1999年1月21日

 

「少年法改正」に関する法制審議会答申について(談話)

社会民主党政策審議会長
濱田 健一

1.本日、法制審議会は、(1)裁定合議制度、(2)検察官が関与する審理の導入、(3)観護措置期間の延長、(4)検察官に対する抗告権の付与、(5)保護処分終了後における救済手続の整備などを内容とする「少年法改正」について答申した。しかしその内容は、子どもの人権の保障や保護にとって重大な問題があると言わざるを得ない。

2.まず、裁定合議制度をなんら制約なく導入することは、少年審判のケースワーク的機能を後退させるものであり、複数の大人に対して少年が十分な主張ができるのかどうか等について引き続き慎重に検討すべきである。

3.答申が、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に当たる罪」という幅広い事件に検察官の審判への関与を認めたことは、少年法の理念に反するものであり到底容認しがたい。当然検察官への抗告権の付与も認めることはできない。少年法が、刑罰法ではなく非行をおかした少年を教育的に支援しその成長を保障するものであるがゆえに、少年審判においては保護主義の見地から検察官の関与を否定しているということを改めて認識すべきである。

4.観護措置期間を最長12週間まで延長するとした点についても、「少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれ」とのあいまいな理由で延長できることとなり、認められない。

5.いうまでもなく少年法の基本理念は、少年が健全に成長するために教育し保護することにあり、子どもの意見表明権を尊重し、非行をおかした少年に対しても子どもの特性に十分配慮した手続を保障すべきとした「子どもの権利条約」にも合致したものである。むしろ現在検討すべきは国選付添人制度の全面的導入、少年自身からの意見表明、参加の機会を設けるなど、制度運用を法の精神、「子どもの権利条約」の趣旨にかなったものとすることではあるまいか。今回の答申はそれに逆行するものであり、答申に基づく法案化にはわが党は反対である。少なくとも少年法のあり方について検討するならば、子ども、親をはじめ、家庭裁判所調査官、教育・福祉関係者、さらには被害者からの意見を聴取すべきである。

6.また、少年犯罪を厳罰化すべきとの立場から処罰対象年齢を引き下げようとの動きが活発化している。しかし現行少年法は犯罪抑止に有効な役割を果たしており、厳罰化や年齢引き下げの理由は見当らないことは、この間少年犯罪が増加していないことにも明らかである。にもかかわらず、少年犯罪が増えているという誤った認識にたち、「少年法改正」を主張する動きは到底容認できるものではない。わが党はこうした「改正」にも反対である。

7.少年犯罪・非行と少年法は、子どもの生きる環境そのものと密接に関わる問題でもある。昨年、子どもの権利委員会もわが国に対して、「競争の激しい教育制度が存在し、それが子どもの精神・身体に悪影響をもたらしている」と指摘、改善勧告を行っている。しかし法制審議会ではこのような観点からの論議はまったくなされなかった。また、加害少年の多くは、かつて「いじめ」や「子ども虐待」などで心に傷を受けた経験があるケースがあることなど心理的要因についても取り上げていない。
 子どもたちがいきいき育つ社会をめざすならば、子どもと少年法にその責任を負わせる発想ではなく、子どもたちが置かれている状況を根本から問いなおし、改革する作業が求められる。

8.なおわが党は、これまで公的救済から置き去りにされてきた成人事件被害者とともに少年犯罪被害者の救済制度を早期に創設すべきと考える。さらに、被害者の代理人国選制度創設、民事扶助法の早期実現も図るべきである。

以上