1999年10月4日

「三党連立政権 政治政策課題合意書」について(談話)

社会民主党幹事長
渕上 貞雄

 本日、自民・自由・公明の三党首が署名した「政治・政策課題合意書」は、これまでの小渕内閣の政治路線を追認したものであり、なんら新味もないばかりか具体策にも乏しい。

 「政治・政策課題合意書」という表題がいみじくも体現しているように、「政策」で合意されたものではない。なんの根拠もなく、国民生活にも全く関係のない衆議院議員の定数削減の合意やデノミネーションの提案など、政治的パフォーマンス性の強いものである。

 有事法制の立法化やPKF本体業務への参加凍結の解除への法的措置など、危険な方向性は全く変わっていない。また、国民のもっとも大きな不安の要因である社会保障分野の改革を2005年に先送りしたことの責任は大きい。

 さらに、東海村臨界事故直後にも関わらず、原子力行政とりわけ安全管理等について、全く触れられていないのは極めて問題であり、国民の不安や要請に応えようとする姿勢も意欲も感じられない。

・経済について
 これまで、政府・与党が進めてきた経済対策は、「産業再生法」関連を見ても、中高年世代が”効率化”つまり労働者の「排出」を前提として成り立つものであり、この姿勢は三党合意において何ら変わるものではないと批判せざるを得ない。
 社民党は、「人間の顔」をした経済再生を実現する観点から、一般会計からの積極的な財政出動を伴う万全の「雇用対策」が必要であると考える。また、倒産などの生活不安に的確に対処するための”安全弁”の整備についても全力をあげるべきであるが、こうした国民的要請に「合意書」は全く答えていない。

・社会保障について
 すでに突入している「高齢社会」を未だ「高齢化社会」と誤認し、直ちに取り組まなければならない諸改革を「2005年を目途」に先送りしたものである。
 年金については、基礎年金の国庫負担は今次改正で行うことが前回(94年)改正における全会一致での確認であり、次期臨時国会の補正予算で対応しなければならないものである。
 後期高齢者医療という概念は、初めて持ち出されたものであり、前期高齢者についての言及がなく、これまでの高齢者医療を切り捨てようとする意図が見られる。
 消費税の福祉目的税化については、福祉の税源を特定し枠をはめてしまいかねない。
 少子化対策における所得課税の諸控除の整理、税率の引き下げと簡素化について、社民党としては、応能負担原則を破壊する改悪であれば明確に反対する。

・安全保障について
 有事法制研究については、立法の準備ではないという前提で行われたものであり、今回の合意は従来の政府見解を大きく変えるものである。立法化の根拠も述べられておらず、極めて危険である。
 PKF本体業務への参加凍結の解除は、憲法が禁じている海外派兵につながる危険をはらんでいる。
 また、PKO以外の国連活動についても、具体的内容が明らかにされておらず、これらの合意については、到底容認しがたい。

・政治行政改革について
 定数削減について、比例区選出議員定数の削減は、比例代表制の長所である民意の反映という機能を弱めるとともに、中小政党切り捨てにつながり、小選挙区比例代表並立制の有する欠陥を拡大する。このような問題を選挙制度等に関する協議会を開くことなく、各党の了解も得ず、多数派形成のための合意を行ったことは、協議会設置の趣旨に反するものであり、強く反対する。
 政治資金の「2000年問題」といわれ、来年1月1日に期限を迎える政治家個人に対する企業・団体献金の禁止問題について、結論を先送りしたことは、極めて遺憾である。国民の政治不信の解消に何一つ答えるものとはいえない。三党は明確な姿勢を示すべきである。
 多選禁止については、国レベルで方針を押しつけるのではなく、地方自治の本旨、分権の精神にかんがみ、各自治体が条例で判断できるようにすべきである。
 地方分権推進について、市町村合併を中央主導で断行しようという姿勢が見られるのは、分権・自治の推進に反する。また、住民投票制度など、住民自治の拡大もなく、地方への財源移譲にも触れられていないのは問題である。

・教育・環境その他の重要事項について
 教育国民会議については、国民参加の議論が保障されているとはいいがたい。
 人権擁護については、「個人情報保護のための法整備を含めたシステムの整備や犯罪被害者救済の仕組みの改善」は、わが党が他党にさきがけて提起してきたものである。しかし、現在超党派で取り組まれている、差別を解消し人権を確立するための新たな立法措置について触れられておらず、人権教育・啓発推進の立法制定や新たな人権救済機関創設などの課題が無視されている。
 循環型社会の構築については、「循環型社会元年」を打ち出している割には、具体的施策について言及がなく、インパクトがない。また、その基本である農林水産業への言及がないことは問題である。