不審船沈没事故での閉会中審査を求める

2001年12月25日

社会民主党国会対策委員長 中西績介

  1. 海上保安庁の巡視船が22日夜、奄美大島北西の東シナ海で国籍不明の不審船に船体射撃を行った結果、不審船が沈没し乗組員約15人が行方不明となり、銃撃戦で海上保安庁巡視船の乗組員3人が負傷した。海上保安庁による初の船体射撃となった今回の事件には、解明されなければならない多くの問題点が存在する。

  2. 日本の領海外で行われた今回の船体射撃は、テロ対策関連法の一つとして11月に施行された改正海上保安庁法でも適用外であり、公海上での船体射撃を可能とする法的根拠が極めてあいまいである。同時に、遭難者に対する救助義務を定めた国連海洋法条約に照らして、沈没後の不審船乗組員に対する救助に問題はなかったのか、厳しく問いただす必要がある。また、今回の事件に際して防衛庁は、すでに21日午後4時ごろには情報を把握していたとされながら、海上保安庁への第一報は9時間後の22日午前1時過ぎであり、初動体制の遅れが領海外での船体射撃、沈没に至った可能性も排除できない。

  3. 小泉首相は24日の閣僚懇談会で、海上保安庁や海上自衛隊による領海外での武器使用基準の緩和、大規模な船体射撃(危害射撃)に向けた法整備の検討を指示した。今回の事件で、中国政府が、同国の排他的経済水域内で行われた船体射撃に対して強い懸念を表明していることにも明らかなように、公海上での武器使用がわが国の警察権の範囲内にとどまるものなのかは極めて疑問であり、拙速な新法制定は慎むべきである。

  4. 社会民主党は政府に対し、今回の事件の持つ重要性にかんがみ、事件に関わる問題点の全容解明に向けてすべての情報の開示を求めるとともに、関係各委員会での閉会中審査の開催を強く要求する。