に改革する努力をすべきである。

  4. 民主主義の根幹に係る重要な課題である選挙制度は、政略や党利党略によって進めてはならない。とくに参議院は、これまで議長の下の各派協議会で意見の一致に努力してきた。各派協議会における議論の経緯を無視し、与党だけで強行するとすれば、参議院の「良識の府」としてのあり方に反し、参議院の歴史を否定することになる。参議院は、異なる制度・異なる時期による選挙によって、国民の多元的な意思をより良く国会に反映し、民主主義を強化する「新しい二院制」の先駆的制度である。参議院の選挙制度並びに定数を論ずるに当たっては、参議院のあるべき役割に応じた十分な論議と検討が必要である。したがって、社民党は、時期臨時国会からの非拘束名簿式の導入には反対であり、来年の参議院選挙は、現行制度を前提とし、逆転区の解消にとどめるべきであると考える。